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インスタ!〜スタミナ極振り没落令嬢、今日もVR世界にダイブ・イン!〜  作者: 地雷源
第三章 ビュンビュン! 神風盗賊ブレーメン!?
48/87

走る事に憧れる少年

 

 ~~~~~~~調合成功!~~~~~~~


 静寂のブローチ 獲得!


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「いよっし」


 クリスタルと彫金細工を調合してブローチの贋作、完成!

 これでごまかせなかったらどうしようとかはその時決める! OK!

 私は前しか向かないもの! いろいろ考えだすと悪い予感が止まんなくなるしね!


「わからないって何ですか!」


 そんでおぼろちゃんの方を見やると、やはりとばかりに彼女の声が聞こえてきた


「あなたがスキルを取った時間と、滑りだして止まらなくなった場所ですよ!」


「だから時計も地図もねーのにわかんねーって! 夜に平原を走りまわってたらスキルとっちまって止まんなくなった、くらいしか言えることねーぞ!」


「でももう少し書かないと! ほら、ここに不具合が起きたエリアとリアルの日時を書けってあるじゃないですか!」


「そういうのって察してくれるもんじゃないのかよ! 早くしねーと!」


「察してくれなかったらどうするんですか、イタズラだと思われたら終わりなんですよ!」


 うーん。

 ウインドウに映しだされているゲームの問い合わせフォーム画面を前にして言い争ってる2人を見てると、やっぱりそっちからさっさと片付けとくべきだったかなー……って気分になってくる。

「私がやります!」と名乗り出たからシオンのスキルのことを運営に問い合わせるのをおぼろちゃんに任せてしまったけど、このぶんだとまだまだ時間がかかりそうだ。


「……このさいだし、依頼で頼まれていたレンガとか、ほかの作れそうなアイテムも作っちゃおうかな」


 シオンが壁を壊しまわったおかげで石材は腐るほどあるし、水路から取れたアイテムで試したいものもある。


「ん?」


 さーて、まず何から調合しようか……と思った矢先、なんでかこっちの方を向いていたシオンと目が合った。


「どうかしたのシオン?」


「や、別になんでもねーよ」


 声をかけられたシオンはふいと目線をそらし、また問い合わせフォームのウインドウの方に向き直る。

 けどもなんだか上の空って感じ。気になるな。


「なによ、もしかして見とれてた?」


「みとっ──!?」


 とまあからかってみたんだけど……なんでか想定外の方からリアクションが起きた。

 一気にすわった目になったおぼろちゃんはタイピングの手を止めて、シオンをにらみつける。


「シオン……この状況で何を思ってリーズさんを?」


「べつにコイツに見とれてなんていねーよ!」


 冗談のつもりだったけどはっきり言われると傷つくな……と思いつつも、まだ続きそうなシオンの言葉に耳を傾ける。


「ただよ、納得いかねーけどおれは今悪者なんだろ? このままじゃお前らまで共犯者扱いだぜ? 今日初めて会った人間になんでそこまでするんだって気になっちまってよ……」


 シオンの言い分もわからなくはない。どういいつくろっても私たちは部外者だしね。

 もともとおぼろちゃんの為にってハナシだったのに、話を二転も三転も転がして何やってるんだろうね。何のかんのといいながら付き合ってくれてる彼女には本当申し訳ない。

 でもまあ乗りかかった船ってあるじゃん? だから真面目に答えてあげる。


「じゃああんた仮に、運営が不具合見つけるまで走るな! ってなったとして走らずにいられる自信ある?」


 間髪入れずに返した私のセリフにシオンは少し考えたあと「……無理」とだけつぶやいた。


「シオン! この期に及んで……」


「……いいてーことは分かるよおぼろ、さんざ街をブッ壊してまだやんのかって感じだもんな。 でもわりーけど無理だ、それだけは本当に無理なんだ」


 そりゃそうだ。こいつはこのゲームに走りに来たんだ。

 やりたいことをするななんて言われて、我慢できるわけない。


「おれはここに走りに来たんだよ……自分の足を動かして風を感じて、冒険してーんだ」


「なんでそこまで走ることにこだわるんですか……なんてことないことなのに」


「……走れねーからだよ」


 おぼろちゃんの質問にシオンは答える。

 ところどころ詰まってたし小難しいハナシだから、自分でも把握できてないのか言葉足らずなトコもあったけど、まとめるとこうだ。


 リアルのこいつは足を動かせなかった。

 うんと小さいころにかかった病気の後遺症で下半身にある神経が壊れてしまったらしく、脳からの伝達がそこまで届かなくなってしまったのだという。

 そんな有様じゃまずまともな生活はできなさそうだけど、科学がほぼほぼ万能に近い今となれば治せなくはない。

 現にこいつはそれでどうにかこうにか持ち直し、今はムリすれば杖やらでちょっと動けるまでには至った。

 ……そうなるまでに10年近くかかったわけだけども。


「何がしたかったでもない、外走り回っていろんな冒険したかったんだ。 マジでそれだけなんだ……」


 何に対してもこの通路に声が響くくらいの騒がしさでずっと返していたシオンは、今はびっくりするほど静かに声を出す。

 スリップランナーを気に食わなそうにするわけだ。

 地面をけった瞬間滑りだすんじゃ、こいつの走りたいって感情は満たせない。

 それどころか暴走機関車とセットでずっと付き合わされるハメになって、そりゃ不満にもなろうってものだ。


「だからやっぱ納得できねーよ、やっとスキにできるって走りまわってただけなのにこんな変なスキルしょい込んじまったせいで、街ブッ壊してお尋ね者って、どう考えてもおかしいだろ!」


「シオン……」


 そうだ。

 誰も彼も間違ったことはしていないし、するつもりなんてなかった。

 ただやりすぎただけ。その結果かたや泣いちゃうほどに自分を責めたし、かたや追い掛け回されてこんなとこまで逃げてきた。

 そりゃ責任取らなきゃいけないってのは分かるんだけどさ。


 正しいってだけで人は救われないし救えない。

 だってそうじゃなかったら──


「シオン、靴貸しなさい!」


「くつ?」


 ──このゲームの世界にリーズを名乗る荒垣莉世はいないもの。


「これから作るのよあんた専用の靴、滑らないで済む靴を! そのための材料が足りないからあんたのブーツを私に預けて!」


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