スーサイドシンデレラ・オーバードライブ!(後編)
このゲームの建造物が破壊できるのはシオンがが体を張って証明した!
理屈の上ならNPCの家だろうが、壁だろうが、プレイヤーの工房だろうが、門だろうが橋だろうが何でも壊せるんだ!
この【毛細地下水道】っていう建造物の天井だって、破壊できてもおかしくない!
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【シンデレラパウダー】発動! リーズは復活した!
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「お、おい……魔法が途切れず出てきてしかもどんどん強くなってねえか!? どういうビルドだありゃ!」
たとえ何度死んだとしても、そのたびにまだまだ足りないって気合を入れろ!
【ボルテージバングル】で威力が上がっていくとしても、相手は地面を支え続けてる屋台骨だもの! そんな簡単に落ちるわけがない!
「……思い出したぞ【蛮雷】だ、ファラさまの生放送でテロった奴だ! アイツから先に殺らないと――」
「はーいよそ見厳禁! 斬りこんじゃえボーイ&ガール!」
「うるせえ!」
「命令しないでください!」
「と、言いつつもあの子のためになるから迷わず行っちゃうんだねえ……かわいいねえ、エモエモだねえ!」
……今すぐ杖を前に向けてこの威力マシマシのブリッツを当ててやりたいけど、今そっちを気に掛ける暇はない!
あの子たちの為に私は1歩も動いてやれないもんね!
「後で相手してやるから、邪魔すんじゃねえ!!」
「いっ――!」
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【シンデレラパウダー】発動! シオンは復活した!
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「――たくねえっ! お前らなんか怖くねえ、怖くねえぞ!」
「【幻影剣】!」
「ちいっ!」
狙われてる立場なのに、全部台無しになるかもしれないのに、あの子たちは1番安定しない私に委ねてくれたんだから、言い出した私が実行しなくてどうするって話だ。
限界振り切れてもかっ飛ばせ、私は前しか向かないもの!
「は、弾けよ誠光の一端【リヒト】!」
「影よ食らいつけ【シャドウエッジ】!」
攻撃したって無駄だ!
私は死なないし、捕まってもやらない!
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【シンデレラパウダー】発動! リーズは復活した!
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おとぎ話の主役は復活するもの、その程度コケ脅しにもならない!
黒い槍がいくら体を刺そうが、光弾が体のどこを焼こうが、まんじりとも動いてやらないんだから!
私は一念で岩を壊してやるんだ、さあ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ――――!!
……めぎり。
「耐久、足りてないんじゃない?」
クレインもほかの人たちも、みんな驚いた顔で制止する。
そして私はにやり、と運営に向けて言ってやりながら、
「こ、わ、れ、ろーーーーーーーーーー!」
地下水道の天井を、その上の地面を吹き飛ばしてやった!
そもそもとしてここは地下ダンジョンだもの、その真上はもちろん街のどこかだ。
どこに出るかは不明だけど、通路ガレキ以外の物が落ちてこないのなら少なくとも建物の下じゃない!
なら、いける!
「すっ、すげえ……本当に天井ブチ抜いちまった! ホントすげえなお前!」
「いいからシオン脱出、おぼろちゃんは言った通りに!」
「はいっ!」
「待てコラガキっ……!?」
脇をすり抜けていくおぼろちゃんを捕まえようとしたパーシバルに、にこにこのマリーが立ちふさがる。
「はいはい未成年へのおさわりNG! 通報もんだよー?」
「ふざけんな!」
「どの口で言ってるんですか! さっきさんざん……!」
「まあまあ……これ抑えとくからさ! 代わりっちゃあなんだけど私とクレインさんもおこぼれにあずからせておくれよ、ボス倒した帰りだからデスペナ怖いしね!」
やっぱり反省してないのもだけど、バレバレかあ……
まあ予想はしてたけど、パーシバルを相手にしながら私の狙いを理解して穴のすぐそばまでくるとか、どんだけカンがいいんだ。
「……はあ、わかった」
「リーズ!?」
いろいろ言いたいことあるけど、今はとりあえず目の前だ。
これ以上攻撃に間が空いたら【ボルテージバングル】も【シンデレラパウダー】も効果を失って、本当にただただ逃げるだけになっちゃうもの!
それじゃあ、こんな状況を作った運営への意趣返しにはならない!
「行くわよシオン、おぼろちゃん、準備はいい?」
「……体も心も万端です、いつでも」
「ったく……まあいいけどな!」
「じゃあよろしく! 私につづけー!」
私のジャンプに合わせて、おぼろちゃんはその下に刀の峰を滑り込ませカチあげる。
スキルも器用さもないからふつうにジャンプしても天井へ届かない私だけど、力のあるおぼろちゃんに手伝ってもらえば地上へ出られる!
でも高さがまだまだ足りない。
もっと高く、せめて建物の屋上に行けるくらいに勢いが欲しいから……!
「シオン!!」
「OK、限界まで吹っ飛ばしてやる!」
後に続け【暴走機関車】!
カベを駆けあがってきたシオンによる、下から突き上げる体当たりでさらに真上への飛距離を強引に伸ばす!
「あー、やっぱり――!」
ブースターのようについた加速が言葉を置き去りにして、私は地上の空へ打ちあげられた。
……長いこと潜ってたから日が傾いてる。もう何時間潜りっぱなしだったか覚えてないや。
まぶしさに目がくらんじゃわないように体を反転させる。
真下にはもうおぼろちゃんにシオンがいて、私へ大きく手を振った後、路地の方へ姿をくらました。
ならもう、後顧の憂な「んお?」
その時だ。
もはや懐かしいファンファーレとドラムロールの音が耳に入り、スタイルスキルを取得したことを知らせるスケスケウインドウが姿を現した。
でもこれリザルト扱いのハズよね……なんで今出てきたの?
……いやいや、今は謎解きの時間じゃない! 内容だけちらっと見て……!
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【七大罪・傲慢】
スタイルスキル。
自分がスキルの対象よりも上段にいるとき、スキルの威力が50%上昇する。
自分がスキルの対象よりも下段にいるとき、もしくは這っているときスキルの威力が――
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「はは……おあつらえ向きじゃん!!」
そりゃ笑いたくもなるわ。ズバリそのままだもの。
傲慢だってよ。自分の身に余ることだってよ!
今日やったこと全般を指して運営のシステム様がそう言うのならちょうどいい、私も言いたいことをきっかり言わせてもらう!
私は人から物を奪うことが大っ嫌いだ!
リアルじゃあそう起きることでもないんだけど、残念ながらゲーム世界ではよくある光景だそうだ!
でもまあ人の欲望なんか底なしだだもの、誰だってナンバーワンになりたいし、オンリーワンにもなりたい!
そんな時に見たこともないクエストが現れ、ろくに知られないまま攻略されようとしているってなったら確かに思うだろう。奪い取ってでも先にクリアしてやるって。
……だけどね! あえて、あえて言わせてもらうわよ!
「どいつもこいつも、子供によってたかって何してんだーーーーっ!!」
みさらせ運営!!
私は魔法と同時に、構えた杖を振り下ろす!
上から下へ、もはや極太のレーザー砲とも思えるような【ブリッツ】が街道を、そして【毛細地下水道】を粉砕した!!
……その日。
ダンジョン【毛細地下水道】は街道を含め、累計で6割以上が粉砕。
安全確認が取れるまでの間立ち入り封鎖措置が取られることとなったという――。
運営はイベント以外での街中における戦闘行為を禁止してますが、その内容は
「PvPの発生および攻撃に対してダメージを受けることがなくなる」というもので、
スキルを使った物の破壊はおおむね想定内だったりします。
マルジンさんが【スリップランナー】ではねられたわりにピンピンしてるのもこれのせいです。
リーズが今回【傲慢】を得たのもこれが原因で
PvP中にダンジョンを離れ街に出た⇒街ではPvPは起きない
という処理の末、戦闘が終わった扱いとしてリザルトに出たという流れです。




