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新しいキッチンはなかなか良い感じだ。
今まで料理は日本ですることがほとんどだったけど、今度からこちらでもしっかり調理が出来るようになった。
コンロの口数は五つもあるので並行して鍋が使えてすごく便利。冷蔵庫はあまり大きくなくて良いということでカウンター下に設置したしオーブンもあるよ。
それから今までなかった背面にも作業台を作ったのでカウンター自体を少し前に移動した。全体的にキッチンが拡張して広々と使いやすくなり、アルクと二人で作業してもゆとりがあって快適だ。
さっそくストックしていた食材で作り置きも沢山作ったし、アルクもお菓子作りを楽しそうにしている。
カウンター部分も大きくしたし、工事中に使っていた大きなテーブルもそのまま使うことにしたので最近増えてきた訪問客にも十分対応可能になった。体格のいい人もいるので余裕があるのはいいことだよね。
木材を多く使っているので今までの雰囲気は壊していないし、とても満足のいく仕上がりになったと思う。親方とペルルさんに感謝だね!
二人は私のご飯が食べられなくなるのが辛いと言われたけど、遊びに来て下さいねと言ったら喜んでいた。
あーあ、日本の家のキッチンも改装したいかも。頼んじゃおうかなぁ。
そういえば費用なんだけど、ロイさんが支払い済みだって言う。ちゃんと見積もりも聞いていたし払うつもりだったのに「必要経費ですから」って。
なにそれって思ったし殿下に借りを作るみたいですごく嫌なんだけど……。
また色々言われそうだなぁ。
◇
さて、久々にダンジョンです。
事件はまだ完全に処理が終わった訳ではないそうだけど、粗方取り調べなども終わっているそうだ。エミール君は常駐する必要はなくなって今後は定期的に報告を受ける立場らしいし、マリーエさんも護衛に復帰した。
あと何故かロイさんもまだこちらに居る。もう任務完了ではと思ったんだけど、それを言ったら「冷たい」って泣かれた。メンドクサイので放ってあるけど本来のお仕事は大丈夫なんだろうか。
一応日常が戻ってきたということで今日はみんなでダンジョンに行くことになった。
……あれ、日常がダンジョン探索って良く考えるとおかしい……?
実は探索をお休みする直前に十九階層まで探索は進んでいたんだよね。そろそろ目標の二十階層が近く、みんな再開を待ち望んでいた。
私はあの事件があって魔物との戦いとか嫌じゃないのかなと思ったけど、みんな特にそういう感情はないらしい。逆にもっと強くなりたいので修行の意味も含めてダンジョンに行きたいのだそうだ。実践がいいんだって。
私としてはあんな危機迫る感じでなければ別に構わないし、未踏のダンジョンがどんな所か興味があるのでまあいいかって感じだ。あ、だけど戦いたいとかは思わないよ、というかもう絶対嫌、無理。
とういことで、久しぶりのダンジョンに私とアルク以外はちょっとテンション高めで突入し、みんな肩慣らしと言いながらバッサバッサと魔物を撃破していった。もしかしてストレス溜まってる?
おかげでサクサクと進み、なんと十九階層を早々にクリア出来ました~!
そしていよいよ次が二十階層!!
みんなワクワクしながら階段を下り、足を踏み入れたんだけど……なんかね、今までとだいぶ様子が違うんだよねぇ。
そこは通路じゃなくてすごく開けた場所だった。しかも先の方には木々が生い茂っていてその先は見えない。そう、木だよ。ダンジョンなのに木が生えてる。
一瞬、今までと景色があまりにも違い過ぎて外に出たのかと思ってしまったくらいだった。だけど振り返ると降りてきた階段があるし、ここは確かに二十階層で間違いないらしい。ダンジョンってやっぱり変。
唯一の経験者であるアルクに、あの先は何があるのかを聞いてみた。
「しばらく森が続く」
森……。
「森の先は?」
「水がある」
「え、水?」
「ジローはそこで引き返した」
ほぉ。水って何だろう。
相変わらずアルクの説明は端的だなあと思いながらも「行けば分かる」の言葉に私達は進むことにした。
マリーエさんやエミール君が確認したダンジョンの情報でも、二十階層の情報はあまり詳しく書かれていなかったらしい。
本当はもっとちゃんと聞いて準備とかした方が効率的だけど、別に急いでいる訳じゃないしね。危険だったらアルクは言うだろうし、この先がどうなっているかを想像を膨らませながら進むことにした。
アルクは森の先に水があると言ったけど、ここまでの階層に水のある場所なんてどこにもなかった。あれば冒険者にとっては非常に助かるだろうけど、こんな深い階層に水があっても役には立たないよね。この辺は親切設計にはなってないんだなぁと思う。
さて、アルクの言う通り、しばらく森が続いた。大きな木々がうっそうと茂っているんだけど、奥へ進むにつれて違和感を感じるようになった。
何だろうと思っていたら、なんと周りの木々が段々と大きくなっていたのだ。
だいぶ奥まで進むと木の幹が何十メートルもありそうな巨木がそびえ立つようになり、その様子にはただ圧倒され、何だか私達が縮んだような錯覚に陥った。
本当にここってダンジョンの中?
「地下とは到底思えないんだけど……」
思わず呟いたらロイさんが同意してきた。
「確かに。もしかしたらどこか異界かもしれませんね」
そんなことを言われて、ああ確かにとちょっと納得してしまった。異界の入り口を開くアイテムがあるんだし、あり得なくはないかなと。実際どうなのかは分からないし、確かめようがないけどね。
だけどもしあの時みたいな凶悪な魔物がいたらヤバイよね。その時は速攻で逃げようと慎重に進みはしたんだけど、結局今までと同レベルくらいの魔物が出るだけで、心配したような魔物は出てこなかった。
ただ大きさがねぇ。周りの木々の巨大化に合わせて魔物も大きくなって、見た目の迫力が倍増だった。もはや怪獣だよね。怖いし気持ち悪いしで私はキャーキャー言ってたけど、怖がっていたのは私だけで、みんなサクサク倒しまくっていたけどね。
お昼休憩にはエミール君のリクエストでカレーを食べ、午後も探索を続けてその日は森の中で探索終了になった。
うん、久々によく歩いた!




