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 最近連続でダンジョン探索を続けていたので、今日は一日お休みということにした。


 エミール君はこちらで生活を始めてしばらく経つけど、探索がない時はガイルを拠点に色々とお仕事をしているらしい。


「近隣に視察に行ってきます」


 そう言っていたけど……お休みの意味、知ってる?


 クロフトさんとはこまめに連絡を取っているそうで、先日のダンジョン内での行き倒れパーティー問題については管理・運営を担っているイスカで早急に話し合いが持たれるそうだ。


 あと、冒険者の資質も問題になっているらしい。


 資質ってなんだろうって思ったら、この間のマリーエさんが助けた冒険者のことらしい。エミール君によるとあの態度は到底許しがたく、「自分たちの力量も分からないなら冒険者など辞めてしまえ」と結構なお怒りようだった。


 パーティーの構成や人相、持っていた武器等で既にどこの誰かは特定してあるそうで、戻ってきたらペナルティを与えるそうだ。無事に戻って来ても大変だね、あの人達。



 マリーエさんはマリウスさんや騎士団への定期報告、あと訓練に参加して午後は実家に戻るそうだ。何でも呼び出しがあったらしいんだけど、何かあったのかな。


 マリーエさんは普段は騎士団の宿舎に寝泊まりしていて、実家にはたまに帰るくらいらしい。


「私はこれでも多い方ですよ。騎士の中にはほぼ帰らず生活している者もおります」


 騎士たる者、日々鍛錬なんだそうです。うわぁ。



 私はというと、午前中に仕事を終えて午後は市場に行ったり町をお散歩したり。ダンジョン探索中もお昼は家で食べる以外に外食もしていたけど、こうしてのんびり歩くのは久々かもしれない。うん、太陽が眩しい。


 そうそう、この間デニスさんとコルネさんが完成したマヨネーズを持って来てくれた。やっぱり原因は油だったようなんだけど、完成品以外にもまだ色々試しているそうだ。独特の風味のあるものとかもあってすごく美味しかったよ。


 二人は本当に研究熱心だよね。マヨネーズを使ったパンも試作中とのことで、また人気商品ができそうだ。


 うーん、ガイルはやっぱり落ち着くなぁ。家があるからここを拠点にしているけど、自然とリラックス出来るし帰ってきたなぁって感じがする。


 雰囲気とかもすごく好きだし、町の人達もみんな親切。気候も温暖で本当に良いところだ。おじいちゃんがここに家を持っていた理由がなんとなく分かる気がする。老後はこっちで過ごそうかなぁ。



 そんな良い気分で帰って来て、家でのんびりお茶をしていたんだけどね。急に例のアレがチカチカ光り始めた。


 ええ、またぁ?


「出なくちゃ駄目かなぁ」


 思わず声に出しちゃったけど、アルクは早く出ろって顔をするし、鏡はずっと光ってる。なので私は仕方なく鏡に手を置いた。


 現れたのはギルベルト殿下だった。光り方が前回と違ったし、クロフトさんではなさそうだと思ったけど、名前とか表示されないのかな。


「なんだ、不機嫌そうな顔をしているな」


 開口一番そう言われてしまったけど、苦手な物は苦手なんだよ。


「いえいえ、そんなことないですよ」


 ただこの鏡って着信拒否とか出来ないのかなーって思っただけで。


「ふむ、まあいい。ダンジョン探索をしていると聞いて少し心配していた。どうだ、変わりはないか?」


 おや、心配されているみたいだ。


「はい、順調です。最近探索が続いたので今日はお休みしていますけど」


「そうか、適度に休みは必要だな。いやそれよりも能力を使っているのだろう? ダンジョン内でも問題はないのか?」


「今の所はないですね」


 扉が使えないって状況を考えたことがなかったけど、確かにその可能性はあるかもしれない。でもそうなったらアウトだよね。二十階層まではおじいちゃんは使えたらしいから、それ以上進むなら少し慎重になった方がいいかもしれない。


「そうか。くれぐれも慎重に、無理はするなよ」


「はい、そうします」


「うん、それでだな、あー……」


 何か言いづらいことなのか、急にもごもごし始めた。何だろう、この嫌な予感は。


「実はな、その、先日食べた菓子の事なんだが……あまりにも美味しかったのでつい周りに自慢してしまってなぁ。父上や兄達がどうしても食べたいと、あとお前にも会いたい言っていてだな……」


「無理です」


「いやいや、そう言わずにだな」


「絶対無理です、嫌です、行きませんから」


 殿下のお父さんって王様でしょう?


「まあそう言うとは思っていたが即答だな。普通はもう少し考えるとかしないか?」


 普通なんて知らないし知りたくない。


 私は通信を切ろうとしたけど、あまりに殿下が騒ぐので一応とどまった。まだ何かあるんだろうか。


「こほん、まあその、先ほどの件は考えておいてくれ。それで本題なんだが……」


 さっきのが本題じゃないのかいっ。ちょっとあきれたけど話を聞いたら驚いた。


「実はな、最近になって迷い人が発見されたと報告があった」


 迷い人、つまり別世界からの来訪者だ。


「迷い人との言葉のやり取りには不安がある。帰すことも含めてリカの力を借りたい」


 えー、言語は扉特典だし、その迷い人にも有効なんだろうか。


 しかも帰すって……私に出来るの?




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