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 私の次はエミール君がアイテムを選ぶことになった。


「武器が欲しい。剣がいいのだが」


 やっぱりエミール君は剣なんだ。


「はい、かしこまりました。しかし、武器の収蔵数は非常に多く、剣はその中でも最多となっています。よろしければもう少し詳しくご希望をお聞かせ下さい」


 おや再検索。


 エミール君は今度は長さや重さなどを伝えたんだけど、それでもまだ多いらしい。そこでロイさんから提案があった。


「恐らく装飾が多い式典用など実用に耐えない物もここにはあるでしょうし、いっそのことダンジョンのものと指定してしまってはどうでしょうか。私の知る限りダンジョンの武器以上に強力な武器は知りません」


 みんな納得。さっそく先程の条件にダンジョンの武器を加えて探してもらったら該当はかなり少なくなった。なのでロイさんは剣以外も見たいとこちらもいくつか条件を絞って探してもらい、一緒に見せてもらうことにした。


「かしこまりました。少々お待ちください」


 カタン、ガタンと遠くの方で音がする。どうやら奥の方は棚自体が可動式らしく、順番に棚が動いているようだ。やがて箱が次々に運ばれてきた。先程の装飾品とは違い箱が大きく、それが一列に浮かんでこちらに向かってくる様子はなかなか面白い。


「ご希望の品はこちらの五点です」


 大きなテーブルの上に置かれた箱をさっそく開けていく。


 出てきたのは剣が三本と棒、あと鞭だ。


「剣はすべて重量調整が可能、うち一本は大きさの変更も自在です。他二本にはそれぞれ切った対象を麻痺させる効果、氷刃を飛ばす特性があります。こちらの棒は槍に変形します。長さと重量調整が可能でこちらは風刃を飛ばせます。またもう一段階変形します。鞭は長さと重量調整が可能で使用者の力次第で伸ばせる長さが変わります。こちらは雷撃が撃てます」


 管理人さんが一通りの説明をしてくれた。それにしても大きさや重さが変えられるのってダンジョンアイテムの特徴なんだろうか。


「うーん、使ってみないとよく分かりませんね」


 とりあえずみんな武器を手に取ったりその場で振ったりと確認していたんだけど、やはり実際に使ってみないと判断は難しいようだ。


 だけどさすがにこの宝物庫で武器を使うことは出来ない。ということで持ち出し許可を取ってダンジョンに行くことになった。うん、なんだかみんなそわそわしてる。楽しそうだねぇ。




 いつもの二十二階層、ではなく、ひとつ手前の二十一階層にやってきた。武器を試すのに階段よりも広い場所がいいよねという事でここにしたんだけど、さて、どのくらい威力があるものなんだろう。


 まずは剣だ。それぞれエミール君やロイさん、殿下が一本ずつ受け持って重量調整などをしてからお互いに打ち合いを始めた。さらにマリーエさんも参加してしばらく四人で打ち合いを続け、その後に今度は付近の岩に向かって氷刃を放つ。


 ザクッと岩は切断され、ついでに周囲が凍り付いた。


「「「「おー」」」」


 なかなかの威力のようだ。


 麻痺は仲間相手には試せないので付近で魔物を探して効果を確かめていたけど、こちらも相当な威力だった。


 みんなでわいわい、あーだこーだと意見を言い合ってすごく面白そうだ。検証って楽しいよね。なのでちょっと参加したくなり、私でも刃を飛ばせるのか聞いてみたら何故か全員に止められてしまった。なんでさ!



 次に試したのが槍だ。だけど見た目はただの短い棒に見えた。しかしエミール君がそれを一振りすると一瞬で柄が伸び、先端に鋭利な刃が現れた。おお、なんかすごい。


 長さを変えたり重さを調整するとエミール君は長槍の状態でグルグル回したり突きを繰り出したり、まるで踊るように槍を扱った。


 そして今度は槍から風刃を放つ。


 スパンッ


 岩の上部が綺麗に切断される。うん、良い切れ味だ。


 さて、こちらの槍は棒状から変化する以外にもうひとつ形が変わるらしい。


 エミール君がブンッともう一度大きく槍を振った。


 するとそれまで槍だったものに湾曲した刃が現れた。


 これは……大鎌、だよね?


 これもエミール君は平気で振り回すけど、よくどこかにぶつけたり引っ掛けたりしないものだと感心してしまう。


 みんなに聞いたらマリーエさんは剣は得意だけど槍はあまり使った事がないそうだ。やはり剣とはだいぶ違うものらしい。ロイさんは槍は使えるけど鎌は扱えるか分からないと言っていたし、殿下はエミール君を見て「上手いな」と言っていた。



 残る一つは鞭だ。


 だけどこちらも相当扱いが難しいようで、エミール君はさっきの槍や鎌とは違って苦戦していたし、マリーエさんと殿下は少し触ってあきらめていた。一方、ロイさんは「なるほど」と言いながら器用に鞭を振るっていた。それぞれ得意不得意があるようだ。


 やっぱり癖のある武器は癖のある人に合うんだろうか。楽しそうに鞭を振るうロイさんは岩を砕いたり突き刺したりって……え、何で出来てるのそれ? しなやかに伸びるのに強度が高い。あと雷撃かな。うん、こちらもなかなかに素晴らしい威力だった。



 結局、最終的にエミール君は槍を、ロイさんは鞭を選んだ。両方ともかなり特殊でヤバそうな武器だと思う。


 エミール君は剣じゃなくて良かったのかなって思ったけど、槍がとてもしっくりと手に馴染んだそうだ。相性が良かったらしく、そういうのってすごく大事らしい。ロイさんは鞭を非常に面白いと言って気に入っていたし、二人ともとても満足そうだった。


 ああ、あと殿下は自分も剣が欲しいと言っていて、戻ったら陛下に交渉するんだそうだ。なんかね、みんなでダンジョンに行く時に自分だけ普通の武器だと不公平だとかなんとか。つまり後れを取るのが嫌らしい。うん、まあ頑張れ~。




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