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狼は眠らない  作者: 支援BIS
第9話 パーティー結成
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「というわけだ」

「なるほどねえ。言いわけのしようがない何かねえ」

「おい、〈回復〉教えろよ。〈回復〉」

「ところで、こんなものがある」

 レカンは〈収納〉から、奇妙な形の魔道具を取り出した。炎の魔法を撃ち出す武器だ。

「どこで手に入れたんだい」

「話、まだ終わんねえのかよ。早く練習しようぜ」

「最初にチェイニーの護衛をしたとき、襲撃してきたやつから奪った」

「なるほど。こいつは使えるねえ」

「〈回復〉かあ。まさか使えるようになる日が来るとは、夢にも思わなかったぜ」

「ミドスコは、これが壊れたと言ってるのか」

「そうさ。不良品だから試験したら粉々になったと言い張ってる。そのくせ、破片を持って来いと言ってやったら、そんな物は捨ててしまったとくるからね」

「冒険者で〈回復〉が使えるなんてったら、そりゃもう引っ張りだこだろうなあ」

「これがその品だと証明できるのか?」

「一個一個ちがう番号が刻印してあるのさ。ほら、ここさ。あたしが領主に渡したうちの一つにまちがいないよ。これがミドスコの屋敷で発見されたら、どうなるかねえ」

「か、い、ふ、く。か、い、ふ、く」

「領主が大枚はたいて買ったこの上なく強力な武器を、無理言って預かったのに壊した、というだけでも重罪だろうな」

「そうさね。そのうえ、壊したというのが嘘で、ほんとは隠し持っていたとなると」

「そういえば、あたい魔法つかうとき杖使ってないけど、いいのかなあ」

「謀反の罪を問われるな」

「エダちゃん。杖は便利なものさ。魔法の構築もらくになるし、大きな力を引き出してくれる。でも杖を常用してると魔法の技術は成長しにくいし、魔力も増えにくい。成長してる最中の魔法使いはね、杖なしで魔法が使えるなら、そのほうがいいのさ。いずれいい杖をみつくろってあげるよ」

「ありがとうっす」

「レカン。あたしはちょっと用事があるから、エダちゃんに〈回復〉を教えてあげるんだよ」

「やたっ」

「いや。その前に冒険者協会に行く。ついて来い」

「なんでだよ」

「お前、ほんとに人の話を聞かないな」


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「依頼達成おめでとうございます。報酬は依頼者から直接お受け取りください。なお、今回の功績で、レカンさんは銀級に昇格されます。明日冒険者章を受け取りに来てください」

「えっ。あたいは? あたいは昇格できないの?」

「できません」

「そんなあ。アイラちゃん。そりゃないよう。あたい、レカンなんか比較にならないぐらい、たくさん依頼達成してるじゃん」

「初期の連続失敗が響いてるんです。レカンさんは依頼達成率百パーセントで、しかもすべて高評価ですから」

「ううっ。なんとかしてよう」

「なんともなりません。ところでレカンさん、孤児院から指名奉仕依頼がはいっています。またこどもたちを遊ばせてほしいそうです」

「ことわる」


12


「お帰り」

「ただ今帰ったっす」

「あの件はどうなった?」

「手配はしておいたよ。あとどうするかは領主次第だね」

「そうか」

「じゃあ、レカン。エダちゃんに〈回復〉伝授の一回目といこうかね」

「レカン師匠! お願いしまっす」

 レカンは考えた。

 自分が受けたと同じような説明をしても、絶対にエダには理解できない。

 もっと直感的で、もっと実践的なやり方がいい。

 ニケは、祈りの深さが発動の鍵だと言っていた。

 とすると。

「エダ」

「何だい」

「お前の大事な人が、ここにいるとする」

「だ、大事な人って、何だよ。そんなのいねえよ」

「母親とか、父親とか、兄弟とか、仲のいい友達とかだ。今は生きてない人でもいい」

「ああ? あ、なんだ、そういう意味か。じゃあ、とうちゃん、かな」

「その父親が怪我をしてる」

「ええっ」

「怪我をして痛がってる。苦しんでる。だけど誰も助けられない」

「ど、どうしてだよっ。どうして誰も助けてやらねえんだよっ」

「誰にも助けられないんだ。そういうことはある」

「な、何とかならねえのかよ」

「方法はある」

「教えてくれっ」

「両手を出せ」

「こ、こうか?」

「両手を合わせて、少し丸めろ。落ちてくる泡雪を捕まえるように」

「何を捕まえるって?」

「水をすくうように」

「お、おう。こんな感じか」

「その手のひらのなかに、温かい光を生み出せ」

「ひ、ひかり?」

「お前の思いを光に変えるんだ」

「わ、わけがわかんねえ」

「わからなくていい。感じるんだ」

「感じる?」

「お前が父親を救いたいという思いが本当なら、光が生まれる」

「ほ、ほんとだな?」

「やわらかで、何もかもが満たされて、幸せになる光だ」

「幸せの……光」

「父親の怪我を治したいと心から思うなら、その思いが光になる」

「思いが……光に」

「そして、唱えるんだ。〈癒やしを(キリーム)〉」

「き、キリーム」

 ぽわっ、と音がしたような気がした。

 エダの丸めた手のなかに、一つの温かい光が生まれていた。

 それは、みる者の心に懐かしさと安らぎを与える、癒やしの光だ。

「で、できたっ」

 心からうれしそうに、エダが叫んだ。

「で、できたよ、レカン」

 涙を流して喜んでいる。

 これには、レカンが仰天した。

 レカン自身、三日のあいだ、ニケのつきっきりの指導を受けながら、何度も何度も繰り返して挑戦し、やっと小さな光をともすことができたのだ。

 それをエダはたったの一回で、しかもレカンのいいかげんな指導で、成功させた。その光の大きさは、レカンが最初に成功したときより、ずっと大きい。

 ふた呼吸ほどのあいだに驚きから立ち直ったレカンは、少し誇らしげな気持でニケをみた。

 ニケはひどく恐ろしい顔をしていた。

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― 新着の感想 ―
何度も読み返してますが、最初の頃からエダはレカンのことを無意識に庇護者だと感じてるみたいで甘えている感じありますよね。 ぶっきらぼうだけど、力尽きて倒れてるところを依頼人の指示とはいえ連れ帰ってきてく…
この先もエダが登場するとの作者のコメントがここにあったので、これ以上は読むのを断念。 エダをここまで不快な性格設定にした必要性がわからない。 幕の内弁当を買ったら、おかずのなかにパクチーが入ってるくら…
大事な人つっても想像上な人物にここまで感情移入できるの凄くね? すれて無いっていうのか、無垢って表現すればイイのか… 心が体の成長に追い付いてない感じ? そう思えば人の話を意図して聞かない事があるっ…
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