城門前にて
この無限民話の世界には文字通り無限のクエストが用意されているっていうのは、雑誌の取材記事にも書いてあった。名前負けしないことはいいことである。
ひとくちにクエストといってもいくつか種類がある。
まずはそれぞれのギルドで受けられる通常クエスト。
それと街のNPCキャラクターと関わり、仲良くなっていくためのキャラクタークエスト。
あとは七賢人のような重要キャラクター……まあつまり運営から対象のプレイヤーに期間限定で発せられるイベントクエスト。
けど、私たちが見たのは多分そのどれとも違う。
出会ったNPCたちはみんな初対面だし、もちろんみんな重要なキャラでもない。
内容もみんなおんなじで、家の壁や階段が壊れ、ギルドへレンガの補充を依頼しようとしたけど、大量に案件が来ていることを理由に断られてしまい、途方に暮れているのだという。
ギルドがパンクして、外にあぶれた人が出るほどレンガの補充依頼が来ているんだ。リヒターゼン中で今、何か異常事態が起きているんだろうというのは想像に難くない。
事前に知らされているどのクエストとも違う、謎のクエスト。
その全貌を知るために、まずは目の前の依頼をこなさなくちゃ!
……と、思ってたんだけど。
「うっそーーーー!!」
「いやあすまねえっす……」
おぼろちゃんを連れて採取をしようと西側の城門、マルジンさんと一緒に通ったところに来てみれば何たることか。門番さんが通行止めをしていたのである。
「まさか不法侵入を止めらんねえとは……」
いわく、以前マルジンさんにしたのと同じように検問をしていた最中、何かがとんでもないスピードで突っ込んで、中のものをめちゃめちゃにしていってしまったらしい!
「それで、犯人はわからないの?」
「恥ずかしいことに、そのまま街に消えちまいましてね……」
馬車で抜けたあの大きな木製の門や石柱はバッキバキに壊されてしまっており、今や見る影もない。きっと中もまた、これと同じかそれ以上に壊されてしまっているんだろう。
「とにかく通るのは危険だから、外に出るならほかの道にしてくださいや……」
「は、はあ……ご苦労様です……」
そう言い残して、ちょっと疲れた感じにしゃべる門番さんはほかの人への対応に行ってしまった。
「うーん、困った……」
これでは外に出るのも難しい。
きっとギルドがパンクしてるのも、ここの修繕のために石やら木材やらがたくさん必要になっちゃったからでしょう。
レンガを作るには【フェスト砂岩】っていう素材が必要で、ここから出たところにある川で取れるらしいんだけど、困ったなあ……
「リーズさん」
ここで後ろからひしっとくっついてるおぼろちゃんが口を開いた。
後ろを見てみればちょいちょいと指をガレキの方に向けていて。
「あの石材をいただいてレンガに作り直せたりって、できたりはしませんか?」
「ナイス! さっすがおぼろちゃん!」
「い、いえとんでも!」
いやいや謙遜しちゃだめよマイ天使!
目の付け所がホント鋭い!
いまからさっきの門番さんに頼んじゃいましょ!
「おろろーーん……」
「あーあーおっちゃん……泣かねえでくださいよ……」
門番さんは結構すぐ近くにいた。
「だって、だって……!」
相手をしているのは地面に膝をついて泣き出してしまった商人さん。本当ご苦労様です。
早速とばかりに声をかけようとしたんだけど、
「ん?」
それよりも先に商人さんの方に目が行った。
つるっつるのてっぺんに緑色の後ろ髪。
金色の紋章があちこちについた、若草色のマント。そして……
「このままでは商談の日取りに間に合わんのですじゃあーー!! 今回の取引は美食家である貴族街のお歴々も注視しておられるのに、この体たらくでは何と言われるかー!!」
「わーっ! わー! ンなきったない顔で引っ付かないでくださいよおっちゃん! 申し訳ないけど、別ルート探してください!」
がばりと起き上がって門番さんにすがりつくも引っぺがされる、そのちょび髭な顔は……
「マルジンさん!?」
「おや、聞きなれた声……おお! リーズ殿!? リーズ殿ではありませぬか!?」
なんと、あのマルジンさんだったのです。
「リーズさん、この方は……?」
私の後ろにさっと隠れたおぼろちゃんが警戒しながら私に聞いてきた。
「商人のマルジンさんだよ! 私をここまで運んでくれた人!」
「いやはや、3日ぶりですなあ! 龍をさっそく倒したとのウワサ、聞いておりますぞ! そちらのお嬢さんは……ひえっ――」
マルジンさんのおののく声を聞いた途端、おぼろちゃんの抱き着く力がぐっと強くなる!
というか離して力強い痛い痛い痛い痛い!
「ま……待った! この子は今私のボディーガードをしてくれてるから安心して! ……ね?」
そうじゃないと私が腰を砕かれて死ぬので!
早くうなずいておぼろちゃんを安心させて私を助けて!
「そ、そうですか……それならば……」
マルジンさんが落ち着いたことで、おぼろちゃんの締め上げも緩んだ!
何とか話の続きができるよう二人には気を取り直していただいて、とりあえずまずはそこでうげっとした顔で見ている門番さんに、壊れた石材をもらわないと……!
「少々、お時間は取れますかな……?」
「へ?」
やだ私。
またなんか変なフラグふんじゃった?




