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 さて、明日はいよいよボーグ家での結婚発表パーティーだ。


 色々準備はしてきたけど、本番がどうなるかの不安は大きい。


 ロイさんはここの所一人で別行動を取っている。あまり私達と一緒に居る所を見られたくないとも言っていて、しばらくは外で会っても他人の振りでお願いしますと言われていた。しっかり仕事してくれているようでなによりだ。


 そしてエミール君とリリーナさんの二人は親睦を深めようと日々頑張っている。なにせ仮とはいえ婚約者の振りをするのだから、それなりに親し気にしなければ疑われてしまうよね、ということだったんだけど……。


 エミール君が領主様のご子息と知って気絶したというリリーナさん。その後もエミール君の顔をまともに見れなかったりとちょっと計画に支障が出そうな状態だったけど、なんとか慣れて一緒にお茶をしたり話をしたり、ダンスの練習まで出来るようになったんだから凄い進歩だと思う。


 まあリリーナさんは相変わらず恥ずかしそうにしているけれど、それが初々しくて可愛らしくもあるし、エミール君は一生懸命リリーナさんが打ち解けてくれるように話しかけていて、あのルーチェに塩対応していた時とは大違いだった。


 最近は恋愛結婚も増えてきたけど、やはり家格が近い家同士の結婚が貴族としては受け入れられやすく望ましいそうだ。デイルズ家ならエミール君と婚約してもおかしくない家格だそうだし、二人を見てるといっそ本当に婚約してしまったらなんて思ってしまう程には良い雰囲気だった。うん、お似合いじゃない?


 一応設定としては二人は以前からの知り合いで、契約前から婚約していたけれどエミール君の事情であまり公にはしていなかった、ということになっている。まあボーグ家に事前に知られない為とパーティー後の二人の立場を考えてのこともあるんだけど、上手くいくかなぁ。



 マリーエさんは最近はよく実家に帰っている。妹さんを含めご家族と色々話しをしているとのことで、お互いが何を思っているか、考えているかを改めて知る良い機会になったと言っていた。言葉は大事だよね。


 実は私もマリーエさんの家は何度か訪問していたりする。パーティー用の衣装がいるってことで、既に私の分は注文されていたんだけど、その試着などで仕立て屋さんがデイルズ家に来て調整とか色々してくれたんだよ。


 こういう家に呼びつけて何かするっていうのは貴族の中では普通のことみたい。マリーエさんは自然に対応してたから、こういう所を見ると彼女はやっぱり貴族のお嬢様なんだなって思う。


 デイルズ家は由緒ある家柄なのでお家も立派だったし、使用人も沢山いた。マリーエさんのご両親にはすごく感謝されて、最初に挨拶した時なんて私に跪こうとするからすごく焦ってしまった。


 なんとか止めてもらったけど、マリーエさんのお父さん、デイルズ家ご当主は「自分の失態でこんな事態を招いてしまい大変お恥ずかしい限りです。ですが家はともかく、娘達には幸せになってもらいたい。恐れ多いことですが、どうかお力をお貸し下さい」とそれはそれは深く頭を下げられた。


 やらかしたのは確かに失態だけど、娘さん達の事をとても大事にしていることは良く分かったし、少しお話もしたけどご両親とも穏やかでとても優しい人達だった。まだどうなるか分からないけど、デイルズ家の皆さんの為にも今回の作戦が上手くいって欲しいなぁと思う。


「失敗したらその時はその時で。ボーグ家なんて下級貴族、潰しちゃっても問題なしです」


 笑顔でロイさんが言っていたのはとりあえず内緒だ。



 えーとそれでですね、私の衣装なんだけど、前回カランで仕立てたものより装飾も多いし豪華な気がするのは気のせいなのか……。前のだってかなり良い生地にレースもあって高級感があったけど、これはさらにそれを上回っているように見えた。


 基本の形は変わらなくて下のワンピースと帯は今回は深い青色。上着は相変わらずの白で袖や裾にはレースが重ねられてボリュームがあり、全体には銀糸の刺繍が細かく施されている。


 白地に銀糸だからぱっと見は目立つわけじゃないんだけど、光に反射する様がとても綺麗だ。全部職人による手仕事だと思うと気が遠くなるし、価値なんて分からない私が見てもものすごくお高そうに見える。


 時間がないからかなり急いでもらってお金もかかったらしいけど「出資者がいるのでお金の心配は無用です」って言っていたエミール君の言葉には不安しかなかった。出資者って誰?


 アルクは私の恰好を見て「可愛い可愛い」ってにこにこ顔だし、マリーエさんとリリーナさんもすごく褒めてくれた。私としてはこんな豪華な衣装が必要なのかって疑問だし、気後れするばかりなんだけど……。


 パーティーなんて本当だったら行きたくないけど、マリーエさんのことや結果が気になるから出席はするつもりだ。だけどこれはさぁ。


「私、別に役どころないはずでしょう?」


 そう言ったんだけど、パーティーに出るならこの衣装は絶対必要なんだそうだ。なんでー?



 まあ私の事はともかく、今回の主役はマリーエさんだ。こちらの世界でのドレスって私の衣装みたいなものが基本らしいけど、日本とかでも見かけるタイプもない訳ではない。


 マリーエさんが試着していた衣装はマーメイドライン。しなやかな体の線を強調した女性らしさを前面に出したデザインで、背の高いマリーエさんにはぴったり。


 色はマリーエさんの髪に合わせた紺色で、すごく落ち着いた上品な色合いだ。色が白いから紺がとても映えるんだけど、残念ながら露出は少なく首元や肩や腕は隠されている。レースが多く使われていてとっても素敵なんだけどね。


 こちらの世界では肌を出すのはあまり良しとされていない。“はしたない”とか“慎みがない”なんて思われるそうだ。


 私の衣装はほぼ露出もないし体の線もあまり目立たないデザインでとてもありがたい。露出なんて私には絶対無理無理。




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