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「タケノコご飯おいしー!」


「ニモノというのも味が染みていて良いですね」


「皮がパリパリしていて、このハルマキというのも美味しいです」


 今日もみんなの食欲は旺盛だ。


 結局、小さい方の箱をどうするかは一旦保留になった。戦闘後でちょうどお昼の時間だったし、一度家に戻って食事をしてから考えようってことになったのだ。


 今日はヒナちゃんがいるし、以前みんなで探したタケノコを使った料理を出した。リクエストのあったタケノコご飯と定番の煮物。あと本当はもう数品作るつもりだったけど、タケノコの量が少なかったので一品だけ追加して春巻にした。これはいくつか料理名を挙げて選んでもらったんだけど、まあ食感も違うしみんな珍しそうにしてるから良かったかな。


 タケノコご飯は油揚げ入り。味が染み染みで美味しいよね。白だしと迷ったけど、醤油、酒、みりんと和風だしで味付けしたよ。あと煮物はツナ缶入り。これが美味しいんだよ、私は好き。


 みんなの食べっぷりを見る限りはどれも好評のようだった。まさかダンジョンでタケノコ掘りをしたりそのタケノコで料理することになるとは思わなかったけど、味はまさに私の知っているタケノコと同じだった。やっぱり不思議な場所だよねぇ、ダンジョンって。



「美味しかったぁ。里香さんご馳走様でしたー!!」


「はーい、お粗末様でした」


 みんなにも美味しかったと次々にお礼を言われた。あとダンジョンで採れた物が食べられるならまた素材を探してみようって話で盛り上がり、ヒナちゃんは「今度はマツタケご飯とか栗ご飯が食べたいかもー」なんて言っていた。あるかねぇ、マツタケ。


 そして食後のお茶を飲みながら午後の相談をした。


「それで、どうするんだ?」


 騎士団長が聞いてきたのは、もちろんあの小さい箱のことだ。


「お話だと小さいつづらには宝物が入ってたんだよね」


「ではアイテムの可能性が?」


「でも竹からは魔物が出たんだよ。小さい箱だってまた魔物かもしれないよね」


 私は魔物が出る危険性を言ったんだけどね……


「よし開けよう」


「「「「開けましょう」」」


「開けてみよー!」


 結局みんなの意見はそれなんだよ。アルクはどっちでもっていうスタンスだけど、他のみんなはアイテムでも魔物でもどっちが出てもウェルカムなんだよね。むしろ魔物を期待してる。


 みんなのダンジョンでの目的が戦闘なことは知ってるし、戦うの大好きだって知ってるよ? 知ってるけどさぁ、もし以前の球体から出てこようとしたみたいなとんでもない化け物が出てきたらどうするのって思うんだけど。


「おお、あいつか。あいつは強かったなぁ。いつか本体とやりあってみたいものだな。はっはっはっ」


 騎士団長はそう言って笑ってた。


 駄目だこれ、もう好きにして……。




     ◇




 慎重に箱を開けた結果、中には指輪が入っていた。


 そりゃもう、みんなの落胆は大きかったよね。


「せっかく戦えると思ったのに……」


「魔物じゃなかった……」


 何だかブツブツ言ってる声がいくつかきこえたけど、アイテムが出たんだしいいじゃないって思う。それにさっき十分戦ったでしょうに、もう。


 指輪は淡いゴールドで石は付いておらず、細くてとてもシンプルだった。だけど残念なことにエミール君の鑑定でもどんな機能があるかはまったく分からなかったし、マリーエさんが指にはめたり力を流してみても何の反応もなかった。


「また鍵の時のように検証が必要そうですね」


「そうだねぇ」


 こうやって意味ありげに出てきたんだから何かしら機能はあるだろうと指輪を眺め、何気なく私もはめてみた。だいぶ大きかったけど中指にちょっとね。そうしたら……なんと私がをはめた途端にほのかに光ってシュルンって指輪が縮まったのだ。


 えって私も思ったし、みんなもその様子を見て驚いていた。そして指輪に注がれていた視線は、一斉に私に向けられた。


 いやいやいや、何もしてないよ? マリーエさんだって試したじゃない。それで何もなかったし、指輪なんだから普通は指にはめてみるでしょう? やめてよね、そうやってすぐに私が何かしたみたいに思うの。


「指輪が持ち主としてリカ様を選んだのでしょうか」


 マリーエさんがそんなことを言うのでちょっと緊張しながら指輪に力を流してみたんだけど……何も起こらなかった。持ち主とは認められてないのかな。


 だけどアルクが「リカの気配が薄くなった気がする」と言っていた。私的には何も変わった感じはしないんだけど、何か指輪の効果なんだろうか。


 結局その後は何も反応は現れず、また何かきっかけがあれば使い道も判明するだろうってことで落ち着いたんだけどね、ここで問題発生。指輪が抜けません。いやまあ、縮まった時点で嫌な予感はしてたけどさ、なにこれ呪いの指輪なの?


 もー、なんでー?



     ◇




「それが気に入ったのか?」


 ダンジョンの探索を終えて家に戻って来た私は、今日はお泊まりのヒナちゃんと夕飯を食べてお風呂にも入り、今はお茶を飲んでくつろいでいた。それでなんとなく目に入った指輪を見ていたらアルクに聞かれたんだけど、別に気に入ったとかそういう訳じゃない。つい気になって見てしまうだけだ。


 私は普段からアクセサリーはほとんどしないし、着けたとしても一時だけですぐ外してしまう。だからこんな風に一日中、お風呂や寝る時もなんてあり得ないことだったし、しかも普通の指輪ではないんだから気になるのは仕方がないと思う。


「里香さんが欲しいって言ったから、指輪が出たんじゃないかってロイさん言ってましたよね」


 ヒナちゃんはそう言うけど、別に私は指輪が欲しいとは言ってない。


「ロイさんは冗談で言っただけだよ。そもそもダンジョンがお願い事を聞いてくれるの? もしそうなら扉の便利機能の方が私は嬉しい」


 切実に下さいって思う。


「えー、でももしかしたらその指輪に何か凄い力があるかもしれないじゃないですか」


 すっごく楽しみですね、とヒナちゃんはニコニコしていた。まあ指から外れないのは気になるけれど今の所は害はないし、早くその力とやらがどんなものか知りたいものだ。


 それよりも明日だ。明日はヒナちゃんを送った後に花ちゃんを迎えに行って出掛ける予定だった。そう、例の婚活パーティーに行かなければならない。


 気が進まないのは相変わらずなんだけど、花ちゃんが心配してくれているのも知っているし、私自身も今の状況をなんとかしたいとは思っている。「アルク離れ」をしないといけないって。だからといってパーティーに出て上手くやれる自信なんてないから気が重いんだけど……。


 しばらくヒナちゃんと話をして、今日も沢山歩いて疲れたし明日に備えてそろそろ寝ることにした。ヒナちゃんとアルクにおやすみの挨拶をして私は自分の部屋に向かう。


 ああそういえば、今日は家に帰ってきてもアルクは居なくならなかったなって思う。ずっと家に居るし今も気配がある。


 今日は、出掛けないのかな……。




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