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「マリーエに水上での戦いや武器などについて聞かれた。地上と違い飛び道具が有効だからな。ならば私が行くのが一番だろう」


 はっはっはって。


 横ではマリーエさんがすごく困った顔をしている。


 いや別にね、戦力が増えるのは構わないしありがたいよ。本人がちょっと暑苦しいのが問題なだけで。


 でも騎士団長さんってそんなに暇なのって思ってしまう。


 私になんか付き合って一緒にダンジョンに行くとかいいんだろうか……


「ふむ、ガイルの、いやメルドランの要人を守るのは騎士団長として優先すべき仕事だな」


 ニカってまたいい笑顔で笑ってるし帰る気はなさそうだ。


 マリーエさんによると騎士団長さんにはダンジョン探索の様子なども報告しているそうで、以前から自分も行きたいと言っていたんだとか。戦力としては申し分ない。それに私の力の事も知っている。


 ……考えてみると知ってる人増えたし結構いるよね。



 まあそんな感じで断る理由もないし、本人もやる気なので六人でダンジョンへ向かうことになった。


 なんか同行者が増える一方だなー。



     ◇



 今日は二十階層、水辺からのスタートだ。


 扉を使った移動に騎士団長は「ほぉ、これが」と意外に静かな反応だった。


 収納鞄からボートを取り出す。小さな鞄から大きなボートが「うにょんっ」と出てくる様子はやっぱりとても不思議な光景だった。


 騎士団長も珍しそうに眺めていて「遠征の時にいいな」なんて呟いていた。収納鞄は便利だよー。


 私達は三隻のボートの船首部分をロープで繋ぎ、一列になって水面を進んでいった。


 先頭に騎士団長とマリーエさん、真ん中にアルクと私、最後はエミール君とロイさんだ。オールで漕いでるんだけど騎士団長の馬力が凄くて結構な勢いで進む。


 方角は相談の結果、やはり真っ直ぐ進んでみることになった。真っ直ぐがどっちかなんて私には全然分からないけどね。そして何か見つかれば、またその時に臨機応変にいくつもりでいる。そこ、行き当たりばったりとか言わないように。


 そういえばアルクは空を飛べるんだよね。精霊体になるとふよふよ浮けるのを思い出して、私は「ちょっと先の方まで見てきて」ってお願いした。でもそうしたらね、この状態のアルクを初めて見たみんなの目が驚きでまん丸になった。


「精霊様……」


 マリーエさんとエミール君の目は輝いていた。


 ちなみに、精霊体だと空を飛べるし姿を消したり出来るけど戦えないのだそうだ。理由は分からないけど万能ではない所がアルクらしい気もする。アルクは技は色々使えるし応用も効くけど戦闘力という点ではダンジョンの剣を持つマリーエさんの方が強いんだよね。


 しばらくしてアルクは戻って来たけど何もなかったそうだ。一面水だったって。これはまた次に進むまで時間が掛かりそうだ。


 そういえばここの水は淡水らしい。触ると溶けちゃうとかだと落ちた時に怖過ぎるし、出発前に一応調べたんだけど特に変わったところはないようだった。魚とかいるんだろうか。


 この先に何があるのか、そんな事を思いながら進んで行くとやがて少しずつ魔物が出始めた。


 最初はね、綺麗な魚がいっぱいいるなって思ったんだよ。青とか黄色とか、小さな魚が群れをなしてボートの周りを泳ぐ姿が見えたのだ。


 私は何気なく水面に手を伸ばしたんだけどアルクに止められた。アルクは首を振って駄目だと言う。


 何だろうと思ったんだけど、後ろのロイさんが銛のような物で少し離れた水面をちょんって突いたのね。そうしたら……


 ザバザバザバーってその場所にさっきの魚が群がって水面が泡立った。飛び上がってる魚もいて、良く見ると鋭い歯が見えた。


 あっぶなー。


「何あれ」


「恐らくアレも魔物でしょう。無暗に手を出すと食われますよ」


 ……そういうのは早く言って欲しい。



 先に進むにつれて魚型魔物が大きくなってきた。


 でね、ジャンプするのよ。頭上を飛び越えてざっぱんざっぱん。


 手どころかそのうち頭ごとパクンと食べられそうだ。


 杖や腕輪があるし、危険そうな魔物はみんなが切ってくれているから大丈夫だと思うけど、やっぱり逃げ場がないのは非常に怖い。


 それで私もどうにか攻撃出来ないかなーって考えていてひらめいたのだ。


「ねえ、こうやって攻撃すればよくない?」


 私は杖を掲げて力を込めると水面に突っ込んだ。


 瞬間バチバチバチイッと音を立てて水面に稲妻が広がり、やがてそこら中にプカプカと魔物が浮いてくる。


 おお、なかなか凄くない?


 やっとまともに攻撃出来たと思ったんだけど……めちゃくちゃ怒られた。


 いきなりは駄目だって。みんな無事だったけど被害が出る可能性があるから気を付けるように注意されまった。


 そりゃそうだよね、ごめんなさい……。


 あ、でもね、威力は抑えめにしたんだよ……って、はい、反省してます。


 だけどロイさんだけは嬉しそうに私の事を誉めてくれた。「次はもっと威力上げていきましょう」だって。


 まあ一応、杖の有用性は認めてもらえた。あんまり深い所には届かないようだけど、水面近くにいた魔物は一掃できたようだしなかなかの威力ではあった。エミール君が弓とか持ってきていたけど矢の数に限りもあるしで割とその後も杖は活躍した。


 あと騎士団長が例の飛ぶ刃を繰り出しては「うりゃー、そりゃー」と吠えたり、マリーエさんが空中戦をしたりと順調に進むことが出来た。


 ただ結局、その日は陸も何も見つけられずに探索を終えることになった。やはり先は長そうだ。


 それでね、帰る為に扉を出したんだけど、ボートの上ってなかなか不安定な場所だよね。それによく考えたらボートは放置することになるって今更だけど気が付いたんだよ。


 これってさ、次に来た時にボートがひっくり返っていたりしたらどうなるんだろうねぇ……。





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