始動? おぼろちゃん名誉回復作戦!
さて。
さっきからうつむいたまま黙ってちびちびと付いてくるおぼろちゃんと一緒に歩き、着きました生産ギルドー!
昨日も一昨日も火山にかかりきりだったから、実はここにくるのは初めてなのよね……。
でも、依頼を受けられないおぼろちゃんの為に私ができることとしたら、ここでの生産依頼を一緒にやってあげることくらいしかない。
「というわけで早速、とつげー」
「かーっやってらんねえ!」
突然の怒号に出鼻をくじかれ、私は漫画のようにかくっとよろめいた。
というのも、ギルドの入り口がなんでか殺気立っていて、ものすごくせわしなくNPCが出入りしてる。
今出てきたスキンヘッドのおじさんは顔中真っ赤でタコみたいになってるし、
「困ったわねえ……水晶さん、あの人のせいで調子悪いのかしら~」
なんかふわふわした雰囲気の占い師さんは不思議なセリフをこぼすし、
「くそっ、大事な設計図を出さなきゃいけないのに……!」
モノクルで切れ長な目をした学者さんは爪を噛みながら悪態をついてる。
他にも憲兵さんと揉めていたり、スキンヘッドさんのように怒っていたり、2人で仲良く毒づいていたりと、ギルド前の広場は混沌としていた。
「なになになになにどういうこと?」
これはおぼろちゃんじゃなくてもちょっと近づきがたい。
だいたい生産ギルドってこんなごった返すものなの? 憎々しそうに悪態ついたりするところでもなくない? それもほぼ全員。どっちかというと酒場とか冒険者ギルドでやってほしい奴では? などなど疑問が尽きない。
そんな風にNPCたちを観察していると、なんだか背中の方でモゾっ! と何かがうごめいた!
「ひゃ!?」
やべ、変な声出た。
後ろを見ると、もぞっとおぼろちゃんが私に隠れようとしてた。
「す、すみません……」
どうやらこのありさまにすっかり縮こまった様子で、周りの様子をうかがいながら私の服のすそをつかんでいる。
「まあ、確かにちょっと近寄りづらいよねえ……」
「どうしましょう……いったん引き返していなくなってからにしますか?」
おっとそれは違うぜ? おぼろちゃん。
怖い目遭いそう? 痛い目見そう? 上等!
この光景、私はむしろチャンスと見たね。
「いやいや、困った人がこんなにいるんなら願ったりじゃん!」
千里だって一歩から始まるんだ。
この決意と行動で何か起きるのなら、私はまっすぐ以外を見ずに歩く。ダメだったときはダメだった時だ。諦めなきゃ道は続いてるでしょ!
大体これはリアルじゃなくてゲーム。プラスがマイナスに下がったように、マイナスをプラスの方向に変えることもまた可能なはず。
それに期待はしてないけど、お金だってもらえるかもしれない! 期待してないけど!
「でも、なんだか怖いです……」
「らしくないぞー、いつもだったら私なんかすーぐ説き伏せるのに」
「う、それとこれとは違いますよ……いつもはリーズさんだらしないじゃないですか……」
お。なんかちょっと心をえぐられたけど、いつもの彼女に近づいてきた。
まだぐいぐい引っ張っていくには至らず、私の上着をつまんで引っ付くように歩いてるけど、進んでくれるだけまだいいか!
「すみませーん!」
というわけでまずは占い師さんに、とつげーき!
*
「うーむ………」
あの場所にいたNPCで依頼をくれたのは偶然にも目についたあの3人だ。
「どうでしょう、用意できそうですか?」
「そっちは大丈夫なんだけど、うーん……」
用意するの自体は難しくない。だって3人ともレンガだから。
じゃあなんでこんな胡乱げに声を上げているのかというと、この3つの依頼がどれもこれも似たり寄ったりな内容で、報酬も???で統一されてしまっていることにある。
依頼主である3人のNPCはそれぞれ占い師、鍛冶屋、学者で、全然職も違う。
わざわざレンガを欲しがる理由も謎だし、報酬がお金でもアイテムでも無さそう。
「こんな偶然、あると思う?」
「目の前にいた明らかに職の違う3人が3人とも同じ内容、同じタイミング……これって」
「なにかのフラグ、なのかな……」
私が火山を攻略しているうちになんかの条件が満たされてて、特殊なクエストが起きている?
その可能性はなくはない。
なんたってここは無限の民話を名乗る世界。
街で伝えられるお話なら何でも、それこそ人々の噂話からだって1つの伝説が出来上がる世界。
そんな世界に5万だか6万だかのプレイヤーが集まって自由に動き回るのだから、誰かが起こしたイベントがそのまま放置されている、なんてことも起こりうるんじゃないか?
「おぼろちゃん、お仕事! レンガの材料を今から取りに行くから、護衛お願い!」
「わかりました……力不足かもしれませんが……」
「そんなに硬くならないでいーよ!」
「ひゃ!?」
だったら、精いっぱい利用させてもらうとしようか!
もしかしたら、おぼろちゃんの名誉回復のついでになんかいいこと起きるかも!
お金だったらいーなーと思いつつ、おぼろちゃんの手を取った私は城壁へと向かっていくのでした。




