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「では、これで解決ということでよろしいんでしょうかね?」


 なんとかリリーナさんをなだめ、落ち着いたところで急にロイさんが話し出した。


 うん? 解決ってどういうこと?


「いくつか対策案を考えていたのですが、妹さんが代わりに結婚するというのもそのひとつです。これでマリーエ殿の結婚は阻止できたということで……」


「いやいやいや、ちょっと待って。それはどうなの?」


 目的は達成かもしれないけど、これで解決はさすがに駄目じゃない?


「でも妹さんが結婚を望んでいるのならそれで良いのでは?」


 えー。


 みんなが思わずリリーナさんに注目した。


「……えっえっ?」


 突然の会話の内容についていけず、さらに一斉に視線を向けられて戸惑っている様子のリリーナさん。


 まったくもう、しょうがないなぁ。


「別に彼女はライナスが好きな訳でも結婚を望んでもいないでしょ。確かに私はマリーエさんの結婚を阻止したいとは言ったけど、妹さんやご家族を犠牲にしたり家を乗っ取られるのも駄目だよ。マリーエさんの心の安寧が保てない案は没で」


 私がそう言ったらロイさんはちょっと不服そうだった。


「えー、条件が増えてますよ。まったく我がままなんですから……」


 なんかぶつぶつ言ってるけど、絶対分かっててやってるでしょ。それが分からないロイさんじゃないし困ったものだ。


「美味しいご飯とおやつ、要らないんですか?」


「はい、もちろん今のはただの一例ですよ、ええ、そうですとも」


 ちょっとご褒美をちらつかせたら急に真面目な顔になった。まったくふざけた人だよねぇ。


 それから話し出したロイさんはいくつかの案を出してくれたんだけど……なんていうか、うん、全部がかなり過激だった。


「却下で」


「えー」


 なんで採用されると思うかな。みんなドン引きしてるじゃない。無関係な人を巻き込んだり禍根が残るようなやり方は駄目でしょう。問題あり過ぎ。


「あの、これは一体……。お姉様、この方達は……」


 ああほら、リリーナさんすっごく怯えてるし。ロイさんの話を聞いて絶対「この人達やばい」って思われてるよね。一緒にしないで欲しい。


 とにかくもっと穏便に、でも今後またデイルズ家が巻き込まれるようなことがないように私達は話し合った。


 ロイさんは過激でない案も持っていたのでそれをベースに計画を詰めていったんだけど、初めからこっちを出せばいいのに。絶対みんなの反応を楽しんでいたとしか思えないよね。まあ過激な案の方が手っ取り早いと言えばそうなんだけど。


「幸い契約内容には今回限りで次代以降の縛りはありません。なので姉妹二人と結婚できなければそれで終わり、ボーグ家との繋がりは借金の返済のみとなります」


「デイルズ家に養子をとらせてライナスが結婚するとかはないの?」


「それはないです。あくまで直系の娘との結婚が家を継ぐ条件になります。逆に娘二人がどちらも婿を取らなければデイルズ家は絶えます」


 なんか貴族のルールが色々あるらしいけど、やっぱり聞かないと分からないことばかりだ。こういう事情に詳しくないと作戦もたてられないってことを再認識する。


「ではライナスには自らマリーエ殿との婚約を放棄をしてもらいましょう。言い逃れ出来ないようになるべく証人も多く用意して。契約を自ら放棄するのですからデイルズ家に非はありません。なんて平和的な解決、これでよろしいんでしょう?」


「うん、そうだね。それが一番穏便に済みそう。マリーエさんにとっては不名誉なことになってしまうかもだけど……」


「私の事は心配なさらないで下さい。それぐらいのことは何ともありません」


 貴族女性にとっては醜聞になりかねないことだけどマリーエさんはかまわないと言う。


「じゃあその方向で。でもライナスが自分から放棄なんて難しいんじゃない?」


「それは私が何とかしますよ。ご存じでしょう、私がこういうの得意だって」


 ニコニコ笑顔のロイさん。うん、頑張ってライナスを誘導して下さい。


「ああ、あとリリーナ嬢に婚約者が必要ですね」


「えっ私っ?」


 突然自分の話題になって驚くリリーナさん。


 お姉さんから「ここにいる人達は私達の家の事情を知ってなんとかしようと協力してくれている」と説明されて大人しく話を聞いていたんだけど、その話し合いの内容に終始驚いていた。


 物騒な話が続いたかと思えば婚約を放棄させるとか訳の分からない話をするし、今度は自分の婚約者なんて混乱もするよねぇ。


「どなたかお付き合いをしている方や将来を誓った方などはいらっしゃいますか?」


 ロイさんがリリーナさんに質問する。その辺も調べてありそうなのにとロイさんを見たら「直前に運命の出会いがあったかもしれませんし念の為」だそうだ。いいなぁ、運命の出会い。私もしてみたい。


「……い、いえ、いません」


 残念、運命の出会いはなかったらしい。


「そうですか、ではどなたかにお願いしないといけませんね。仮の婚約者ですがボーグ家が文句を言えないような高い家格で、いざという時はデイルズ家を継げるような人物が望ましいですね。あとはこちらの事情を理解して協力して頂けるような……」


「そんな都合の良い人いる?」


「婚約者のいない高位貴族で探すしかないですが、時間もない事ですし困りましたねぇ」


 ロイさんはあまり困った様子はないんだけど、何かあてでもあるんだろうか。


「ああ、そういえばこんなところに適任者が」


 え、適任者?




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