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 二十二階層の探索は、殿下とダンジョンへ行った後もみんなで進めていた。さすがに事件の調査中は行けなかったけど、犯人が捕まってからはお城の人達が動いていたので時間が空き、私達はダンジョン探索に向かった。おかげでだいぶ先に進めた、と思う。


 ダンジョンはどこも進捗具合が分かりずらいんだよね。この階段だらけの空間ももちろんそうなんだけど、最初はすごく分岐が多かったりループしている場所なんかもあって、自分たちが何処へ向かっているか、進んでいるのかさえ分からなかった。


 だけど時間を掛けて探索する内に徐々に階段が絞られ集約されてきているように思え、それはみんなも同じように感じたらしい。なので確実に進んでいるのでは、と考えている。


 さらに魔物の数が増してきた。ただ強さが増しているかどうかについてはよく分からない。みんながさっさと倒してしまうので素人の私には判断不能なのだ。


 私はなるべく安全そうな場所でみんなが戦う姿を見学していた。そしてヒナちゃんなんだけど、最初は私と一緒に見学していたのに途中からうずうずしだして「あたしも行ってくる!」と、止める間もなく飛び出していってしまった。


 私はもちろん慌てたし心配したよ。騎士達と実戦形式で戦っていたとか身体強化してたと聞いていたので大丈夫だろうとは思っていたけど一応ね。まあ杞憂だったのは言うまでもない。


 ヒナちゃんはドッカンドッカン、殴りまくりの蹴りまくり。文字通り魔物を蹴散らしていった。なんかね、見てると魔物の体がヒナちゃんの打ち込んだ拳とかで大きくへこむのよ。で、吹っ飛ぶ。あれって感触とか嫌じゃないのかなぁって思うんだけど、どうなんだろうね。


 一方、飛び入り参加の騎士団長は苦戦していた。階段や回廊が横断するこの場所では、どうも大剣は振りにくいようだ。


「戦いにくい」


 そう言っていつもの刃を飛ばすんだけど、階段まで破壊してみんなに文句を言われていた。確かに足場壊しちゃ駄目だと思う。


 逆に機動力のあるマリーエさんやヒナちゃんは周囲の柱とか横の回廊や階段を蹴って空中で方向を変えたりしながら器用に戦っている。あと魔物への攻撃の反動を使ったりとかすごく上手いんだよ。なんだか滞空時間が長く見えるから不思議だ。


 エミール君は接近してくる魔物を確実に仕留め、ロイさんは珍しく短い弓を使っていた。本人曰く「せっかくなので色々と武器を試しておこうと思いまして」だそうだ。あとアルクは私の後方から周囲に気を配って攻撃や支援をしている。連携とれてるね。


 そして相変わらず私の出番はなかった。



 それでですね、進んでいくうちに塔がいくつか見えてきた。今までは階段や柱などが入り組んで見えにくかったのが、上層へ行くにつれ視界が開けてきたのだ。最初は上へ下へと行き先も不明だったけど、どうやらあの辺りが目的地らしい。


 塔は大きさや形が少しずつ違うようだった。そして塔の頂上に向けて階段が続いているのが見えた。どうやらこの先に踊り場があり、そこから分かれてそれぞれの塔へ行けるようになっているらしい。


 さて、ここで問題だ。


 どの塔に進むか?


 私達は全員で集まり話し合った。


「どれにする?」


「一番手前でいいんじゃないか?」


「でも、奥の方が塔が大きそうですよ」


「大きさで何が違うんでしょう?」


「うーん、全部端から確認ですかねぇ」


「真ん中が良いと思うー」


 結局、まずは一番手前の塔に行ってみることに決まった。いちいち戻るのは面倒なので分岐の踊り場で扉を登録しておくことも忘れない。


 そして一番手前の塔に向かって進み続けることしばらく。見えていたので近いような気がしていたけど、これが意外に遠く、近付いていくと塔はかなり巨大だった。しかも頂上近くに向かっているので、階段の両端から下を覗くとものすごい高さがあった。もともと地上部分なんて塔に向かう前からとっくに見えなくなっていたけど、そこからまた一段と高さが増していた。


「落ちたらと思うとぞっとしますね」


 うん、それは怖い。


「騎士団長、階段壊さないで下さいね」


「な、そんな真似はせんぞ」


 そう言うけど、さっき実際やってたし、またやりそうだから怖いんだよ。


 そうしてわいわい、騎士団長はぶつぶつ言いながら進んでいくと、やがて塔の入り口に到着した。入り口が地上じゃなくて最上階なのは面白いよね。


 扉はなく、そのまま中に入るとそこはドーム状の空間だった。そして何より目を引いたのが中央にある宝箱だ。


 この階層では実はいくつか宝箱を見つけていて、中には宝石や薬草などが入っていた。だけどみんな宝石とかにはまったく興味を示さないんだよね。「なんだ宝石か」って残念がるほどだ。逆に武器とかだとすごく盛り上がるんだけど、これがなかなか出ない。私は便利アイテムとか出ないかなって期待してるんだけどねぇ。


 あと今回初めて出た根っこ付きの薬草が新種だと分かり、こちらはロイさんが「ぜひ譲って下さい!」と大興奮していた。もちろん他の人の了承を得られたので渡す予定だけど、研究するんだってロイさんはすごくご機嫌だった。楽しそうで何よりだ。


 さて、何はともあれこの部屋にある宝箱だ。


「おう、開けようぜ」


 騎士団長さんがそう言って中央に向かってずんずん歩いていき、私達もそれに続いた。


 こんな特別な場所にある宝箱だ。期待が高まる。


 みんなが見守る中、代表してエミール君が宝箱の蓋に手を掛け開けていく。




 すると次の瞬間、足元の床が消えた――





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