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 舞踊の後は少し休憩が入り、午後からは演劇が行われるという。あれだけ舞踊が盛り上がっていたから、こっちも面白そうだなと思って私も楽しみにしていたんだけど……。


 演劇の内容がね、もう。


 まず、老舗の商家のお嬢様と幼馴染の若者はお互い想い合っている恋人同士。でも、お嬢様の父親はそんな二人を認めようとしなかった。

 

 ある時、老舗商家は商売に失敗してしまい倒産の危機に陥る。そこへライバルの商家が助けの手を差し伸べるが、これはすべてライバル商家とその後ろにいる悪徳貴族の罠だった。


 ライバル商家は老舗商家の乗っ取りをたくらみ、さらに悪徳貴族は娘を差し出せと迫る。娘は家の為ならばと自分の身を犠牲にしようとするが、そこへ現れたのが幼馴染の男性だった。


「彼女は渡さない!」


 しかし、身分と武力の前に成す術もなく男性は捕えられてしまう。


 そしてもう駄目だ、そう思った時に颯爽と登場する一人の紳士。


 両側にお供を従えた身なりの良い男性は、自らの高貴な身分を明かし、ライバル商家と悪徳貴族の悪行を暴く。しかし逆上した貴族は兵を差し向けて紳士を亡き者にしようとするが、逆にバッタバッタと倒されて観念する。


 で、最後はお嬢様と幼馴染の若者は結ばれてハッピーエンド。高貴な貴族は高笑いしながら去って行く……


 どこから突っ込んでいいのか分からないけれど、聞いたことあるよね、この黄金パターン。


 マリーエさんに「これって……」と聞いたら、良い笑顔で頷いてくれました。おじいちゃーん。


 なんかね、他にもいくつかパターンがあって国内でも人気の高い演目らしい。いやまあ、なかなか面白かったし、お客さんも真剣で、紳士達が悪代官、いや悪徳貴族の兵を倒している場面なんかは「いいぞー!」「やっちゃえー!」なんて掛け声まであってすごく盛り上がっていた。


 貴族に対してこんな演出しても大丈夫なのかなと思ったけど、「作り話ですから」とマリーエさんからはかなり寛容な答えが返ってきた。平民の娯楽プラスガス抜きってとこなんだろうか。


 貴族の間でも、これまでにないストーリーの目新しさに話題になって人気が出たそうだけど、中には「けしからん!」という人もいたらしい。


 実際、こんなお芝居のような貴族っているのか気になって聞いてみたら、「多少は」とのことで、平民に対して無理難題を言ったり困らせたりするなんてことはあるらしい。ただこの演目が流行り出してからはそういう貴族は大人しくなったそうだから、抑止効果があったのかもしれないね。


 まあそんな感じで、私達は屋台で買い物したり舞台を見たりと二日間お祭りをたっぷり堪能した。楽しー!



 さて、あっという間に夕方。いよいよお祭りのフィナーレに突入だ。


 アレンジパンの投票は昼で締め切られ、集計作業は既に終わっている。これから舞台で発表と表彰式が行われるのだ。


 集まった人達は、自分が投票した店が選ばれるかどうかを期待しながら待っている。中には賭けまでしている人達もいるようでかなり熱が入っているようだ。


 今回は特に規制もしていなかったけど、あんまり増えるようならトラブルを避ける為にも役所の方で管理した方が良いかもしれないね。胴元は確実に儲かるし。ふっふっふっ。


 私達は舞台が見えやすく、だけどあまり目立たない場所に席を用意してもらった。


 屋外だし周りに建物がない開けた場所だけど、貴族の人達も居るので客席の両端に天幕が張られ、隣同士や客席からも見えにくいように工夫までされている。中にはテーブルや椅子、さらにはティーセットまで用意されていて中々快適だ。


 集計結果は私も聞いていない。なのでドキドキしながら発表を聞いた。


 「三位、ペルデの店 !」


 こちらは溶いた卵と牛乳にパンを浸して焼いたフレンチトーストのようなパンに、ベリー系のジャムを挟んだデザート系。


 パンのフワフワでとろける様な食感と甘酸っぱいジャムがたまらなく美味しかった。特に女性人気が高くて私も大ファンになったパンだ。


 そして二位は、「ソイルの店!」


 あの鉄板焼きをしていた店だ。ソーセージの食べ応えあるボリューム感はもちろん、香りのたまらない特性ソースに誰もが虜になった。納得の入賞だね。ここが一位ではないかと予想していた人も多かったらしい。


 そしてそして、栄えある第一位! 「コルネの店!!」


 パンの開発者であるコルネさんが、その美味しさを十二分に引き出すべく作ったのは「カツサンド」だった。


 柔らかいヒレ肉風のカツにたっぷりのソースだけというシンプルさで、ハチミツの隠し味がほのかな甘みでたまらなく美味しかった。あのしっとりもっちりのパンとの相性も抜群で、また食べたいと思わせるリピート確実の味だ。


 見た目のインパクトは少し弱いかなと思ったけど、断面の美しさなども評価されていたようで、幅広い支持を得ての堂々の一位獲得だった。


 やったね、コルネさん!


 ちなみにデニスさんは惜しくも四位だったらしい。入賞できなかったのは残念だけど、とにかくみんな甲乙つけがたい接戦だったようなので、気を落とさず今後も頑張って欲しい。


 順位発表の後は表彰式が行われた。店主達が舞台に上がり、順番に楯と賞金をマリウスさんから手渡される。最初はかなり緊張している様子だったけど、観客たちから盛大な拍手を送られ、みんなとても誇らしそうだった。私ももちろん、参加者全員へ惜しみない拍手を送ったよ。


 会場はまだ興奮冷めやらない雰囲気だけど、最後はマリウス町長による閉会宣言で祭りのプログラムはすべて終了となった。本当にみなさんお疲れ様でした。楽しかったし無事終わって本当に良かった。


 コルネさんおめでとう~!



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