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 気持ちがざわざわして落ち着かない。


 困ったなぁ。


 それに早く家を出てきてしまったので花ちゃんとの約束までかなり時間がある。


 一度実家に行こうかとも考えたけど、今は誰とも会いたくなくて一人でコーヒーでも飲むことにした。


 この辺りにお店がないことは分かっていたので商業施設へ向かう。


 平日ということもあって駐車場はとても空いていた。出入口に近そうな場所に車を停める。


 何度か来たことはあるけれど飲食店は使ったことがないので場所が分からず、なので案内を見て一番近そうなお店に入ることにした。


 辿り着いたお店は落ち着いた雰囲気でお客さんもまばらだった。これならゆっくり出来そうだ。


「いらっしゃいませ」


 男の店員さんが笑顔で迎えてくれた。


 カウンターで先に注文をする形式らしい。何にしようか……そういえばシフォンケーキを食べたけどお昼がまだだったと気付き、カフェラテとサンドイッチを注文した。


「カフェラテはアイスとホットどちらになさいますか?」


「ホットで」


「はい、ではお席にお持ちしますので少々お待ちください」


 支払いを済ませ、可愛い木製の番号札をもらって奥の席に座った。


 うん、何もしていないのにすごく疲れてる気がする。


 しばらくぼーっとしていたらしい。気が付いたら店員さんが注文の品を持って側に立っていた。


「お待たせ致しました」


 そう言ってトレイをテーブルに置いてくれた。だけど番号札を回収して戻ると思ったら店員さんに声を掛けられた。


「大丈夫ですか?」


「え?」


 突然の事で驚いて顔を上げたら、店員さんが心配そうな顔をしていた。


「あ、すいません。なんだかお客様が沈んだ顔をされていたのでつい……失礼しました」


 そう言って店員さんは少し慌てて戻って行ってしまった。


 私、そんなにひどい顔をしているんだろうか……。


 思わず顔に手をやり、ほっぺたをぐにぐにしてしまう。


「はぁっ……」


 駄目だなぁ、私。


 動揺し過ぎだよね。アルクが隠し事していたくらいで何をそんなに落ち込んでるんだろう。私だって言ってないことや言いたくないことくらいあるし、アルクだって同じだろうに。


 うん、気持ちを切り替えよう。


 カフェラテは可愛いラテアートがしてあってちょっとほっこりした。


 サンドイッチをゆっくり食べて、たっぷり一時間くらいはそこでゆっくりできた。


 こうやって一人で居る時間って久しぶりかもしれない。前は一人で居ることなんて当たり前だったのになぁって思うとすごく不思議な感じだ。


 うん、栄養補給もしたし、少し元気が出た気がする。


 私は店員さんに「ラテアート可愛かったです」とお礼を言ったら「またお待ちしています」って、にっこり笑顔で見送ってくれた。



 その後は実家と花ちゃんへお土産のお菓子を買い、本屋さんをのぞいたり洋服を見たりとフラフラして時間を潰した。みんなで撮った写真をプリントしたりもしたよ。写真立ても見ていこうかな。


 そして程よく時間が経った頃に花ちゃんとの約束のお店に向かった。



 お店は一軒家の新しい建物で、最近出来たイタリアンのお店だそうだ。


 入り口の青い扉が人目を引く。


 少し早かったので駐車場で待っていたら花ちゃんがやってきた。私の車に気が付いて手を振ってくれる。相変わらず可愛いなぁ。


 二人して久しぶりの再会を喜びながらお店に入った。


 お店の中は落ち着いた雰囲気で、気取らな過ぎずリラックスできる素敵なお店だった。


 二人でアラカルトかコースかで迷い、この日はコースで頼むことにした。そしてメニューを置いた所で花ちゃんに思わぬことを言われた。


「里香ちゃん綺麗になったね」


「え、どうしたの急に?」


「だって髪型とか少し変わっていい感じだし、お肌綺麗だし、なんとなく雰囲気も違うと言うか……」


 そういえば、パーティーの時にメイドさん達に髪を少し切っていいかとか聞かれたんだよね。全部お任せしたんだけど、おさまりも良くて気に入っている。


 あと全身エステで色々整えてもらったし、ポーション製の美溶液のおかげでお肌はコンディション抜群だった。おお、私って今、結構いい感じなのでは。


 でも雰囲気が違うってどういうことだろう?


「うーん、なんて言っていいのか分からないけど、ちょっと大人っぽくなったっていうか、落ち着きが出た感じ?」


 自分ではまったく分からないど、大人っぽいとか言われるのはちょっと嬉しい。


 私達は美味しい食事を食べながらお互いの近況などを話し、楽しい時間を過ごした。手長海老のトマトクリームパスタうまっ。


 あと食事の途中でお土産のお菓子も渡したよ。以前約束した猫の置物は、諸事情で渡せなくなってしまったと謝ったら笑って許してくれて、花ちゃんからは旅行のお土産をもらった。


 でね、またしても言われちゃったんだよねぇ。


「それで、どうしたの? なんだか沈んだ顔してる」


「……私、そんなに顔に出てる?」


「出てる」


 即答だった。


 さっきの店員さんといい花ちゃんといい鋭すぎでは?


 いや、私が顔に出し過ぎなんだろうか。そういえば殿下にも言われたっけ。


「何か悩み事? 話せることだったら聞くよ。話すことで少しは気持ちが楽になるかもしれないし、何か力になれることなら協力するし」


 花ちゃんが頼もしい。


 優しい笑顔に心が揺れる。どうしよう、話してもいいのかな。


 話したらこのモヤモヤする気持ちがすっきりするだろうか……。




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