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 三階層目の途中でお昼に戻ったけど、午後も非常に順調。十階層までは詳細な地図があるし、それに従って最短コースを進んでいる。


 だけどついにと言うか、三階層の終わり辺りから魔物が出始めた。


 いやもう本当に未知との遭遇。


 ブヨブヨしているのや昆虫っぽいの、あと芋虫みたいのとか、はっきり言って気持ち悪いのが多い。しかもみんな結構大きいんだよ、怖さが倍増。


 事前に色々聞いてはいたんだけど、初めて目にした時は怖くて帰りたくなった。ダンジョン行きに賛成したのも、行きたいと言ったのも私だし、今更そんなこと言えないんだけどね。ううっ。


 この辺りのまだ浅い階層には低能な魔物が群れをなしている場合が多く、侵入者を見つけるとすぐに攻撃を仕掛けてくるのだそうだ。


 あまり高い攻撃力はないので倒すのは簡単らしいけど、数が多くて苦戦する場合があるので油断してはいけない、というのがダンジョン初心者によく言われる注意事項らしい。


 で、油断も何もなく、現れる魔物を片っ端からばっさばっさと切りまくっているのが、先頭を行くマリーエさん。


 もうね、お見事としか言いようのない素晴らしい速さと剣技で、アルクもエミール君も出る幕無し。今までこういう活躍の場がなかったけど、マリーエさんは強いんだなぁと改めて認識した。


 騎士様だもんね。いつも私なんかのお世話してもらって本当にすみませんって思う。


 そんなマリーエさんの活躍で、魔物との戦闘にも特に時間を掛けずにどんどん先に進んで行った。


 ああ、魔物の血って青いんだなぁ……。



     ◇



 さて、あれから一週間が経った。


 たまに私の仕事が入って午後を休みにしたりしながらも、ダンジョン探索は順調に進行中。


 お昼や夜はガイルに戻ってご飯を食べたり休憩したり、しっかり睡眠も取ってみんな出発の時と変わらぬ健康状態で下層階に向かっている。


 そう言えば、エミール君はクロフトさんに連絡を入れたそうだ。お兄ちゃんの様子はどうだったのかというと……やはりかなり驚かれたらしい。


 まず、イスカにいるはずのエミール君がガイルから連絡を入れたことに、何かあったのではと心配されたそうだ。


 なので問題ないことを説明し、私の力と今もダンジョンを探索中であることを話したそうだけど、やはりすぐには信じてもらえなかったって。そりゃそうだよね。


 エミール君が言うには、あんなに混乱した様子のクロフトさんを初めて見たと言っていた。だけどちゃんと理解はしてくれたそうで、最終的には自分もガイルに行って合流したいとまで言われたんだとか。


 さすがに仕事で領都を空けられなかったみたいだけど、確かに途中から参加も出来るよね。お休み取れたらお待ちしています? いや、やっぱりなしで。



 探索は続けていたけど、さすがに十階層近くになると徐々に手強い魔物が出てきて、アルクやエミール君も参戦する場面も増えてきた。だけどみんな強いんだよね。手こずるようなことはほとんどなくて、相変わらず、ばっさばっさの快進撃だった。


 アルクの強さって私は良く知らなかったんだけど、「こんな戦い方は初めて見ました」とのことで、エミール君によるとかなり凄いらしい。


 アルクは神力や精霊の力を使って、対象に術をかけたり攻撃したりする。敵に対して目くらましや幻術を見せたり動きを止めたり、風でカマイタチのように切りつけたり。水とか炎も使えたりと、とにかく技が多彩だった。


 私が思わず「アルクは何の精霊なの?」って聞いたんだけど、質問の意味が分からなかったらしい。


 私は良く聞く「風の精霊」とか「水の精霊」みたいに、それぞれ属性みたいなものがあるのかなって思ったんだけど「リカの世界の精霊はそうなのか?」と逆に聞かれてしまった。もちろん精霊の知り合いなんていないので答えられなかったけど。


 まあ結局のところ、アルクに属性とかそういうのはなく、元素は色々操れるらしい。アルク凄い。


 一方エミール君は、綺麗な剣技で戦い方がとっても優雅。だからと言って弱い訳では全然なくて、スパンスパン魔物を切りまくってめちゃくちゃ活躍していた。


 ちなみにマリーエさんの能力は脚力らしく、ものすごい跳躍や動きを見せていた。飛び上がって空中で魔物を切り裂いたり、壁を蹴って方向を変えたり、くるくるくるシュタッって着地したりとか凄く恰好良かった。


 三人とも動きに無駄がないんだよね。段々と連携も出来てきて戦い方も良い感じになってきたし、強い人達って一緒に戦う人の力量とかタイミングとかを読んで合わせられるらしいんだけど、私には到底理解できない世界だった。うん、とにかくみんな凄い。



 そうそう、魔物を倒すとたまにアイテムをドロップすることがある。武器だったりポーションだったり色々だ。


 ダンジョン内にアイテムがあることも不思議だけど、魔物を倒すとアイテムが出るっていうのもどう考えてもおかしいよね。


 どこから現れるのかって私はすごく不思議に思うんだけど、こちらではそれが常識らしく、私が不思議がっているのを不思議がられてしまった。むぅ。


 それでね、入手したアイテムの所有をどうするかでちょっと揉めることになってしまった。もちろん取り合いとかではなくて、全部私にっていう困った状況なんだけど……。


 私としては魔物を倒した人に権利があると思うし、そうでないならみんなで分けるとかしたいんだけどね、全員が拒否するんだよ。


 アルクは必要ないと言うし、マリーエさんは護衛が戦うのは当然で「取得したものはすべてリカ様のものです」って譲らない。


 あとエミール君は勝手に付いてきただけなので権利はないとか言うし、全員が受け取ろうとしないんだよ。自由に使って欲しいと言われたんだけど、どうしようねぇ。



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