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 おじいちゃんの話に驚きながら見学を続けたんだけど、一階を三分の一くらい見たところで「そろそろ閉館のお時間になります」とイヨさんに声を掛けられた。夢中になってしまったけれど結構時間が経っていたらしい。うん、すごく楽しかった。


 ということで明日もまた来ることを確認し、私達は建物を出た。イヨさんに見送られ、お腹も空いてきたので教えてもらった飲食店の多く集まる通りに向かう。さて、何を食べよう。


 お薦めのお店もイヨさんに聞いておけば良かったと思いながらマリーエさんにこの町の名物を知っているかを聞いてみた。そうしたら「カラアゲです」と返事が返ってきた。


「え、唐揚げ?」


 そのままな名前に思わず聞き返してしまった。確認したけれど、鶏肉を大量の油で調理する料理とのことなので私の想像する唐揚げで合っていそうだ。一応聞いたらやはり賢者印らしい。うん、美味しいよね、唐揚げ。最近食べていないけど私も大好きだ。


 なのでもちろん、カランでも有名な唐揚げを出すお店に入ることにした。まずは食べてみないとだよね。


 お店はすごく繁盛しているようで、まだ少し早い時間にもかかわらずお客さんでいっぱいだった。待たずに座れたのはタイミングが良かったと思う。マリーエさんに個室でなくていいのかと聞かれたり、私達と食事するのを遠慮されたりなんてこともあったけど、なんとか一緒に席についてもらった。


 思ったよりメニュー数があってよく知らない単語も多かったので、注文はここに来たことがあるというマリーエさんにお願いした。アルクは飲み物だけでいいというので料理は二人分の注文にしてもらったけど、マリーエさんはしきりに食べなくていいのかとアルクに聞いていた。油が苦手なら他にもメニューはあると言っていたけど、アルクはスイーツ以外ほとんど食べないからねぇ。


 精霊だから食事の必要はないんだけど、マリーエさんは自分が食べることもあって気にしているようだ。私は話さないのかなと思ってアルクを見たけど首を振られた。あれ、言うなってことかな。ふーん。


 さて、注文した料理がきた。おお、まさしく唐揚げ! さっそくひとつ食べてみたらこれは……塩味? 醤油味を想像していたので最初はちょっとだけ驚いたけど、そういえば私が見慣れている唐揚げより少し白っぽいかな。あと生姜とニンニクの味もする。うん、とってもジューシーですごく美味しい。揚げたての唐揚げ最高です!


 周りのテーブルを見たら皆さんお酒が進んでいるようだった。うんうん、ビールとか合うよね。私はあんまり飲めないけど気持ちは分かるつもりだ。マリーエさんは職務中だからといってお酒は飲まなかったけど、ちょっと残念そうに見えたのでお酒は好きなのかもしれない。


 唐揚げの以外の料理も次々運ばれてきた。ポテトフライとサラダと煮込み料理、あとピクルスかな? それから玉子焼きとこれは……焼きおにぎり? え、これってもしかしなくても居酒屋メニューではないでしょうか。おーい、おじいちゃーん。


 思わず笑っちゃったよね。まったくもう。料理はどれも美味しかったので私とマリーエさんは笑顔で完食した。うん、お腹いっぱい満足です。


 久しぶりの唐揚げは大満足の味だったし、居酒屋メニューって美味しいよね。社会人の頃、まだ余裕があった時は会社の人と行ったりしたけど、私はお酒に弱いので食べるの専門だった。ちょっと懐かしい。今度花ちゃんを誘って久しぶりに行ってみようかな。焼き鳥食べたい。あ、もしかしてこのお店にもあったかも。


 そうそう、支払いなんだけどね、私が払おうとしたらマリーエさんが支払ってしまった。自分の分は払うって言ったのに聞いてもらえなかったんだよ。なんかガイルの経費で落とすって言われたんだけど、それって良くないよね。もしかしてホテル代もだろうか、困ったなぁ。




 私達は食後もばらく町歩きをして、本日の宿「銀の靴」に戻ってきた。


 今日は馬車に乗っている時間が長かったけど何だかとっても疲れた。なのでゆっくり休みたい。そう思っていたんだけど……このお部屋は流石に立派過ぎではないでしょうかね、マリーエさん。


 案内されたのはどう考えても広すぎる部屋だった。まず、入り口から入ってすぐはソファセットやダイニングテーブルなどが配置された部屋で、落ち着いた壁紙に趣味の良い花まで各所に飾られていた。


 更に奥にはベッドルームがあり、大きなベッドとドレッサーや片隅には小さなテーブルセットまで置いてある。これでまだ余裕があるんだからこの部屋の広さも分かるよね。クローゼットはもはや部屋だし、旅先でこんな広さ必要ある?


 あとはタイル張りの壁と猫足のバスタブが置いてある浴室に荷物を置くためだけの部屋や侍女などお付きの人が使う部屋まで用意されているという豪華振り。スイートルームとかそんな感じじゃない? 広さもすごいし調度品などが全部高級そうだし、絶対高いよね、この部屋。


「いえ、リカ様はあまり贅沢を好まれないようなので、これでもかなり抑えめにしたのです」


 マリーエさんによると、この宿でこの部屋のランクは高くないのだそうだ。なんと。でももっと普通でいいんだけどなぁ。そう言ったんだけど、警護の都合上この部屋で休んで欲しいと押し切られてしまいました。


 あとお世話する侍女を用意するとも言われたんだけど、もちろん丁重にお断りした。だけどそうしたらマリーエさんは侍女さん用の部屋で待機するって言うし。


 でね、マリーエさんはアルクに言ったのよ。


「アルク殿は廊下を挟んで向かいに部屋を用意してあります」


 それに対して、あ、言い忘れてた。そう思って私は思わず言っちゃったんだよねぇ。「アルクの部屋はいらないですよ」って。先に言っておけば良かったって思ったんだけど、見たらマリーエさんが困った顔をしていた。そして少し戸惑った様子で聞いてきた。


「あの、リカ様とアルク殿はどのようなご関係なのでしょうか?」





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