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 夜になって、そろそろかなと実家を出た。


 前回同様に花ちゃんがお店を予約してくれたので現地集合だ。今日はインド料理のお店らしく、今花ちゃんはカレーにはまっているんだそうだ。


 向かっている途中で先に店に入っていると連絡が来た。なので私も急いで店に入る。


 店内は少し照明が暗く、あちこちにエスニックな雰囲気の飾りや置物があって流れる音楽も異国情緒たっぷりだった。


「こっちこっち」


 奥のテーブルで手を振る花ちゃんを発見。


「ごめんねお待たせ」


「ううん全然待ってないよ、元気ー?」


 とりあえず注文を済ませ、前回会ってからのお互いの近況報告をする。その間にサラダが運ばれてきたり大きなナンに驚いたり、花ちゃんお勧めのシュリンプバターマサラが美味しいとわいわい言いながら食事をして。そうして一通り話して落ち着いた頃。


「で、あれからどうなの? 何か進展あった?」


「あーうん、あったというかその、ね……」


 どう切り出そうかと思っていたけど、花ちゃんから聞かれてしまった。まあこの話は前回聞いてもらった上に泣いてしまったりとかなり迷惑をかけたし、避けられないとは思っていた。だけど……呆れられそうで気が重いんだよねぇ。


 私は恐る恐る、先日知った話をした。



「――はあ? 勘違いだった?」


「うん」


 なんとなく小さくなりながら頷く。前回あれだけ大泣きした手前、大変申し訳なく思いながら花ちゃんの視線に耐える。


「つまり、里香ちゃんの知り合いだっていう二人は付き合ってなかった……ってこと?」


「そうみたい……です」


「…………」


 沈黙が痛い。


「……はぁ、まったく。なんでそんな勘違いなするかなもう」


 大きなため息をついた花ちゃんに、めちゃくちゃ駄目な子を見る目をされた。


「うう、スミマセン」


 だけどもっと何か言われると覚悟していたのに花ちゃんは優しかった。


「まあでも良かったじゃない、これで気になることは無くなったんだし」


 そんな風に言ってきた。まあ確かに、そいうことになるんだろうか……。


「そうだよ、もう告白しちゃえばいいじゃない」


「うーいやそれはちょっと……」


 だってアルクにとって私が友人の孫ってことは変わらないんだよ。それに何より……自分に自信がない、まったく。少しは自分が好きになれたとはいえ、そんなにすぐに自分を変えられるものではない。まして自信なんて。


「もう、じゃあ里香ちゃんはその人とどうなりたいの? 好きなんじゃないの?」


「……好き、だよ。だけど……もし駄目だったら? そういう風に見られないって言われたら……」


 それで気まずくなるのも、アルクが何処かに行っちゃうのも嫌だ。そうだよ、寂しくないように側に居たいなんていうのは……ただ私がアルクと離れたくないだけだ。


 ああ、私は本当に臆病だ。成長しない。


 落ち込む私を見て、色々と話し掛けてくれる優しい花ちゃん。ほんと、面倒くさくてごめんって思う。だけどそうして話をしている内にね、何故か話が変な方向にいってしまったのだ。


「よし、じゃあ今度一緒にパーティーに行こう!」


「パーティー?」


 何が「じゃあ」なんだろうかと困惑する私に花ちゃんは笑顔で提案してきた。


「そう、婚活パーティー! 私は申し込みしたんだけど、まだ大丈夫だと思うから里香ちゃんも一緒に行こう!」


 そう言ってスマホでパーティーの案内を見せてくれた。レストランを貸し切ってのイベントで、二十代後半から三十代前半の男女を募集していた。結婚相談所が企画しているそうで、今回は会員以外でも参加が可能らしい。


「え、これに私が参加するの?」


「そう、里香ちゃんこういうの行った事ないでしょう?」


「いや一回くらいはあるよ」


 かなり以前の話だ。まあ結果は散々だったけど……。


「そうなの? いやでもね、里香ちゃんは自分に自信がなさ過ぎると思うんだよ。里香ちゃんはね、十分可愛いし魅力的なんだから、もっと自信持っていいと思うよ。いいじゃない、パーティーで素敵な人に出会えるかもしれないし行ってみようよ」


「でも……」


「でもじゃないっ! 別に好きな人がいるからって、こういうパーティーに参加しちゃいけないとかないからね。むしろさ、参加して他に目を向けてみるのもいいと思う」


 視野を広げろってことだろうか。それにしても花ちゃんの勢いがいつもより強い。あれ、お酒飲んだっけ?


「だいたいさ、その里香ちゃんが好きな人って、これだけ里香ちゃんが悩んでるのにあっちからは何のリアクションもないんでしょう? わざとなのかその気が無いのか知らないけど、そんなのもう放っておいて次行こう、次」


 さらに矛先がアルクに向いてしまった。なんかごめん、と心の中で謝っておく。それに、ただ方向が違うだけでリアクションがない訳ではないんだよね。大切にしてくれるんだ、アルクは。それが恋愛感情じゃないってだけで……。


 ああ、また落ち込んできた。だけどそうやってうじうじする私に「こういうのはね、勢いよ勢い。とにかく行動しないと何も変わらないんだから」と、そう花ちゃんに言われ、なんとその場でパーティーの申し込みをしてしまった。


 花ちゃんには「絶対一緒に行くからね、欠席とか駄目だからね」と念押しされたんだけど……ええ、本当に私、これに行くの?


 大丈夫だろうか、私……。




     ◇




「えー、里香さん婚活パーティー行くの?」


 しまった。


「あーえーと、うん。ちょっとね、友達に誘われて?」


 言うつもりはなかったんだけど、つい流れで話してしまった。そうしたらヒナちゃんは興味深々って顔で私を見てくるし、つられてみんなの視線が私に集まるし。


 うーん、これはちょっと失敗したかも……




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