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196 シューちゃん達のその後

 ユウコたちが帰ってから半年、真面目にアルキアさんのところで色々なことを教わったと思ったら、後は実地で頑張れと言われて、こうしてあちこちの小さな村をまわって薬を売って回っている。

 それぞれの村で滞在時間が長すぎてもあれなので、シーコと2人で一週間を目処にしようと決めている。

 シーコは本当にどこまでも私についてくるつもりらしい。嬉しいけど、いいのだろうかとたまに思う。でも後で困ったとしても自己責任と言うことでお願いしよう。


「お姉ちゃん、プリン食べたい」

「朝食べてなかった?」

「もうおやつの時間だからいいの」


 先週からお世話になっている教会で見習いをしているアマリーが、私の手を引いてくる。

 子供の手は大人より熱くてそのくせすごく小さくて柔らかいから、いつも少し緊張する。


 アマリーに限らないけど、子供というのは小さくてわがままで、可愛らしい。シーコの村でも思ったけど、私は子供が結構好きだ。


「わかったわかった。じゃあ、一個だけ食べようか」

「んっ」


にこーと笑うアマリーは私の腕をぶんぶんと振り回すように両手で握って動かす。


 手を繋いだまま教会から出て、裏手に回る。裏側の森にはプリンの木が生えている。


 そう、プリンの木。

 笑ってしまう。当たり前みたいにアルキアさんから存在を聞いたときは耳を疑った。

 私は確かにユウコにプリンが食べれるように願ったけど、それは世界中に有名なみんな知ってるレシピとして存在するようにという意味だ。

 まさかプリンのお菓子という存在枠を超えて、果実の一つとして存在するようにするなんて、予想外すぎる。最後までユウコは私の想像を越えてくれる。


「ふふっ」

「また笑ってるー、お姉ちゃんはプリン好きだなー」

「うん。好きだよ」

「子供みたーい」

「いいよ、別に。アマリーも好きでしょ? それとも大人になったら嫌いになるの?」

「うーん、ならない! プリン大好き! ほんとだ、不思議だねぇ。なんでプリンって大人は毎日食べないんだろ」

「そうだねぇ」


 まさかプリンが世界中どこでも生えていて誰もが食べていて、子供の時から食べていて逆に大人になったらあんまり食べる人がいないとか、そんなになってるなんてね。変なの。どういう仕組みなんだろうねぇ。ユウコはすごいなぁ。


「早くとってよー」

「はいはい」

「そっちじゃなくて、もっと右の、おっきいやつー」

「これ?」

「それー」


 木の枝の位置は割合高くて、小さな子供では届かない。なのでアマリーは誰かの補助がないと食べれないのだ。

 アマリーの示すプリンをとってあげる。果実の皮は固くてプリンのイメージにはあわないけど、柔らかかったら直ぐダメになるので当たり前だろう。


「ありがと。お姉ちゃんも半分あげよっか?」

「じゃあ、お願いしようかな」

「いいよー」


 しゃがんでアマリーに目線を合わせる。アマリーは両手から溢れるほどの大きさの果実を片手にのせて、右手でもぎった時に残っているヘタをぷちりと捻りとる動きをする。

 するとぷちっと言う軽い音がして上一面がめくれるように皮がめくれる。固くて軽くて衝撃には強いのに、ねじるような回転の力に弱いのが特徴だ。中のプリンがぷるりと揺れて、実に美味しそうだ。


「お姉ちゃん、ヘタ割って」

「うん」


 差し出された上部分の皮を両手で持って、捻るように二つに割る。蓋をスプーンのようにして食べられるのでとても便利だ。

 もっとも男の子なんかはそのまま啜ったり手に出したりしてる子もいるけどね。女の子であるアマリーはちゃんとヘタを使って食べる。


「ありがと。お礼に先に一口食べてもいいよ。はい」


 アマリーは手に持ったヘタで一口すくい、私に差し出してきた。それを口に含んで乗ってるプリンだけ食べる。


「うん、美味しいね」

「ねー」


 私が食べたのを見届けてから、アマリーはぱくぱく食べ出す。頬につめるかのようにたくさんいれていて、可愛らしくてつい笑ってしまう。


「アマリー、アマリー?」

「わっ、お姉ちゃん、隠れて!」


 教会の表側から聞こえてきた呼びかけに立ち上がると、隠れてと言いながらアマリーは私のスカートの中に入り込んだ。スカートと言ってもズボンの上に着ているワンピースみたいなものなので構わないけど、外から見て入っているのはまるわかりだ。

 振り向くと声からわかっていたとおり、教会でシスターをしているオーリスが歩いてきた。


「シュリさん、アマリーを……アマリー、また掃除をサボってプリン食べてたのね」

「アマリーなんていないよっ。私は意志のある魔法のスカートだよっ」

「いいから出てきなさい。シュリさんに迷惑でしょうが!」

「迷惑じゃないもーん! お姉ちゃん私のこと好きだもーん。お母さんあっち行け!」

「私をお母さんと呼ぶのはアマリーだけでしょ。いいから出てきなさい」

「しまった!」


 オーリスに怒られて渋々アマリーは出てきた。あ、プリンがもう殆どない。さては中でも食べていたな。


「すみません、シュリさん。明日出発でしょう? お忙しいのに」

「いえ、大丈夫ですよ」


 明日でちょうど一週間となる。医者まがいのこともしていて、一通りの家を回った。旅支度というほどのこともない。その時々に調達すればいい。

 一応シーコが買い出しには行ってくれているし、後は部屋に置いている荷物を持てばすぐにでも出発できる。


「……お姉ちゃん」

「どうしたの? アマリー」


 急に静かになったアマリーは、私の手をぎゅっとまた両手で掴んだ。見上げてくる丸い瞳は潤んでいて、何だか泣きそう?


「どうしたの?」

「……出て行っちゃうの?」

「明日ね」

「……やだ、行かないで」

「……」


 もう一度しゃがんでアマリーと目の位置を合わせ、両手できちんとアマリーの手を握り返す。


「ごめんね。でも、私の薬を待っている人もいるから」

「…………うん。わかった」


 なんて物分かりがいいんだろう。こんなに小さいのに、ちゃんと大人だ。


「いい子だね。アマリーは大人だ」

「……うん。大丈夫だもん」


 アマリーは泣きそうなまま頷くと、私の手を振り払って走り去ってしまった。教会に入ったらしいドアの音が聞こえた。


 その姿に私は自分の姿をだぶらせて、ちょっと泣きそうになったけど我慢した。


「すみません、シュリさん。私も失礼させてもらいますね」

「はい。大丈夫です。アマリーのこと、お願いします」

「はい」

「シュリさん!」


 立ち去るオーリスと入れ替わりに、会釈しあいながらシーコが裏に回ってきた。

 

「ん、シーコ、買い出し終わったの?」

「はい。その………」


 シーコは何やら言いづらそうにしている。なんだろう。いい加減にシーコとも長い付き合いだし、そろそろ妙な遠慮はやめてほしい。


「なに? 言って」











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