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「シーコさん? 聞いてます?」

「あ、ああ。聞いているよ。私の突然の行動に驚いているんだろう? わかっているよ。私もつい興奮してしまってね。理解してほしいのは、私がいつもあんな調子ではないと言うことだ」


 シーコさんも落ち着いたらしい。今日最初に会ったときのように、多弁でゆったりとした話し方をしている。


「さて、どこから話したものか。シュシリング様の」

「あの」

「ああっ、どうされました? 姫」


 シューちゃんが声をかけると途端にシーコさんは興奮したように身を乗り出し、シューちゃんは近づかれた分あからさまにひいて、結花奈の後ろに隠れようとした。


「……私のことは、シュリでいいから、敬語はやめて」

「はっ、いえ、しかし………わかり、わ、わかった。シュリ、さん。で、いいかな?」

「うん。普通にして」

「了解した」


 うん、ナイス判断よ、シューちゃん。やりにくいもんね。

 シーコさんは赤くなったりにやついたりして一通り変顔してから、改めて話し始めた。


「シュリさんの姿を一目見て、一目惚れした」

「……はい。で、ご主人様と言うのは?」


 さらっと言ってるけど、まぁ一目惚れまではいい。同性じゃん、とか突っ込める立場ではないし。


「私は幼い頃、お姫様のように美しい人を見たことがある。そしてその人の側にはむかつく顔の男が寄り添っていた。まるで姫と騎士のように。私はそれからずっと憧れていた。姫のように美しい人に仕えたいと」

「むかつく顔?」

「すでにわかると思うが、私は同性愛者だ。イケメンな男は顔を見るだけでむかつく」


 はあ、そっすか。ま、まぁ、それはいいか。うん。


「5つになるころに一度、ほんの数分言葉を交わしただけだが、今でも覚えている。金の髪、緑の瞳を持った実に美しい人であった。シュリさんはどことなく似ている気さえする」


 それは単に好みの系統の問題でしょ。それにしても、五歳から同性愛者と自覚してるとか早くない? 私なんか性別の差があることもよくわかってなかった気がする。 


「惚れたと言え、いきなり恋人にしてくれと言うつもりはない。まずは私の主として、騎士として側にいさせてほしい」

「嫌だ」


 黙って聞いていたシューちゃんだけど、視線と共に尋ねられて間髪入れずに断った。

 シーコさんは物凄い傷ついた顔をする。うーん、ちょっと罪悪感がないでもないけど、恋人の前にいきなり騎士とか意味分からないし。普通に初対面だし、旅の途中だから友達になるのも難しいしね。


「そ、そう言わずに。まずは私の人柄を見てだね」

「いやさぁ、普通に考えてよ。優姉とは友達かも知れないけど、こっちは他人だよ? なに、騎士とか姫とか。マジドン引きだし」

「ちょっと結花奈、友達ってほどではないわよ」


 シーコさんを諦めさせようとする結花奈だけど、友達ではないので訂正する。知り合いと言えば否定はできないけど、友達ではない。

 結花奈はちらっと私を見てから、無視してシーコさんに再び視線をやる。


「とにかく、本当に騎士として働いてるわけでもないのに自称騎士とか痛すぎ」

「い、いや、ちょっと待ってくれ。一応、本当に一応だが、故郷では名誉騎士の役職を得ている」

「名誉騎士ぃ?」

「うむ。私は村をでて、きちんと元騎士の方から剣技を学んでいる。そのため、村長から名誉騎士と評してもらった。名前だけで、村で働いていないし給金もないが。一応、自称ではない」

「あやしーなー」


 と言うか、だとしてもシューちゃんを姫と呼ぶのは妄想でしかないよね。お姫様みたいに可愛いのは全く同意ではあるけど。


「あ、怪しくない。そうだ、これから一緒に故郷へいこう。そうすればはっきりするはずだ。うん。それがいい。私のことも理解していただけるはずだ」

「は? 嫌だし。私らこれから行くとこあるから」

「うむ。だから一緒に行こう」

「はぁ?」

「えっと、ちょっと齟齬があるから説明するわね」


 物凄い胡乱げな顔でシーコさんにメンチを切る結花奈をなだめるように、二人の間の視線をチョップできる。


「さっき私たちがケイタリスに行くこと話したんだけど」

「まず話すなよ。優姉はほんとに、警戒心なさすぎ。これから自由行動なしにするよ」

「ごめんなさいってば。でも仕方ないじゃない。シーコさんがなんか変な人だと知らなかったんだもの」

「どこの世界に、自分変人です、てな札下げて歩いてる人がいるんだよ。全く」


 うう、結花奈手厳しい。確かにシーコさんは変な人だけど、ドン引きしたけど、でも、悪い人ではないんだけどなあ。

 実際助けてもらったし、話している感じでも。ちょっとお馬鹿だけど、馬鹿正直って感じで、嘘が付けなさそうだ。


「で? 話してなんだって?」

「ええ、実はシーコさん、ケイタリス出身なんですって。ついでだから送ってもいいけど、私が怪しいかとか言うようなお人好しさんなのよ」

「本当に怪しいとしか思えないけど」

「いやいや」


 シューちゃんに会うまでは本当に普通だったんだから。ちょっと可哀想になってきた。


「頼む、ユウコ君だけが頼りだ。なんでもするから、ケイタリスまでついて行くことを許可してくれないか」

「え、えーっと」


 えー、だからってそれはなぁ。さすがに。シーコさんが帰郷するのを止めさせる権利はないけど、一緒って言うのは。悪い人ではないけど、友達でもないし。


「私はそれなりに腕も立つ。荷物持ちでもなんでもする」

「えっと、二人はどう思う?」

「……私はユウコがそうしたいなら、別にいいけど」

「えー、やだよ。それに、一人増えたら時間かかることわかってる?」


 時間? あ、そうか。シーコさんの目の前で空を飛ぶわけには……はっ。


「シーコさんは、シューちゃんが好きってことだけど、もちろんシューちゃんが嫌がるなら指一本もふれない紳士よね? 騎士なんだもの」

「もちろんだとも」


 シーコさんは重々しく頷く。うんうん。それに滅多なこともないと思うけど、もし何かあっても結花奈がいれば大丈夫よね。


「じゃあ、シューちゃんが嫌じゃないなら一緒に行きましょう」

「うーん、まぁ、ユウコが言うなら、いいけど」


 シューちゃんはちょっと考えるように首を傾げたけど、上目遣いに見つめてくるシーコさんを見て、渋々頷いた。


「いやいや、なんでそうなるのさ」

「旅は道連れ、世は情けよ」

「シュリに変な虫がつくじゃんか」

「大丈夫よ。むしろ、人見知りの改善にちょうどいいわ」


 それに空を飛べないと言うことは、つまり大地の上を走って、一つずつ街を回ると言うことだ。ちょっと大回りだけど、北の山を右回りで迂回するコースなら、あのスープの街によれる!


 それに、シューちゃんの人見知り改善も嘘ではない。シューちゃんが気持ち悪いとか人の悪口を言うのも珍しい。シューちゃんは自分の感情を表現するのはまだ苦手な方だし、シーコさんとしばらく一緒にいるのもいい刺激になるかも知れない。

 悪口言ってたら、案外、気の置けないいい友達になるかも知れないしね。それは高望みだとしても。


 と言うことで、一時的に4人パーティーになります。ちょっと勇者っぽいかも?











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