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 という訳で、またもや塔の上から落下中です。


 あれから宝箱をあけては落下してを繰り返している。


 白モグラを倒した後、多数決で先に進まず別の塔へ行く事が決定して私達は再び時間を掛けて階段を上った。まあ予想通りそこにはまた宝箱があり、蓋を開けると床が消えたんだけど……うん、落ちる事は予想していたけど怖いものは怖い。床が消えた瞬間の投げ出される感覚が本当に嫌だ。


 そして落下した先にはやはりというか魔物が待ち構えていた。


「居ますねー」


「居るね~」


 よしって感じで、みんなは戦う気満々だった。


 面白いのは私達が着地するまで魔物が攻撃しないで大人しく待っていてくれることだろう。モグラの場合は地中に居たから分からなかったけど、今度の魔物は最初からその場で待ち構えていた。それなのに、だ。魔物は落ちてくる私達を目視できるだろうに、何故か動かず待っているんだよね。これには笑ってしまった。


 二度目の魔物は白いイタチで、戦ったみんなによるとモグラと同程度には強かったらしい。その後もハリネズミとかウサギとか色々な魔物が出たけど、共通しているのはみんな白くて巨大、そしてそれより少し小型で黒い魔物が二、三匹一緒に出現すること。そして針の他に衝撃波のような物を飛ばしてきたり体当たりしてくるなど攻撃方法は様々だった。


 みんなは二戦目は初戦と同じような感じで戦っていたんだけど、三戦目からは組み合わせを変えたり、単独で戦ったりと相談しながら戦い方を変えていった。さすがに一対一だと苦戦する場面もあって心配したけど、時間はかかってもちゃんと倒していたからみんなやっぱり凄いと思う。


 そして倒した後は扉が現れる。扉の先は予想通り、次の階層への階段がある円形の見覚えのある部屋だった。うん、塔の位置を考えるとやっぱりおかしい。空間が歪んでるとしか思えない。


 なのに


「ダンジョンですし」


 すべてこの一言で片付けられてしまうのだ。ほんと、つくづく不思議な場所だよねぇ。


 今の所は宝箱のアタリは無い。というか、本当にアタリなんてあるんだろうかって疑ってさえいる。だけどね、私とアルク以外のみんなは落下後の戦闘が気に入っているらしく喜んで何度も落ちていくんだよ。


 はあ、まったくもう。




     ◇




 さて、今日は陛下からの呼び出しがあってみんなでお城にやってきた。


 なんでもご褒美をくれるらしい。


 以前のカランでのバートン・バイスと盗賊団の捕縛協力(いやあれはロイさんに巻き込まれただけだよね)、それから背後のバイロン・イーガンとルーチェの関与や犯罪の立証への協力、それと今回の王妃様毒混入事件の解決に対してのものだそうだ。


「貴族籍も称号も土地もいらんと言われてはなぁ……あとは物だが……」


 いやだって、報奨金はあるそうで、それ以外にって打診されたのは要らない物ばっかりだったし断ったんだよね。そうしたら陛下は悩んだらしく、悩んだ挙句に……悩むのをやめたようだ。


「宝物庫に行って好きな物を持っていくといい」


 だって。


 これにはちょっとびっくりした。だって宝物庫といったらダンジョンのアイテムとかも保管されてるし、そういう物も選んでいいってことでしょう?


 最初は「え、いいの?」ってちょっと戸惑った。そうしたら「今更何を遠慮するんだ」ってギルベルト殿下に呆れられた。あ、殿下は陛下のお使いから帰ったばかりらしい。お疲れ様です。


 まあ実際反対する人達もいたようだ。だけど陛下は「私は王妃を救ってくれた事を心から感謝している。その感謝の気持ちを少しでも表したいのだ」そう言って押し切ったそうだ。


 そしてね、さらに驚くことにアルクとマリーエさん、エミール君、ロイさんも全員がそれぞれ選んでいいって言ってくれたのだ。なんて太っ腹!


「「「え、私達もいいんですか?」」」


 アルク以外はもうみんな大喜びだった。



 そんな訳で殿下に連れられてさっそく城の一角にある宝物庫にやってきた。


「この場所に入れるだけで興奮します」


 ロイさんが言うように宝物庫なんて滅多な事では入れない。一般人には無縁、本来なら近付くことも許されないような場所だ。


 私達は厳重な警備の中を進み、見上げる程に大きくて見るからに堅固な扉の前に立った。殿下の指示で施錠が解かれる。そして重厚な音と共に、目の前の扉はゆっくりと開いていった。



「「「「おお」」」」



 思わず声が出た。


 扉から一歩踏み入れると、そこは思った以上に広かった。高い天井にどこまで続いていそうな奥行きのある空間。特徴的なのは立ち並ぶ棚だろう。並行していくつも棚が並び、そこが区切られて箱が納められている。宝物庫なんていうからすごくキラキラしいイメージをしていたんだけど、これは巨大倉庫と言った方が近いかもしれない。


 私達は珍しそうにあたりを見回しながら奥へと進んで行った。


 やがてしばらく行くとぽっかりと開けた空間に着き、そこには大きなテーブルと鏡が置いてあった。鏡はスタンド式で自立しており、どうも見覚えのある通信用の鏡によく似ているような気がした。


 ここは何だろう。そう思っていたら、殿下が鏡に手を当てた。


「管理人、探し物にきた」


 殿下が話すと鏡が一瞬光り、突然辺りに声が響いた。


「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」


 女性の声に聞こえるけど、これは一体……。


「面白いだろう? これで宝物庫の宝を探したり管理しているんだ」


 得意そうに殿下は言う。そしてこの宝物庫の使い方を説明してくれた。




「つまりこの鏡、いえ管理人さんに探したい物を言うとそれを探して持って来てくれるってこと?」


「そうだ」


 えー、なにその便利システム。とりあえずやってみる事にした。


 まず鏡に手を置く。


「えーと、防御系の身に着けるアイテムが欲しいんですけど……」


 こんな曖昧な感じで大丈夫だんだろうか。


「はい、かしこまりました。数点該当する物がございますのでお持ちします。少々お待ち下さい」


 大丈夫らしい。そしてしばらくするとあちこちでカタンカタンと音がして、なんといくつかの箱がふよふよと浮かびながらテーブルの上まで運ばれてきた。


 なにこの自動倉庫システム。音声だけでも驚いたけど、探して運んでくるとか。しかも箱、浮いてるし……。みんな感心して見てるけど、私は驚きすぎて呆れてしまった。


「こちらの七点が該当の品です」


 殿下に促されて私は箱のひとつを開けた。


 中に入っていたのは指輪だった。


「そちらは攻撃を反射する指輪です。ただし、使用制限が十回。現在二回使用されているので残り八回の使用が可能です」


 説明までしてくれた。一応エミール君に鑑定してもらったら管理人さんの言った通りの内容だった。なので管理人さんも鑑定が出来るのかなと思ったらそうではないらしい。


「私がお答え出来るのは、この品がここへ納められた際に記録された内容だけです」


 なるほど。


 他の箱も確認してみたところ指輪以外に腕輪がやネックレスなど形状や性能の違うアイテムが揃っていた。


 私はその中で一番強力で使用制限のない腕輪を選ぶことにしたんだけど、アルクが言うには見覚えがあるそうで、どうやら以前言っていたダンジョンで見つけたけどあげてしまったという腕輪だと判明した。まさかここで出会えるとは思わなかったのでびっくりだ。


 いやしかしさ、こういうアイテムがあるなら王妃様とか使えばいいのにってちょっと思うんだけど、その辺どうなんだろう。


 疑問に思って聞いてみたらこの腕輪、身に着けていると常に神力を消費するらしい。腕輪だけじゃなくてダンジョンのアイテムは皆同じような仕様らしく、常に携帯したり身に着けるというのはそれだけで結構体に負担になるのだそうだ。


 私が以前着けていた腕輪もそうだったらしいけど、私は特に何も感じなかった。それを言ったら「それはリカ様の神力が豊富だからですよ」だって。


 ちなみにダンジョンアイテムではない品もあるけど、逆にそちらの方がエネルギー効率が悪いようで余計に力を消費するとの事だった。それは使うのが大変そうだと思う。


 まあそのあたりの事情はともかく、ついに頼れる防御力をげっとだ。


 これでちょっと安心、かな?





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