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 さて、色々考えたりアルクと話をしていたら、いつまにか眠ってしまって、気が付いたら朝だった。ちゃんとベッドで寝ていたので、またアルクのお世話になってしまったんだと思う。いつもすみません、ありがとうございます。


 しっかり睡眠できたので頭はすっきりだった。だいぶ早い時間に目が覚めたので、入りそびれたお風呂に入ったり、朝ごはんを食べたりしてこれからの一日に備える。


 で、アルクとのんびり食後のコーヒーを飲んでいたら、マリーエさんがやってきた。マリウスさんも一緒だ。そして開口一番、盛大に謝罪された。


「この度は、大変、申し訳ございませんでした!」


 深々と頭を下げるマリウスさん。その後ろでマリーエさんも頭を下げている。マリーエさん、昨日はちゃんとご飯食べたかな。マリウスさんも相変わらず隈があるし、二人とも眠れたんだろうか。


 出発まではもう少し時間があるようなので、私は二人にもお茶を出して少し話をすることにした。


 だけどねぇ、マリウスさんによる謝罪が延々と続いてしまってかなり困った。それでね、マリウスさんが私に「カランへ同行させて下さい」って頼んできたんだよ。


 私への謝罪はもちろんなんだけど、処罰を受ける為にマリーエさんと一緒に出頭するんだとか。いやいや、出頭って犯罪者みたいなんだけど……。何だかすごく思いつめた顔で「覚悟は出来ています」とまで言っている。えー。


 本当はね、カランのコンテストにマリウスさんは出席の予定はなかったそうだ。今のガイルの状況だと、マリウスさんが不在になるのはちょっとまずいらしく、今回は代理で別の人が出席しているらしい。


 そうだよ、ガイルにはマリウスさんが必要だよ。マリーエさん同様、処罰なんてそんなの駄目だと思う。今回の事は、私が勝手にコンテストを見に行って誘拐されちゃっただけなんだから。


 二人は大変悲壮な顔をしていた。私は申し訳ない気持ちでいっぱいで、朝だけどマリウスさんには生チョコケーキ、マリーエさんにはお酒は良くないかなと思ってブランデーケーキを少し出してあげたらものすごく感謝された。


 「最後の甘味」とか「お慈悲」だとか、色々言いながら半泣き状態で食べていたんだけど、うーん。とにかく、二人が処罰されないようにしないとだね。


 私は二人がケーキを食べている間に着替えを済ませた。そうそう、この仕立てた服ね、私が汚れそうって心配していたらアルクが術をかけてくれたじゃない? あの誘拐騒ぎでかなり汚したと思っていたのに、汚れひとつ、シワひとつ無かったんだよ。凄いよね。私は着て行けるのがこれしかないから本当に助かった。アルク様様です。


 あとマリーエさんにお願いして、前回と同じように髪を結ってもらい、お化粧もしてもらった。なんでだろう、髪を結ったりお化粧すると、なんとなく気が引き締まる気がするんだよね。


 うん、ということでいざ、出陣っ!




「これが、扉……」


 マリウスさんは初めて扉を見た時は流石に驚いていたけど、なんとなく私の力の事はバレていたっぽい気がする。まあ、あれだけ何度も行ったり来たりしていたし、結構好き勝手してたからね。少し調べたらおかしいことには気付くと思う。


 それにガイルの家と日本との行き来だってもしかしたら知ってるかもしれないって思った。おじいちゃんの時代から扉を使ってるんだし、ありえるとは思うんだけど。どうなんだろうねぇ。


 まあ疑問はさておき、四人でカランにやってきた。


「ここがもうカランだなんて。本当に一瞬ですね」


 扉の移動にマリウスさんはすごく感動していた。そうだよね、最近は普通に便利に使ってしまっているけれど、本当に不思議だよねぇ。改めて、扉すごいって思う。


 さて、マリーエさんは呼び出されているということだったけど、ここは領都ではない。なのでお城もないし執務を行う施設もないということで、出向く先はコンテスト会場の建物だった。


 会場に着くと先に私とマリウスさんもマリーエさんと同席する旨をエミール君に伝えてもらい、私達は返答がくるまで控室で待機することになった。


 今日はコンテスト最終日で、表彰とパーティーだけ行われる予定だ。開始は午後からなので今は人も少なく、パーティー会場設営の為のスタッフが忙しく働いている。


 奥に用意されていた控室の辺りはさすがに静かで人も少なく、入ってみると立派な応接セットのある落ち着いた部屋で、私達が入るとすぐにお茶が用意された。


 ここは先日エミール君とご挨拶した部屋よりはだいぶ広く、ソファも複数置いてあったり花や鏡などの調度品以外にも本棚が備え付けてあるなど、大勢で利用する部屋のようだった。


 私達は大人しく待っていたんだけど、しばらくして別の誰かが案内されてやってきた。さすがに昨日の今日なので知らない人は警戒してしまう。私達の視線は自然と入り口に向けられたんだけど、入ってきたのは若い女性だった。


 その人はお付きの侍女を四人も引き連れていて、何だかとっても華やかなお嬢様って感じ。だけどねぇ、部屋の中に入るなり案内人に文句を言ったんだよ。


「なんですの、この部屋は? 私をこんな部屋に通すなんて何を考えているのです!」


 ええ、こんな部屋って。ちゃんと立派な良いお部屋だと思うけど、何が気に入らないんだろう。


 案内人はただ指示された通りに案内したんだと思う。突然の叱責にとても驚いていた。


「あ、あの、申し訳ございません。すぐに確認してまいります」


 彼女は慌てて部屋を出て行ったけど、お嬢様の文句は止まらなかった。


「本当になんて教育のなっていない。これだから田舎は嫌なのよ」


 うわー、なんか感じ悪そう。あまりお近付きにはなりたくないタイプだ。そんな風に思っていたら、部屋を見回していた彼女とバチンっと視線があってしまった。


 しばしの見つめ合い。


「何故、あなたがここにいるのです?」


 そう言われたんだけど、え、どなたでしたっけ?


 そう思ったら、次の彼女の言葉に更に驚かされた。


「あなた死んだはずでしょう?」


 


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