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行き先の予定を変更します

 クレイグ・ギャレット近辺が今回の件の犯人。

 その話に一番驚いていたのは、ユーリアだった。


「ら、ライ様……私はずっと二人の会話を聞いていましたが、どうしてその結論になったのかが分かりません。一体どこでおかしいと分かったのですか?」

「最初の方だよ、まだ屋敷に入る前」


 今度はビルギットさんが驚く。

 ユーリアと同じように、ビルギットさんもかなり頭が回る人だ。だけどどこがおかしかったかは、わからなかったようだ。


「最初となると、私も知っている筈ですね……。クレイグ様の言葉……ライ様は一体あの時、何がひっかかったのでしょうか」


 ふむ、『引っかかった』、か。その辺りはビルギットさん、さすがいい読みだと思う。


「まず最初に、その違和感を語るにはエドナさんとクラリスさんとの最初の会話が肝心なのですが……さすがに詳細には覚えていないですよね」


 皆頷くけど、これは普通だ。

 どちらかというと僕の方が特殊だと思う。これもラムツァイトの洞観士の力なんだろうか。

 こういうことを考えていると、どこまでが自分の能力で、どこまでが勇者の力かはわからなくなるな。


「これは本当に、ほんの少しの違和感なんです。僕自身がはっきりこうだと言い切れるほどの自信もないので、ここで語るのは控えます。だけど、どうにもこの違和感が、ゼルマさんにもらったであろう能力に反応している気がするんです」

「洞観士……」

「そうです、リンデさん。なので少し、相手の様子を探ることにしようと思います。方針変更で予定が変わりますが、いいですか?」


 リンデさんはみんなと顔を見合わせた後、僕の方に向いて笑う。


「そもそも私たち、ライさんについていく以外に目的ないですし、せっかくですからのんびりしましょう!」

「よかった、じゃあ決まりですね」


 僕達が話し終わったタイミングで、クラリスさんが屋敷から出て来た。


「あ、まだここにいたのね。……なんだか身内の話がごたごたしちゃって、巻き込んだ身としては申し訳ないわ。それで、えーっと、マナエデンだったわよね。いいわよー、船で二日か三日かかるけど、お姉さんが案内してあげようじゃない」

「……クラリスさん、その三日というのは片道ですか?」

「ええ。それなりに遠いというか、ぐるぐるっと北東に伸びる大陸を回り込んだ上で、折り返して北西に進むという、不便な場所に島があって……更にマナエデンは船での入り口が北の方にしかないのよねー。だから誰も余所者は来られないように出来ているのだけれど、不便ったらありゃしない」

「……なるほど、マナエデンでじっくり島を見て回りたいので、もしもこちらに返ってくるとなると一週間以上は絶対にかかるんですね……」


 ……うん、決めた。今ここカヴァナー連合国シンクレア領を離れるのは危険だ。

 それに、マナエデンで調べたり買い物をしたりするのは、出来る限り余裕があった方が自分としては嬉しい。


「そのマナエデン行きですが、延期してもらってもいいでしょうか? 少しこちらに滞在したいのです」

「へ? もちろんそれぐらいならいいけれど。あんなに行きたがってたじゃない、なんでまた」

「クラリスさんには話してもいいですかね。……もしかしたら、シンクレア領がまた魔物の脅威に晒されるんじゃないかと予想しているんです」


 クラリスさんはそれまでのひょうきんな感じをやめて、静かに眼を細めた。


「……一応理由を聞いてもいいかしら」

「魔物が意図的にやってきた可能性が高いからです。ほとんど予感みたいなものなので、信じなくてもいいですよ」


 さすがにこんなアバウトな説明で信じることはないとは思ったのだけれど、クラリスさんはあっさりと信じた。


「分かったわ。街の冒険者はもうギャレット領に返しちゃうけど、私は外の方をそれなりに警戒しておくことにするわね」

「信じるんですか?」

「信じるわよ。だってあなたはミア様の弟様。最初は大したことない子なんじゃないかと思ってたけど……今は違うわ」


 クラリスさんからの信頼が厚い。確かに助けはしたけど……なんでだろう。


「なんでだろう、って顔をしてるわ」

「あっ、まあ、そう、ですね。ちょっと驚いてます」

「それだけのことをやったのよ。で、この後はどう行動するの?」

「せっかくなので、思い切ってカヴァナー連合国を歩こうかと」


 なんといっても、全く新しい国なのだ。

 昨日のチョコレートケーキが店から出没してくるという時点で、明らかに僕の国の付近とはいろいろと違うと思われる。

 同時に甘いもの以外でも、服や宝飾品、その他のものもきっと違うはず。そういったものをたくさん見ていきたいというのが本音だ。


 それに……ユーリアをあそこまで受け入れてくれた国だ。

 魔人族の皆を連れて、大手を振るって歩くというのは、きっとみんなにとってとてもいいことになると思う。

 山賊の人達だって、海賊の人達だって、根っからの悪人ではない。皆事情があり、その事情が解決されるのなら真面目に働くような人達だった。

 きっと、ここの国の人達は温かい。その直感は間違いではないだろう。


 いろいろな滞在理由を話してみると、クラリスさんは嬉しそうに笑った。


「ふふっ! んー、いいわね! それだけシンクレアを気に入ってくれたのなら、第二の故郷にしてエドナの友人である私としても嬉しいわ! まだ新たに輸入品を持ってくるまで日は空いてるから、私自らが案内したげる!」

「それは助かります! どこに何があるかは、全くわからないですから」

「ふふん、感謝なさい! ミア様の弟君に頼られるの、気分いいわねー」


 堂々とそんな独り言が漏れまくってるクラリスさん、なかなかいい性格している。でもこういうさっぱりした感じの人って、裏表が感じられずに本音で喋ってるって伝わるから話していて気持ちがいい。


 クラリスさんは門の前でこちらに向き直ると、大げさな動きで礼をする。


「それじゃあお客様、本日はシンクレアでどのような店をご希望ですか?」


 自分でおかしかったのか、ちょっとおどけて舌を見せるエルフさん。

 昨日は甘いものを食べたし、朝食は食べ終わって昼まで時間はあるし……そうだなあ、魔人族の皆も退屈しないもの。だったらやっぱり……。


 僕はリンデさん達に顔を合わせると、一つの案を出す。


「宝飾品店があったら、行ってみたいですね」

「わーっ、いいですね! 見てみたいですっ!」

「へー、魔人族も指輪とかネックレスとか好きなんだ」

「宝飾品が嫌いな女の子はいませんっ!」


 満面の笑顔で断言し、残りの三名の頷く姿を見て楽しそうに笑うクラリスさん。

 こうして次の目的地が決まった。


 シンクレアに何が起こるか、まだわからないけど……それでも、気持ち良く解決をして、マナエデンへ向かいたいな。

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