スーサイドシンデレラ・オーバードライブ!(前編) (サンタイラスト付き)
毎度お待たせして申し訳ございません。
太ももとかがなんてことない錬金術士の錬金術にはまりすぎたわけではありません決して。
長巻使いのツインテ少女がかわいくて仕方ないわけじゃありません決して(目逸らし)。
「……てっぺいく「【鉄兵】だ!」……はあ、とりあえず譲り合いの精神とか持ちなよ! そういうことするとご新規さんマジで減るよ? ここで手打ちにして平和解決しようぜー?」
「日和ったかよ、クエストで小競り合いするのなんか日常茶飯事だろうが!」
「……ホント猛々しいな、この火事場ドロボー!」
幾度かの打ち合いから見たところ。
正直パーシバルは大した脅威ではない、というのがマリーの出した結論だった。
手持ちの武器は威力こそ一級品には違いないが、ど重さで軌道が丸見えになっていた。
ディレイやフェイントを一切しないのであればその程度いくらでも避けてしまえるし、
「どっせーい!!」
「くっ――!? この!」
いくら威力が高かろうと重かろうと、振るい初めるところに遠心力を乗せた1撃をたたきつけてやれば、パリィついでに跳ね飛ばしてやることなどたやすいものだ。
叩く強さを調整すれば次にかち合う位置だって自在に変えられる。
(7メートル左、次は6メートル右……あ、また首が動いた。今度は5メートル)
パーシバルの後ろをばれないようにちらちらと見ながら、つかず離れずの距離を絶えず保つことで、時折飛んでくる魔法弾をもかわしていた。
そんな風に彼を抑えているのには訳がある。
敵一味の構成は前衛にこの男、中衛に鎧騎士、そして後衛に魔法使い2人。
他3人に比べ鎧騎士が少しだけ厄介で、おそらくは魔法使いたちの護衛役と遊撃を兼任している。
要は状況を精査しつつ、マリーの後ろを攻撃するスキをうかがってるのだ。
「ほいっと!」
「うおっ!?」
だがあいにくと、その程度の知恵でだし抜かれるほどマリーは甘くない。
騎士が通そうとした射線上に自らとパーシバルを置いてしまえば、魔法弾で同士討ちになるのをさけるためルート変更をせざるおえまい。
そうして騎士が空いているルートを発見し進もうとするのであれば、パーシバルをそこに跳ね飛ばし自分も一緒にかぶさる。
付かず離れず。そんなダンス指導のようなやりとりをえんえん見せつけてやればこう思うだろう。
「……いつまで付き合ってんだお前は!」
とっとと2人掛かりで潰すべきだと。
そうなれば必然、騎士も合流し自分に襲い掛かる……が、今の今まで役割に徹するような奴である以上こっちの想定以上の動きはできまい。
対パーシバルの効率化で余るリソースを割いてやれば十分に撃破可能。
先んじたパーシバルを思い切り跳ね飛ばして突き放し、殺到する魔法を飛び退ってかわし、遠心力をつけるため、長めに持っていた槍を持ち直して……。
「【烈震――ん?」
迫りくる騎士に向けてスキルを発動せんとした瞬間、両脇から小さな影が2つばかり飛び出すのが見えた。
「シオン、合わせて! 【一刀・初夢】!」
「わかってらあ、吹っ飛びやがれ!」
「がっはあ!?」
図らずも少女の剣が騎士を受け止め、そのまま少年が蹴り飛ばす姿を見送ることになったマリーは、数瞬だけぽかんとしてから「ああ、なるほどね」と小さく笑った。
どうせ自分にとって力不足な相手であるなら。
頭のてっぺんにほんのりと白い灰をのせた、かわいいかわいいかわいい後輩たちがこの後どうするのか見届けてやるのも悪くない。
もっともその数十秒後、この年最大の驚愕とともに、定期的に思い出してしまうほどに笑うことになるのだが。
*
「よーし、やるぞお!」
騎士を押し返した2人の姿を見て気合を入れていると、後ろから余計なちゃちゃが入ってきた。
「本当にやるのか? 絶対にそうなるって確証もないんだろう」
「やると言ったらやるの! それともなに、あの連中に仲間意識でも芽生えた? 今からでもチクる?」
「まさか。 どっちみち数の有利1つでマリーに手を出すようなら遅かれ早かれだ」
クマ鬼は諦めたように続けて肩をすくめる。
もともと捨て気味なのもあるんだろうけど、それだけトッププレイヤーとほかのプレイヤーの力差は開いてるんだ。現に私も何もできないまま返り討ちに遭ったし。
遠巻きから見ていると、改めてマリーは相手の動きを見ることに長けているんだと思い知らされる。
敵の位置、足運び、視界、武器の形状。動作すべてにかかわることを分析して、その次を抑えられる1手を講じるんだ。
「だからな……」
クマ鬼が言いたいことは「何もしなくてもマリーが私たちを助けるだろうに」ってところでしょう。
そりゃあんなに私たちに入れ込むんだから、最低でもこの場において味方はしてくれるでしょうしね。
でも却下だ! 理由は単純、シャクだから!
「なに言ったって私の決意は変わらないわよ、これ以上マリー任せにはしないし私たちは私たちなりの方法で脱出する! 【スーサイド】オン!」
しまいにゃため息をついたクマ鬼をよそに、私は杖を真上に向ける。
いいもんいいもん、文句ばっかいうならそこで黙って見てなさい――!
「ブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツブリッツーー!」
――私が天井をブチ壊すところを!
頭には3等分した【シンデレラパウダー】、表示される残り時間は90秒!
1秒1瞬、時間も酸素もHPも! 何もかも余すことなく全部絞り出してやる!




