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「シューちゃんに会いたいよぅ」


 もはやただの泣き言になった私の言葉にも、結花奈はただ静かに、そうだねとだけ応えた。

 今もこうしてもたれていても結花奈は小さいのに、結花奈は大人だ。その寛容な態度にますます甘えてしまって、私は泣きながらシューちゃんの名前を呼んだ。


 結花奈の言うとおり、シューちゃんの姉として恥じない存在でありたくて、平然を装っていた。だけどやっぱりシューちゃんのことばかり考えて、その度に泣きそうになってる。

 シューちゃんが心配だし、何より私が、シューちゃんがいなくて寂しい。

 それでもさすがに泣くほどではないと思っていたけど結花奈にシューちゃんのことを話していると我慢できなくなった。


「……うぅ、結花奈、ごめんね」


 しばらく泣いていると、自然と気持ちも落ち着いて涙はとまった。何か特別な答えがでたり、悟りを開いたりはしていない。ただ泣いていただけだけど、さっきよりずっと冷静で、帰ってきたばかりの頃の気持ちを思い出せた。

 最初に泣きやんだときも、今と同じ様に強い気持ちでしっかりしようと思えていた。時間経過で気持ちが少しゆるみかけていたけど、今ので回復した。

 泣くって言うのはすごいなぁ。いや、すごいのは結花奈か。私を泣かせてくれたんだから。


「いいや、ちょっとは楽になった?」

「うん……ありがと。大好き」


 結花奈、ほんとにいい子だなぁ。素敵だなぁ。自分だって寂しいはずなのに私のこと気遣って慰めてくれて。頼もしくって、こんなにいい子が恋人なんて誇らしいくらいだ。


「……いやぁ、うん。ねぇ、話変わるけどさ」

「なに?」


 突然視線をそらして頬をかきながら結花奈はそんな風に話題転換をした。タイミング的にはちょうどいいけど、なんでそんな言いにくそうに?


「魔法がある世界からこっちに帰ってきて、不便に感じるかなとか思ってたけど、そうでもないよね」

「そうね、というか元々、そんなに使ってなかったし」

「私はずっと身体強化してたから体が鈍ってるみたいに感じるけど、それは元の感覚を目指して体を鍛えればいいし、むしろ面白いんだよね」

「そうなの? 私は強化してなかったから、そんなに体感はないわねぇ。転移できたらいいのに、くらいで」


 向こうで魔法は必須だったけど、それは例えば魔法具がない時は魔法で火種を作ったり、移動するときに必要だったわけだけど。でもこっちでは火種なんていらないし、移動も自転車やバス、電車があるから十分だ。

 転移だけは便利すぎるけど、あの鏡がないとって意識になっていたから無意識に使ってしまうということもない。


「うん。転移はね。あれ便利だった。便利過ぎて距離感おかしくなるよ。残った2人は大変だね」

「う…だ、大丈夫よ、2人なら」


 確かに。私たちは全く違う場所なので気持ちの切り替えができるけど、2人は残ってるから間違えたりしそう。頑張って!


「まあ、違和感ないのはいいことよ。だって道端で魔法使おうとしてできないとか、恥曝し以外の何でもないわ。特に結花奈は詠唱する魔法も覚えたんだし」

「詠唱系は日常使わないから、それも問題ないよ。でもやっぱり、魔法ないとやりにくいなと思った」

「あら、なんで?」

「こう」


 結花奈は言いながら実演するつもりか立ち上がろうとして、途中で私にキスをした。


「不意打ちでキスしにくいなと思ってさ」

「……まあ、そうね」


 普通にしてもいいけど、確かに不意打ちにされるほうがドキドキするしね。それに結花奈からしたらやっぱりしにくいわよね。

 前はそれほど気にしてなかったけど、身長、もうちょっと低ければよかったと本気で思う。でも今から低くなるのは無理だし、結花奈に伸びてもらう方向で頑張ろう。カルシウムカルシウム。


「さて、じゃあ、勉強しましょうか」

「うえ、忘れてなかったの」

「当たり前でしょ」

「うー、わかった。じゃあこうしよう。お互い問題を出し合う」


 それは覚えるのにも役立つし、効率的な方法だと思うけど、結花奈は全然知らない二年生の問題だせるの? 問題集とかないわよ?


「私はいいけど、結花奈は?」

「穴あけ形式ならできるよ。あと英単語とかね」

「なるほど。じゃあ、英語の勉強しましょうか」

「OK」


 私もせっかくこうして隣り合っているのに、また向かいに戻るのを避けられるならそれに越したことはない。

 結花奈とのお話なら楽しい気持ちで勉強できるしいい。勉強は嫌いじゃないけど、結花奈と一緒ならもっといい。


「でさでさ、モチベーションを保つために一問正解するごとのご褒美形式を希望します」

「えー、一問ごとって。何が食べたいのよ」


 おやつが食べたいにしても、一問でクッキーを一つとか食べすぎでしょ。クッキーをひとかけら、はいくらなんでもねぇ。ぼろぼろにしちゃったら美味しさ半減だわ。


「何考えてるの? 優姉は色気がないなぁ」

「はい?」

「この状況でご褒美って言ったら、キスしかないでしょ。もちろん、優姉が正解したら私もご褒美あげるからさ」


 あ、あーー……なるほど。うん、ほんとに全く意識してなかった。というか、それだとあんまり勉強に集中できないような。


「……いいわよ」


 まあ、いいんですけど。というか望むところですが。とりあえず結花奈といちゃいちゃしてれば、シューちゃんへの心配メーターも増えないしね。


「じゃあ第一問。kissの意味は?」

「………せめて試験範囲から出してよ」


 簡単な問題を出すにしても、露骨すぎるでしょう。


「はいはい、じゃあ次からそうするよ。答えは?」

「わかったわよ。…口付け」

「はい、正解。ご褒美あげるね」


 もうしばらく、シューちゃんへの心配より信頼が上回るまでは、結花奈に甘えておこう。もうちょっとしたら、ちゃんと一人でも大丈夫になるように頑張るから。ちょっとだけ、ね。










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