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「しかし側妃だ正妃だって、お兄様が受け入れるはずないのに、よくまあ毎回そんな事を言い出す者がいるものよね」


「それだけ陛下の在位を望まれる方が多いということですわ」


「逆効果よ、恐らくそんなことになったらさっさとアレクシス様に譲位すると思うわ」


 あんな、と言ってはあれだけど、陛下はとっても人気のある王様らしい。


 親しい人の前ではヘタレだけど、臣下の前ではしっかり威厳のある王様であり、あの力を使って周辺国からも恐れられる存在なんだとか。おかげでこの国は、ちょっかいは掛けられるものの戦争と呼べるような大きな戦いからは近年遠ざかっており、一部を除いて平和を望む人々に強く支持されているらしい。


 なのでその陛下の治世が続くようにと、ミランダ様の不調に不安を抱いた周囲が王の支えとなる王妃や側妃をと言いだしたらしいのだ。ミランダ様が嫌われてるとかではなく、陛下の為にってことが大きいんだって。実際にこんなに長くミランダ様は政務が出来なかった訳だし、本当に廃されてもおかしくない状況ではあったようだ。


 ああ、だけどミランダ様に陛下の浮気をささやいた人物についてはどうなんだろう。エルンスト殿下が調べるって言ってたけど、これも陛下の為? 私には悪意にしか思えないって言ったら、「城の中では思惑が渦巻いてるのよ」ってマルティナ様は意味ありげに笑ってた。うん、怖い。


「何にしても当代陛下の人気は高いのよ。しかも初代様の再来なんてことまで言われてるでしょう、お兄様も大変よね」


「即位はまだ先になりそうですが、陛下と比べられるのは気が重いとアレクシス様がおっしゃっていましたわ」


 ふーん。陛下何気にすごいんだなと感心する。でもそれより気になる単語があった。


「その初代様って誰ですか?」


「あら、リカ様はご存じない?」


「知らないです」


 初めて聞いたと思う。


「初代様はこの国、フランメルを興した人物ですわ」


「ベルスベディア・フランメル、最初の王。初代様はそれはそれは不思議な力を使ったそうよ。そして人々を導き国を作り、その在位は長くて百年とも二百年ともいわれる伝説の人物ね」


「え、人間ですかその人?」


 思わず聞いてしまった。


「神が遣わした御使い様、と言われているわね。とても謎の多い人物なのよ」


 ふふっとマルティナ様は笑う。


「この国を作った御使い様達の一人とされていて、初代様はいつまでも若く歳を取らなかったんですって」


「陛下はこの初代様の血を濃く受け継いだと言われています。強い力や衰えないその容姿に、初代様の再来ではないかと騒がれていますわ。陛下が支持される最大の理由です」


 衰えない容姿。なるほど、若いなぁって思ってたけど初代様の血がそうさせてるってことか。


「あの若さは異常よねぇ。ほんと、羨ましいったら」


 いや十分にマルティナ様も若いと思いますよって言ったら素敵な笑顔で「ありがとう」って返された。


「お肌がとてもお綺麗なんですよねぇ、陛下」


 頬に手をやり、しみじみといった調子で呟くラビニア様。


「そうなのよ、ミランダもあんなのと一緒だと大変だと思うわ」


 大きく頷くマルティナ様。だけどそれって大変というより辛いんじゃないかなって思う。いつまでも若くて綺麗な陛下と並ぶって相当ストレス貯まりそうだ。


 痛みで歪んだ顔を見せたくないってずっとベールをかぶっていたミランダ様。うん、今度ポーション美容液をいっぱい渡してあげよう。



 しかし初代様か。なかなか興味深い存在だと思うし、これってまさしく建国神話だよね。在位百年、いや二百年だっけ? この世界だと本当にあり得そうだから凄いよねぇ。


 マルティナ様はもっと詳しく知りたければ城の図書室に初代様について書かれた本が沢山あるというので今度見てみようと思う。すごく面白そうだ。



 とりあえず私は二人から解放してもらえ、やっと家に帰ることができた。色々話が聞けたのは面白かったけど、やっぱりあの二人のグイグイ来る感じはちょっと疲れるし苦手だなって思う。


 今まで私の周りにいなかったタイプというか、でも別に嫌ではないんだよ。もちろん二人が気持ちの良い人達だからっていうのもあるけど、私も少し変わったかなと思う。


 なんていうか、学生の時や社会人になってからも、どこか人と接するのを避けていたと今更に思う。だけどこの世界に来て、たくさんの人と話して、接して。人と関わることは決して怖くないし、楽しいって思えるようになってきた。


 これってさ、きっといいこと、だよね? 




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