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 あっという間に今年も残すところあとわずかとなりました。


 いやー、お休みが終わったら、さっそく伯父さんからオンラインギフトの設定をお願いされてお仕事したよ。まあ今回は差し迫った締め切りとかはなかったので慌てず取り組めたのは良かったかな。無理は良くない。でも、だからと言って気は抜かずにちゃんとお仕事頑張りました。


 でね、二十四日にクリスマスにケーキを受け取りに行ったんだけど、いやいや駐車場が凄いことになっていた。お店をぐるっと回るように列が出来ていて、近くの広場を借りた臨時駐車場があったり、警備員さんまで居てびっくりしたよね。クリスマスのケーキ屋さんは想像以上に混雑するんだと知りました。


 予約の人はケーキを受け取るだけなんだけど、ちゃんと中身の確認をして受け渡しをしているから地味に時間がかかって大変そうだった。あと予約なしで当日買いに来る人も結構いるんだよね。ホールを買う人やカットケーキを数種類買ったりと色んな人がいた。


 あまりに忙しそうで申し訳なかったんだけど、私は受け取りだけで手伝いはしなかった。だけど差し入れを持って行ったら伯父さんも従業員の人達もすごく喜んでくれた。


 夕方近くに行ったんだけど、何にしようか考えてコロッケにしたんだよ。私もちょっとお腹が空いていて食べたかったのもあるんだけど、お昼もすごく忙しかったようで、渡したらみんながかぶりついていた。


 確かに空腹時にこの匂いはたまらないよね。私も車の中で我慢できずに一個食べちゃったし。「美味し~、あったかーい、たまらん~」って、ホクホクのコロッケを食べたみんなにお礼を言われた。多めに買ってきて良かったー。


 私はほとんど家で作業するからお店の従業員さんとはあまり交流がない。だけどお店に行けば顔を覚えてくれていて笑顔で挨拶もしてくれるし、そういうちょっとしたことが嬉しかったりするんだよね。


 私は伯父さんと少し仕事の確認の話をして、なんだか一番忙しそうな時に行ってしまったなと反省しながら家に帰った。明日、ガイルでクリスマスパーティーをするのに当日は忙しいと思って今日をケーキの受け取り日にしたんだけど、もっとパーティーの日をずらせば良かったと思う。


 ガイルにはもちろんクリスマスはない。当たり前だよね。だから別にいつでも良かったんだけど、浮かれていたのか最初にクリスマスの日程でみんなの予定を聞いてしまったんだよ。で、あとからクリスマスがないことに気付いてじゃあ忘年会と思ったら、ガイルは年末でもなかった。


 一年という考えはあるんだけど、その始まりは春なんだって。王都では雪解けの季節らしいんだけど、ガイルは年中温暖で雪も降らないしあまり季節感もない。一応日本と季節は連動しているようなんだけど、今が冬とは思えない過ごしやすさだし、春も今とほとんど変わらない気候らしい。なのでどちらにしろ年末年始っていう気分にはならなそうだった。


 まあそれで、結局何のパーティーにしようか迷ったんだけど、パンイベントの計画がそろそろ大詰めなこともあって一足早いお疲れ様会ということにした。まあ名目は何でもいい。


 誘ったのはネロさんにパン協会の二人とマリーエさん。あとどうしてもとお願いされてマリウスさんも参加になった。なんかね、前回食べたケーキが忘れられないんだって。


「絶対に行きます」


 パーティーの話を聞いて、誘われてないのに参加したいと言ってネロさんを困らせたらしい。どうしてもケーキを食べたいそうだ。別に良いけど。


 私とアルクは色々メニューを考えて頑張ってお料理した。今回はケーキはあるからアルクにも料理を手伝ってもらったんだけど、手際がいい! しかも私より包丁使いとか上手いんじゃないかなって思う。凄いな精霊。


 パーティーはガイルの家だけど、料理はオーブンや道具の揃っている日本の台所でしている。そうそう、引っ越してきた時に暖房器具を何か買わなくちゃと思っていたんだけど、結局買わずに済んでしまっている。


 最初は家の中が暖かくてすっかり忘れていたんだけど、流石に外の寒さとの温度差に疑問を持ったら、アルクが室温を調整してくれていたらしい。アルク優秀。私は暑さにも弱いけど、それ以上に寒さに弱いので本当に助かる。



「こっちは終わった」


「了解ー。アルクこれもお願いー」


「ん」


 二人では少し狭い台所で、他愛もない話をしながらアルクと料理を作っていく。誰かと一緒に料理なんて何年振りだろう。しかもこれからお客さんが来てパーティーなんて、数か月前の仕事に疲れ切った私に想像できただろうか。絶対無理だよね。こんなに毎日楽しく生活できていることを、私もまだ夢みたいだなって思う時があるくらいなんだから。


 さて、朝から頑張って支度をして、夕方には準備が間に合った。さっきカランのニールさんやおかみさんには料理の差し入れを持って行ったし、後はみんなが来るのを待つだけだ。


 お酒も用意したし、今日はマリーエさん飲んでくれるかな。アルクが盛り付けたオードブルやサラダやマリネは芸術的に美しいし、たっぷりのミートソースとホワイトソースで作ったラザニアは私の大好物だ。クリスマスっぽくローストチキンも用意したし、鶏でかぶるけど唐揚げも醤油味で少し作ってみた。他にも色々あるけど、みんな気に入ってくれるだろうか。


「アルクー、料理足りるかな。他に何か準備した方がいい?」


 コロネさん達がパイを持ってきてくれるらしいし、あとはケーキがあるから足りると思うけど、急に心配になってきた。


「落ち着け。もうすぐ時間になる」


 私がウロウロし始めたらアルクに止められて「まったく」というあきれた顔までされてしまった。だってこういうのって加減も分からいないし不安なんだよ~。


「大丈夫。それにもう来たようだ」


 そう言ってアルクは玄関に向かって行った。


「え、本当?」


 私も慌てて出迎えに行く。扉を開けるとみんなが笑顔で立っていた。


「いらっしゃいませ! さあどうぞ」


 お客様を家の中に案内する。振り返るとアルクが笑っていた。私も自然と笑顔になる。さあ、パーティーだ!



ここまでお読みいただきありがとうございます。

皆様、良いお年をお迎え下さいませ。


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