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竹から出てきた魔物と、只今絶賛戦闘中です。
とりあえず私は後方へ下がり、ひたすら防御に徹している。みんなの邪魔にならないようにっていうのが大きいんだけど、私が怪我したり死んじゃったら色々大変だし、これも一種の戦略なのだ。まあいつものことなんだけど。
あ、そういえばですね、私なんとこの度、杖の制御に成功致しました! ぱちぱちぱちー。
いやあのね、杖の防御範囲が広すぎて使えないって度々言っていたんだけど、あれってどうも私が考えなしに力を使っていたからだと判明しまして……。いやー、色々と試行錯誤、努力の甲斐あって防御範囲を半径二メートルくらいまで縮めることが出来たんだよね。
杖の大きさと威力は比例する。私が防御膜を張ろうとすると杖は巨大化するし防御範囲もかなり広くなるんだけど、防御している間はみんなが攻撃できないっていう困った状態になる。だから戦闘中は自分の周りだけを防御したいなーと思っていたんだけど、そんな私の不満を聞いた騎士団長が「流す力を抑えればいいのではないか?」と言ってきて「え?」ってなった。
それで色々試して分かったのは、力をセーブして使うと杖も小さく防御範囲も狭まるということ。あたりまえのことではって思うかもだけど、私が持つと自然といつも巨大な杖になって調整が効かなかったし、だからそれが私の杖の大きさでそういうものだと思い込んでいた。まさか小さくできるとは……ちなみに普段の持ち運びの短い状態だと防御は一応働くけど力は弱い。
それでかなり練習してなんとか範囲を狭めてそこそこ使えるようになったんだけど、実は私はこの力を抑えるというのがとてつもなく下手だということが分かった。まず力を制御するってどうやったらいいのかが分からなかったし、出来てもそれを維持する事がすごく難しかったんだよ。まあそんな状態だったから大きさが変更できることにも気付かなかったんだけどね。
「あーあ、大きくする方が簡単なのに」
「普通は逆だと思いますよ」
ぼやいたらみんなにそう言われたんだけどね、難しい物は難しいんです。
そんな訳で一応実用に耐えるくらいには使えるようなったし、戦闘の時は後ろで自分の防御に徹している。もし何かあった時にみんなが避難できるようにとか、回復できる場所を確保しておくっていうのも大事な役目だよね。うん、私も一応貢献している……ということにしておいて欲しい。
えーと、戦闘開始からだいぶ時間が経過しました。
耐久戦かってくらいに次から次へと魔物は襲い掛かってきたんだけど、どうも切られた魔物がまた復活しているようだと途中で気が付いた。観察していたら魔物は黒い塊に戻り、やがて徐々に散った欠片が集まって形をつくっていくんだよ。もとの数もすごく多いんだけど、これじゃいつまで経っても終わらないよねぇ。
なので復活を防ぐ為に細かく切り刻んで応戦してみたけど効果はなく、結局色々と試してエミール君が魔物を凍らせてロイさんとマリーエさんが砕いたり、アルクが炎で燃やすっていう方法で徐々に数を減らしていくことができた。殿下の剣も氷刃を飛ばせるので頑張っていたよ。
ロイさんは「以前の海坊主への対策案が役に立ちましたね」って何故か嬉しそうだったんだけど、みんなの戦力が上がっているから実現できたんだと思う。
ただね、みんなの消耗は思った以上に激しかった。アルクが能力強化をしてるし善戦していたんだけど、戦いの途中で順番に私のところにやってきてポーション補給する、なんていう珍しい戦いになったんだよ。あ、私もちゃんと役に立ってるね。
やがてみんなの頑張りで段々と終わりが近付いてきたのか、魔物が今までと違う動きを見せ始めた。
どうやらあちらも最終決戦の準備に入ったようで、魔物は一か所に集まってひとつの大きな塊へと変わっていったのだ。さらに膨張し、長細く形を変えていくので最初はヘビかなと思ったんだけど、現れたのはどうやらミミズのようだった。
うん、気持ち悪い。波打って迫ってくる様子なんかはもう恐怖でしかない。
今までとは桁違いな大きさと強靭さでミミズは襲い掛かってきた。だけどみんな怯むことなく向かっていき、先程の戦法でそれぞれが確実にダメージを与え続ける。
ミミズは竹林をなぎ倒しながら暴れまわり、時に地中へ潜ったりと意外に素早く動き回っていたけど、やがて蓄積されたダメージに動きが鈍くなったところを誰も見逃さなかった。
殿下とエミール君がミミズの頭に同時に剣を突き立てると、ミミズの勢いを利用してそのまま一気に胴体を尻尾まで切り裂いていく。エミール君の剣の効果でミミズの体が凍っていき、追い打ちでアルクも冷気を追加。
徐々にミミズは動かなくなり、やがて見通しの良くなった竹林には三枚おろしのミミズが氷の彫刻のように鎮座していた。別に眺める気はないけど、どこか芸術作品みたいだ。
そして復活しないように、最後はマリーエさんが巨大化させた剣で粉砕して戦闘は終了。
はぁ、ほんとお疲れ様でしたー。




