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228話 本気の勝負①

 ある日の昼下がり、リビングにて。

 きっかけは些細なことだった。

 あたしが何気なく口にした、「腕枕ってなんかいいよね」という発言。

 テーブルを挟んで温かい緑茶を飲んでいたミミちゃんは湯飲みをスッと置き、「分かります!」と瞳を輝かせた。

 それを発端に腕枕について一時間近く語り合い、いまに至る。


「あたし!」


「わたしです!」


「さすがにこれは譲れないよ!」


「わたしだって譲れません!」


 いつになく声を荒げ、攻撃的な視線を交わすあたしとミミちゃん。

 普段温厚なミミちゃんが見せる力強い表情には、かわいさはもちろんかっこよさも感じられる。

 ミミちゃんの顔をもっと近くで見たいという思いと言葉の勢いが相俟って、あたしは無意識のうちに立ち上がり、テーブルに手を着いて身を乗り出していた。

 同じ理由かどうかは分からないものの、ミミちゃんも同じような体勢だ。いま二人の顔と顔の間には数センチ程度の距離しかない。


「あたしがする!」


「わたしがします!」


 息がかかるほどの距離で、同じやり取りを繰り返す。

 一歩も譲らぬ言い争いを繰り広げている途中だから言えないけど、ミミちゃんの方からすごくいい匂いが漂ってきてドキドキする。


「やだやだ! あたしが腕枕するの! ミミちゃんは大人しくあたしの腕に頭を置いて寝て!」


「ダメです! わたしが腕枕するんです! ユニコちゃんこそわたしの腕を枕にして寝てください!」


 ――今夜、どちらが腕枕をするか。

 日によっては互いの要望がきれいに『する側』と『してもらう側』で分かれるというか、仮に被ってもどっちかが譲歩するんだけど、今日は二人ともいつになく主張が強い。

 自分がする側になると言い張って一歩も譲らないまま、さっきからずっとこの調子で言葉をぶつけ合っている。

 ほぼ確実に腕が痺れてしまうことに加え、寝返りを打てないというデメリットがあるのは承知の上だ。

 それでも、あたしはミミちゃんに腕枕をしたい。

 特に深い理由はない。たまたま今日はそういう気分だったとしか言えないし、きっとミミちゃんも同じなんだと思う。


「こうなったら、勝負して決めるしかないね」


 あたしがそう言うと、ミミちゃんはコクリとうなずいた。

 流れが変わると共に二人を包んでいた熱気がどこかへ消え、あたしたちはいったんイスに腰を下ろす。


「どういう勝負にするか決めましょうか」


「うんっ。その前にお茶のおかわり淹れてくる。ミミちゃんも飲む?」


「あっ、お願いします。それじゃあ、わたしはお菓子を出しておきますね」


「ありがと~」


 勝負内容を決める話し合いを控えているとは思えないほど、ほのぼのとしたやり取りだった。

 まぁ、別にケンカしてるわけじゃないからね。

 お茶とお菓子を楽しみながら、後腐れなく全力でぶつかり合える勝負内容を決めるとしよう。

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