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僕と姉貴の話をしました

 夕食をおいしく食べた後は、オフェーリアと今日の討伐の話になった。


「この辺りではあまり魔法使いがいない印象だったけど、オフェーリアの魔法はかなり精度がよかったと思う」

「あら、ライ君に褒めてもらえるなんてうれしいわねって言いたいところだけど、嫌味じゃないか疑ってしまうぐらいにはライ君も凄い魔法だったわよ」

「はは、そう言ってもらえると嬉しいよ。周りが僕より凄い人だらけだったからあまり実感はないけどね」

「そうなのね、ビスマルク王国ってそんなに優秀な魔法使いが多いのかしら」


 ううん、僕の魔法自体はそこまで大したものじゃないけれど、周りがちょっと凄すぎただけです。後はレオンの強化魔法を習ったお陰。

 しかしオフェーリアさんを信頼しているとはいえ、魔族が魔法の先生とはとてもではないけど言えないので、そこは曖昧に笑ってごまかす。

 

「帝国よりは多いかな。僕が強化魔法を習っていることを抜きにしても、全体的に弱いかなと思う。オフェーリアとアウローラは優秀だね、さっき習ったようなことを言っていたけど」

「あー、師匠は野良で魔法を教えている人でね。といっても師匠自体もそんなに強いわけじゃないのよ」

「治療院での魔法を見た限り、私は圧倒的にライの方が上だと思うなあ。もうほんと凄いよ」

「そ、そうなんですか」

「あっ、口調戻ってるよ」

「す、すみま……じゃなかったごめんごめん、本当に褒められることに慣れてなくて」


 僕とアウローラの会話を聞いて、オフェーリアが不思議そうに声をかける。


「でも、いくら王国の魔法使いが優秀だからって師匠より遥かに上の人がごろごろいるわけではないと思うわ。ライ君の周りは一体どんな人がいたのよ?」


 ああ、確かにそりゃあそこは突っ込まれるよな。

 オフェーリアが少し気まずそうに僕の方を見る。そんなに気にしなくても大丈夫だよ。

 しかし……うーん、オフェーリアにも話してもいいかな。


「そうだね、じゃあオフェーリアにも話すよ。話が広まると僕はもうここにいられなくなるから、くれぐれも内密にね」

「どんな秘密よそれ……まあ、口は固い方よ」

「分かった」


 僕はオフェーリアに、自分のことを詳しく話した。


 数ヶ月間の世情を知らなかったことをまず最初に話す。

 そして、僕の姉のことを話した。

 料理のことも。


「……そっかあ〜、勇者ミアの弟かあ〜っ……そりゃこんなに卑屈にもなるわねぇ〜……」

「卑屈なつもりはないんだけど」

「帝国内イチの魔法使いが自分はまだまだなんて言ってたら嫌味以外の何者でもないわよ、私だって帝国内じゃ相当上位のちょっとした有名人なんだから」

「うっ……すみませんでした」

「いいけど次敬語使ったら怒るわよ」

「わか……った。うん、了解だ。嫌味は駄目だね」

「そういうこと」


 オフェーリアは表情を緩めると、ぐいっと身を乗り出してきた。


「それはそうと」


 ……な、なんだ……?


「勇者の魔法って、どんなやつなの?」

「姉貴の魔法か……そうだなあ」


 あまり僕の前で攻撃魔法を使うことはなかった。

 昔にちょっと見せてもらった以外は、道中でどれぐらい成長しているのかはわからないけど、直近では……。


「そうだ、炎の塊が空まで立ち上るようなのをやってたかな」

「……どんな魔法?」

「こう、その場所一帯がまるまる吹き飛ぶぐらい大きな音で爆発するんだ。地面が真っ赤に溶けたりしてね、キマイラが大量に発生していたけど、体の中にあった核の魔石を回収もできないぐらい、何もかも派手にふっとぶ」


 僕の説明を聞いて、オフェーリアが腕を組んで唸る。


「……あのさあ、ライ君から見て、勇者ミアってどんな性格?」

「うーん、やっぱ気分屋かなあ。勇者の紋章が出るまでも近接武器を何でも扱えて、喧嘩も強くてよく笑いよく怒る、そんな女の子だったよ。今は二十歳だけど、あまり性格は変わってないかな」


 アウローラも身を乗り出して聞いてきた。


「昔よりは丸くなったけど、悪鬼王国のデーモンって魔族を相手にすると煽りながらパンチ一発で殺したり、とにかくデタラメに強いし敵に対しては喧嘩っ早いよ。伯爵令嬢と対立した時も、思いっきり地に膝を突かせたりしてたし」


 僕が話を終えると、アウローラは「ふえ〜、すっごいなー」なんてストレートな感想を言っていた。

 反面オフェーリアは無言で俯いている。かと思ったら頭を抱えてうんうん唸りだした。


「どうしたんですか?」

「…………いや、どーしたもこーしたもないわよ」


 オフェーリアは顔面蒼白のまま、顔を上げて僕とアウローラを見る。


「私は攻撃魔法をあっちの船に撃ちこもうとしたこともあるけど、まだ未遂なのよね」

「はあ」

「……君が乗ってるって知らない状態でそんな魔法撃ち込んでキレられたら、私ら骨も残らないわねーって思ってたところ」


 ……あ。


「あの貴族が好き放題船を攻撃した後の掃除をするだけの任務、安全じゃないんじゃない? たまたま勇者ミアに当たって反撃もらったら……」

「いくらあの姉貴とはいえそんな短絡的なことは……他国の……ああでも喧嘩売りまくりだし、貴族を相手に……いや、勇者の称号自体が貴族みたいなもんだった……ううん……」


 今はまだ問題を起こしていないけれど、結構あの任務は危ない橋かもしれない。

 なんとか辞めさせたいけど……難しいかなあ。

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