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 そもそも王妃様の引きこもりの理由はなんだろう。


 体調が悪いとか病気だとかいうことはないんだろうか。


「確かに最初の頃は体調不良を訴えられる事もあったようです。ですが徐々に主治医も遠ざけるようになってしまわれて……ご病気かどうかも判断が出来ません」


 先日会った時はベールで顔色も分からなかったけど、具合が悪いようには見えなかった。まあ、あれだけじゃ判断は難しいか。しかし王妃様って国の重要人物でしょう。いくら本人が人を近付けようとしないからってそれで済むんだろうか。


「陛下がそっとしておいてやれと、そうおっしゃったんです。陛下は王妃様の事を本当に心配されていて、とても心を痛めていらっしゃいます。ただ、最近ではもうあきらめていらっしゃるご様子もあって……」


「お兄様はね、あの子に拒絶されたことが相当堪えているのよ。あの二人こそ、政略と言いながら両想いの恋愛結婚だったんだから。だけどお互い奥手だったから、もうもどかしくてもどかしくて。私や周りがどれだけ気を揉んだことか。まったく、あの時は本当に大変だったのよ。だけど二人ともとても幸せそうで……」


 大変だったと言いながら懐かしそうに話されるマルティナ様。その様子からは二人の事が大好きなんだろうなって思いが伝わってくる。変わってしまった親友や悲しむ兄の姿に、この人も深く心を痛めているんだろう。


 そしてお世話になった王妃様に何もしてあげられないと自分の無力を嘆き、私に力を貸して欲しいと願うラビニア様。


 二人の王妃様を思う気持ちは痛いくらいに伝わってくるよ。このままだと王妃様の立場が危うく後がないってこともなんとなく分かった。だけどさ、どうして私がどうにか出来ると思うんだろうね。何の根拠があって私が助けられると思うのか、そもそもそこがすごく不思議なんだけど。


「それはリカ様だからですわ」


 うん?


「あのね、王家は誰もが賢者様へ大きな信頼と尊敬の念を抱いているのはご存じ? 私は小さい頃から賢者様のお話をそれは沢山聞いて育ったものよ。賢者様はどんな時も私達に真摯に向き合って下さった。いつも話を聞いて助言や知恵を授け、目指すべき道を示して下さったと。賢者様にまつわるお話や伝説はそこかしこに残っているし今でも語り継がれているの」


 相変わらずの賢者様へのリスペクトが凄い。でもね、私は本人じゃないのよ。


「その賢者様のお孫様が現れたというだけでも大事件なのに、カランに潜伏していた盗賊やイーガンを捕えるのに一役買ったとか、あわや大惨事となり得た事件を防いだり、新しい文化をもたらしたりと活躍していらっしゃる。さすがは賢者様のお孫様とそれはもう大騒ぎよ。そして私達が思い悩み、既に残された時間もないまさにこの時にリカ様はここへいらした。どうしてもこれを天の采配と考えずにいられないのよ。リカ様、どうか私達に道をお示し下さい。リカ様に縋るしかない私達をどうかお救い下さいませ」


 二人の祈るような視線が超重い。


 相変わらず賢者様ブランドへの信頼が厚過ぎると思う。本人でもないのにどうしてここまでと思わずにいられないんだけど……。まあ藁にも縋る思いってことなんだろう。私がどうこう出来るかはともかく、現状を打破したいとか動かしたいとか。つまり何かきっかけが欲しいってことなんだろうなと思う。


 うーん、だけど陛下があきらめてるような状況で勝手に動くのもどうかと思うんだよねぇ。完全にこの二人の独断ってことでしょう、このお願いは。いいのかなぁ、陛下は何か知っているとかそういう可能性もあるんじゃないかなと思ったりする。もし夫婦間のあれこれが原因というなら私は完全に役立たずだ。首を突っ込める程の人生経験がある訳じゃないし。


 私としては先日の王妃様の様子は気になるけど、そもそも王族案件なんて一番遠慮したいものなんだよね。


 だけど……ちらっと横の二人に目をやると、縋るような視線で見つめてくる。


 私、自分の実力は分かってるつもりだしこんな難題を解決できるとは思ってないんだよ。だから引き受けたりとか本当はしたくない。したくないけど、でも……これってどう考えてもお断り出来るような雰囲気じゃないんだよねぇ。逃がしてもらえそうにないんだけど……。



 ――はぁっ


「えーと、そんなに期待されても困るんですが、話はしてみようと思います。ただ、王妃様が会ってくれるかどうかも分からないし、会えたとしてもそれで王妃様が以前のように戻るかどうかなんて分かりません。私には何もお約束は出来ませんが、それでもよろしいですか?」


 このタイミングで城を訪れたのも何かの縁ってことなのかなぁと、一応協力する姿勢は見せた。だけど、もしかしたら二人が望むものとは違う結果になるかもしれないし、何も変わらないかもしれないと、そこは十分に理解しておいてもらいたいと思う。後から話が違うとか言われても困るし、そこは念押しして伝えておく。


 二人はブンブンと首を縦に振って頷き、「リカ様ありがとう、ありがとう」と何度もお礼を言われた。


 いやだからね、解決が約束された訳でもなんでもないんで、あんまり喜ばないで。これでもう任せておけば大丈夫的な空気止めて下さいってば。本気で困るー。




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