蛮族ロマンチスト
街を西門から抜け、街道の先にある【フロイス湖】に沿って進んでいくと【リュッケン廃道】というエリアに行き当たる。
その昔、鍾乳洞のダンジョン【リュッケン地底湖】の資源を運ぶために作られた街道なんだけど、モンスターがいただとかもろもろの事情で閉鎖されたんだとか。
以来【リュッケン廃道】は腕自慢の冒険者たちが使う道になったのだけれど、ロック曰く隠しエリアはここにあるらしい。
そんな理由で手つかずになり荒れ果てた【リュッケン廃道】は見渡せば一面、季節でも何でもないのに紅葉が舞い散る秋模様……今はやってる場合じゃないけど、ここでピクニックとかできたら楽しい気がするのよね。
湖も近くにあるのだし、どこかへ流れ出している川もあるはずだ。
そこの岸でシートを広げて、行楽気分に浸りながら遊んですごす……うん、アリだ。
しかも……
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素材【オカマキリ】獲得!
素材【ヤドリギ】獲得!
素材【ニガワライタケ】獲得!
素材【賢者草】獲得!
素材【マッシュパウダー】獲得!
素材【魔法の草】獲得!
素材【冬虫夏草】獲得!
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「めっちゃ稼げるじゃんここ……誰よ、ただの道とか言ったやつ」
「はいです、以前もきましたがここはほっくほくなのです」
そんな場所で私とエリンちゃんは前のロックたちを見失わないよう気を配りつつ、採取しながら進んでいた。
溜まった落ち葉の中に隠れているのは虫やキノコ。ついでにそこいらから薬草の類もとれるのだからなんともまあお得なエリアだ。
このあたりだけで基本的な薬は全部できるんじゃないかってくらい種類も豊富だから、その手の調合が本懐のエリンちゃんもご満悦。
生産職2人そろってしんがりにいて平気か? って思うだろうけど、
「ウッス!!」
「そんなんじゃおれはつかまんねーぜ!」
「それはいいけど前に出すぎて押しつぶされないようにな!」
「ヘーキヘーキ、こんなトロい臼につかまんねーよ!」
「そこです――【初夢】!」
この通り前方の魔物はやたら張り切ってるシオンに引っ張られる形で前衛たちが蹴散らしてくれるし、万が一後ろから来たとしてもアルの【危険予知】に引っかかるから丸わかりだ。
「……リーズ、後ろからクリがくるぞ!」
「クリクリー!」
ホラ来た。
来た道を振り返ってみれば、そこには落ち葉を巻き上げて出てきたイガグリのモンスターが大きく体を膨らませる姿が。
体中のとげを射出してくるモンスター、【クリマロ】だ。
爆発しながら見境なくまき散らすから、集団でここを通るときは苦労するんだろうけど……。
「【サンダークラップ】!」
「【アクア】です!」
「クリリリリ!?」
エリンちゃんが踏破してるおかげでモンスターの傾向は判明済み。
それにレベルもかなり低いから、私たち2人でも楽々仕留められるのだ!
いやあそんなにトゲトゲしてたら大変よねえ、雷とかさ!
「く、クリーーー……」
強襲したかと思いきや即座に反撃。
哀れ【クリマロ】はエリンちゃんの出した水鉄砲で近くの木に思い切り叩きつけられましたとさ。
*
その後も探索は続き、私たちも好調に足を進めていた。
「えへへ、【ムカムカデ】ゲットです……!」
しっかし【モンキーアゲハ】の時もだけど、実体化している虫もお構いなしにとっちゃうのね、珍しい……あの怖いものなしっぽく見えるおぼろちゃんでも「足がわきわきしてて苦手なんです!」って言って逃げちゃうのに。
「昨日も思ったけど虫を触れるのねえエリンちゃん……」
「はいです、私のすんでいるところは田舎でしたから、こういうのは慣れた物です」
「へえ……田舎かあ、私そういうところいったことないからちょっとあこがれちゃうな」
「都会の人はすぐそういうです……退屈ですよ? 段々の畑ばっかりだし、夏はセミがうるさいし、近くは森で暗いし、誰も来ないし……」
うーん……嫌味に聞こえちゃっただろうか?
本当の本当にあこがれてるんだけどなあ、「何もない場所」っていうのは事実なんだろうけど、聞けば聞くほど私には魅力的にしか聞こえないしさ。
世界のいろんなところに行ったけど、観光客がごった返してるようなのばっかりだったし。
絶景があるって言ったって、あんなごみごみした雰囲気じゃ絶対に楽しめないと思うのよ。
「いーじゃない、何もない山に何でもない森! 夜そういうところに行ってみんなで流れ星を探してみたいのよ」
「リーズさん、割とロマンチストですね……ふふ、だいぶん凶暴な人だと思っていたのでちょっと安心したです」
「あー、笑ったわね今っ! 純粋な人の夢を笑うなんてたとえかわいい女の子でも失礼なんだぞー!」
よほどおかしかったのか、そのまま長袖を手に当ててちょっと優雅にくすくす笑い続けるエリンちゃん!
そんな調子で戯れていると、
「リーズさん、エリンさんはやくー! おいてっちゃいますよー! ……シオンも足を止めてください、離れてるじゃないですか!」
私たちに呼びかける声が聞こえてきた。
見てみれば前衛組ははるか先。ロックを先頭にまっすぐなはずの道を横にそれ、そのままヤブだらけの斜面へと入っていった……!
「げ、もうあんなところに……」
「ええ、無理言ってついてきてもらったアルさんをお待たせするわけにはいかないです、それにロックさんも……」
「ロックさんが言うにはこの先にあるそうです! はぐれるといけないのでお早めに!」
そう叫んでから入っていった彼女たちに追いつくべく、私たちも走り出す。
素材がおいしいし、たくさんお話できたのはいいけど、そのせいでおいてかれるなんてたまったもんじゃないからね!




