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「結花奈、来て!」


 声に出したその瞬間には、もう結花奈が目の前にいて、私は全力でその体を抱きしめた。


「わっ、わ……び、びっくりした」


 びくっとして動きかけた結花奈だけど、目の前にいるのが私とわかったからか抱きしめてきた。

 強く抱きしめて、その温もりがあることを、その体が昨日までと変わらないことを確かめる。


「よ、よかったーっ、無事よね? 五体満足よね?」

「もちろん。うん、問題なし。さすがゆーねぇ、ぱーぺきだね」

「うー、よかったぁぁ」


 その体の確かさに、私は全身の力が抜けていく。本当によかった。


「ちょっ、ちょっと、重いよ」 


 もたれかかる私を支えた結花奈は笑いながら、私を軽々と持ち上げた。小さい子供にするように抱き上げられた。


「優姉、よくできましたー」

「結花奈のおかげよ、ありがとう」

「ふっ、その通りだけどな」

「こいつー」

「うはははは」


 何だか妙なテンションになって、私は結花奈の頬を引っ張って、結花奈は私を高い高いしたまま回りだした。


 しばらくそうして声をあげて笑って回ってから、気恥ずかしくなったのでさりげなくお互いにやめた。


「さて、んじゃ、もうちょっと練習しようか」

「ええ、そうね。じゃあ行くわよ、結花奈」

「おう」

「じゃあ、結花奈、発進!」


 私は空を指差して叫んだ。


「どわあああっ」


 遠く上空に突如現れた結花奈はそのまま悲鳴をあげながら急降下し、五メートルくらい落ちてからぐいっと曲がって弾丸のような勢いで戻ってきた。


「ゆーうーねーえー!!」

「おかえりなさい。成功ね」


 目の前に着地した結花奈は何故か恐い顔をしているので、ことさら笑顔で成功を喜んでみた。


「成功ね、じゃない! 私じゃなかったら死んでるよ!?」

「え、そう?」

「そうだよ!」


 ………そう言われて見れば、そうかも知れない。そうそう飛行魔法なんて使えないし、咄嗟に適切な魔法を使えるかと言うのもあるだろう。


「でも結花奈なら大丈夫でしょ?」

「…大丈夫だけど、だけどさぁ。え、なに? もしかして私に恨みでもあんの?」

「ないわよ。大好き」

「こわっ」

「ひどっ」


 疑われているようだから気持ちを伝えたのに。恐いとかなによ。

 結花奈は私をじと目で見るのをやめずに、どころか偉そうに腕組みをして胸をそらした。


「てか何さ。発進て、私は巨大ロボか」

「ええ、そんなノリだったわ」

「ノリで殺す気か! 転移先を口で言ってからしろよ。次からはほんとに怒るからな」

「はいはい、悪かったわよ」


 相手は結花奈なんだし、そんなに怒らなくてもいいのに。まあ、確かに危険は危険だし、もうしないけど。


「じゃ、続きしてもいいよ」

「いいの?」

「……しなきゃどうしようもないでしょ。ほんと、頼むよ?」

「任せて」


 さすが結花奈。頼もしいなぁ。よし、ちゃんと今までと同じように応用もできるように頑張らないと。









「あ、ユウコおかえり」

「シューちゃーん!」


 夕方になって帰る途中、村の入口に入ったところでシューちゃんたちが見えた。

 大きな声で呼びながら、結花奈の手を掴んで転移する。


「よっ!」

「わっ!? え……え!? もうそんなことできるようになったの!?」


 シューちゃんの前に現れると、シューちゃんはまばたきを数度してから目を見開いた。


「えへへん、どんなもんよ」

「す、すごいね、ユウコ」


 シューちゃんは感心したように私を尊敬の眼差しでみつめてきた。


「ユウコ君、ユカナ君もおかえり」

「あ、ただいま、シーコさん」

「ただいま、2人とも。そしてシュリはさりげなく私を無視しただろ」

「ううん。そんなことないよ」


 シューちゃんが無視するわけないじゃない。全く、結花奈ったら私がシューちゃんから尊敬の眼差しを浴びたからって、嫉妬がすぎるわよ?


「ま、いいけど」

「シューちゃん、今日楽しかった?」

「うん、もちろん」

「よかったわね」

「うん。明日は一緒に勉強して、遊ぼうって」

「えっ」


 思わず普通に驚いてしまった。いけない。せっかくシューちゃんが自分だけの力で友達をつくって、約束までして素晴らしいと思います。思うわよ?

 でも明日は全国的にお休みなのに。うー、明日はシューちゃんとも一緒に過ごそうと思っていたのに。


「え…え? だ、駄目だった?」

「駄目ぇ、じゃ、もちろん、ないわよ。でも明日お休みだし、私も一緒させてもらえないかしら」

「は? 何言ってんの?」

「え?」


 何故か隣から馬鹿にしたようなツッコミがいれられた。結花奈を見ると、呆れているような顔をしている。


「なによ、その顔は」

「なに、休みって。仕事じゃないんだから、休みとかないでしょ」

「え? や、休みなく特訓させるつもりだったの!?」

「とりあえず今はまだ区切りが悪いし」

「えぇー、やだー」


 もっと早く言ってよ。完全に明日休みのつもりでいたー。うわー、テンションさがるわー。やる気ちょーでなーい。あーー。 


「ものっすごい嫌そうな顔するね」

「やだー……いや、どうしても明日もすることが必要なら、うーん、しますよー? しますけどー」


 今日は自分自身含めて、目に見える範囲なら瞬間移動できるようになったし、むしろかなーり区切りがいいと思うのよねー。


「ユカナ君、ユウコ君もずっと特訓で疲れているだろうし、家としても休みは少し食事の時間が変わるので、休んでくれた方が助かる、ような」

「…そんなこと言われてたら、どうしようもないじゃん。んだよー、私悪者かよ」

「そんなことないよ。ユカナも頑張ってる。でも、ユカナも休んだ方がいいよ」

「うーん、まあ、シュリがそう言うなら、しゃーないか」


 よしっ、じゃあ明日は休みだ!

 明日は週1である学校の日ってことだけど、私誘われてないけど押しかけOKなのかしら。



「シーコさん、勉強ってなにするの? 私も受けて大丈夫?」

「受けるのには問題ないが、シュリさんにも言ったが、子供向けの簡単なものだよ?」

「全然OK、興味があるわ」

「ふむ。ならまあ、先生役をしてくれても助かるし、好きにするといいよ」

「ありがとう、シーコさん。シューちゃん、明日よろしくね」

「うん、楽しみだね」


  








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