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 ロイさんの興奮は結局家に戻るまで続いた。


 ただ思わぬ実力も発揮して、本人は自分の身は守れるとしか言っていなかったけど、ちゃんと戦闘にも参加して魔物を倒したんだよね。


 どこに隠し持っていたのかショートソード二本持ちであっという間に周囲の魔物を切り刻んで涼しい顔をしていたんだけど、あれはかなりの実力者なのだろう。エミール君もマリーエさんも感心していたし、アルクは……あんまり興味はないみたい。


 どちらかというとロイさんには文官のイメージを持っていた。外見とか物腰からはあんまり強そうには見えないというか。なのでこれには驚いたんだけど、考えてみれば敵地に潜入するとか強くないと無理だよね。さすが殿下付き、実力は素晴らしいようだと改めて思う。


 でですね、この日はなんと、ついに宝箱を発見しました!


 そしてなんとなんと、剣を手に入れることが出来たのです、凄い!!


 初めて目にした宝箱はなんというか……あの例の黒い箱にどことなく似ていた。色は黒じゃなくて赤っぽい色だったけれど、最初に見た時はちょっとあの時を思い出して嫌な気持ちになった。しかもロイさんが参加してる時に見つけるとか、なんか因縁めいたものも感じるよね。


 エミール君に剣を見てもらったら、使用者の意思で重さが変えられ、更に込める神力によって大きさまで変えられるということが判明した。


 さっそくみんなで順番に持ってみたら本当に不思議。見た目は結構重量がありそうな長剣なのに「箸のように軽い」と思いながら持ったらめちゃくちゃ軽かった。おもしろー。


 だけどちょっと調子に乗って振り回したら「危ないからやめなさい」ってアルクに取り上げられた。ロイさんだって同じことしてるのに。むー。


 せっかくの新しい武器なので実際どのくらい実用性があるのかも試してみることになり、まずマリーエさんに使ってもらうことになった。


「こんな貴重な品を私などが使えません」


 そう言って最初は遠慮していたけど、剣士としての興味が勝ったのか最終的にはものすごく嬉しそうに魔物に向かって剣を振るっていた。


 剣は重すぎても軽すぎても使いにくいそうで、それぞれ個人でしっくりくる重さというのがあるらしい。そうするとこの剣は誰にでも最適な重さに変えられる点で汎用性が高い。


 あとは大きさが変えられるというのも面白く、マリーエさんは巨大な魔物に対して高く飛び上がり、振り下ろした瞬間に神力を込めて剣を巨大化、さらに重さも加えて魔物を一気に両断なんていう方法に持っていった。しっかり使いこなしているのはさすがです。


 だけど検証の結果、大きさが変えられるのは瞬間的にだけなのと小さくすることは出来ないことが分かった。


「次は私が……」


 そう言ってエミール君も剣を持ち試し切り。


 マリーエさんは今までにない剣の使い方や切れ味に興奮気味だし、エミール君も目をキラキラさせている。二人とも子供みたいにはしゃいでいて見てて微笑ましいんだけど、対象が武器なのがなんともねぇ……。


「あれは国宝級ですね」


 私が二人の様子に飽きれていたら、ぼそっとロイさんが呟いた。


「え、国宝って……。もしかして国に提出しなきゃいけないとかあるんですか?」


「いえ、そのような義務はないですよ。ダンジョンでの拾得物はすべて拾得者に権利があります」


 なんだ良かった。取り上げられちゃうのかと思って心配しちゃった。


「ただ、あまりに貴重なアイテムは拾得者自らが国に献上することもあります」


「どうして? 何かメリットがあるの?」


「そうですね、その時々で違いますが、地位、名誉、様々な便宜といった所ですかねぇ」


 なるほど。


「あとはオークションにかけることもありますよ。このような武器や珍しいアイテムになるとかなりな高額が期待できます」


 過去に出品されたアイテムはそれはそれは高額な値段で取引されているらしい。まさに一攫千金、ダンジョンドリームだ。


 ほお。私はちらっと見たら、マリーエさんがぎゅって剣を抱きしめた。


「大丈夫、大丈夫、売るとか考えてないから」


 そう言ったらあからさまにほっとしていた。よっぽど気に入ったのかな。


 みんなが順番に剣を試し、話し合いの結果、通常形態が今使っている剣に一番近いマリーエさんが持つことに決まった。マリーエさんはとっても嬉しそうだ。


 いいなぁ。私も何か武器とか欲しい。みんなが戦ってる時に何もできないってすごくもどかしいんだよね。戦えなくても援護するとか何かしら出来ればいいのにってすごく思う。みんな強すぎてピンチとか全くないのが現状ではあるんだけど、見てるだけなのはどうにかしたいって思う。


 そうそう剣の入っていた宝箱なんだけど、剣を取り出した後、しばらくしたら箱はすうっと溶けるように消えてしまった。本当に不思議仕様だ。あと魔物とは違い、一度取ってしまうともう宝箱の復活はないらしい。だとすると宝箱のアイテムって限られるしすごく貴重だよね。


 よし、この調子でどんどん見つけていこー!



 初めての宝箱でアイテムを手に入れることが出来た私達はその後も快調に進んで行った。だけどこの日はそれ以上宝箱を見つけることは出来ずに終了時間になった。


 それにしても今日は魔物との遭遇率がいつもより高かった気がする。ポーションもいつもより多くドロップしたし在庫がかなり増えたと思う。みんな怪我もしないし使わないんから増える一方だなんだよねぇ。


 いっそ売却とか考えてもいいかなと思いながら、そういえばとアイテムの分配のことをロイさんにも一応確認してみた。


「分配などとんでもない、同行させて頂けただけで十分です」


 やはりみんなと同じような答えが返ってきたけど、やけにしおらしい。


「……本音は?」


「ポーション下さいっ」


 どうしよっかな~。




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