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買い物から帰った後、私はアルクさんにお礼を言ってその日はすぐにもとの世界に帰った。
戻ってしばらくは本当に異世界に行ってきたのかという不思議な気持ちと高揚感でいっぱいだった。実際に買ってきた物を見てもまだ信じられないよね。
台所へ行って食料品をしまってお茶を入れ、私は今日の思いがけない体験の余韻にしばらく浸った。
そのままぼーっとしていたら、疲れていたのか少しうとうとしてしまい、いつのまにか眠ってしまったようだ。気が付いたら外が暗くなっていたので驚いた。
お昼の量が多かったのに、ちゃんとお腹は空いていた。結構歩き回ったし、扉を使った影響とかもあるのかな。なのでさっそく、今日買ってきた食材で夕飯の用意をすることにした。
炊飯器を早炊きセット。今日のメインは買ってきた鶏肉だ。シンプルにソテーにしようと思う。
まずはお肉を開いてなるべく平らにする。厚みが均一だと火の通りが良くなるからね。ついでに脂肪も取り除く。終わったら両面に塩をふってしばらくなじませる。
この間にお湯を沸かして野菜の簡単スープを作っておく。うん、いい感じ。で、置いておいた鶏肉の余分な水分をふき取って、油をしいたフライパンに皮目を下にして入れ、中火で焼く。
この時、お肉の上にアルミホイルなどを敷いてその上に重い鍋や、なければ水を入れたポットなんかを乗せて重しをする。フライパンにお肉を押し付ける感じだ。
焼き色が付いたら裏返し、今度は重しなしで焼く。焼けたら取り出してしばらく置き、肉汁を落ち着かせてから食べやすい大きさにカット。焼いている間に用意したサラダを添えたお皿に盛り付ける。
ご飯は炊き立て、スープとブドウも器に盛って私はトレイを手にしてダイニングに移動した。焼きたての内に食べないとね。
うん、皮がパリッパリだ。味付けはシンプルに塩だけだけど、それがまたいい。鶏のうま味が感じられてとっても美味しい。サラダの葉物野菜や少しこぶりなトマトも新鮮で美味しかった。特に変わった味などはしなくて、みんな思った通りの味だったのも安心した。デザートのブドウも甘くて大満足。
結論、異世界食材はすっごく美味しかった。また買い物に行きたいし、色んな食材を試してみたいなと欲がむくむくしてきたよ。
でもそんなに頻繁に行ったらアルクさんも迷惑だよねぇ。
と、そんなことを思っていたんだけど……。
結局、ほぼ毎日あちらに通うことになりました。最初はね、私も遠慮していたんだよ? まだ有給消化中で会社に籍があるけど、こっちで職探しとかも一応しなきゃと思っていたし、多くないけど、それなりにやることも……あまりないけどね。
暇だったことは認めよう。だけどね、あっちに行ったらアルクさんが「ジローのお気に入りの店があるから行ってみよう」「あそこの景色が良いから行ってみよう」と色んな所に連れて行ってくれるんだよ。
最初は気を使ってくれているのかな、と思ったんだけど、すごく積極的に案内してくれるのが嬉しくてついつい甘えてしまいました。
市場にも何回か行ったよ。まだ見ていない場所にも行って、変わった食材なんかも買ってみた。一度行ったお店の人は私のことを覚えてくれていて仲良くなったりもした。
そうそう、お金の単位はベルという。何度か買い物したけれど、物価が日本と比べて高いのか安いのかは判断が難しい。この世界の初任給とかいくらくらいなんだろう。
この辺りは流通の便が良くて品物も豊富だから、他の地域と比べても値段は安定しているそう。近隣で栽培が盛んな野菜や米は安いけど果物は少し高め。あと、海が遠いから海産物もちょっと割高なんだって。
あとは食事。おじいちゃんが良く行っていたというお店は最初に行った食堂みたいに気軽な店が多かったんだけど、どこも食材の値段を考えると手頃な価格のお店が多かった。
で、最初に食べた「ウージ」。日本のウナギはすごく高いけど、こちらでは他のメニューと変わらない値段で食べられるのだ。これは嬉しい。
それから、この町の名前は「ガイル」というそうだ。国の名前は「フランメル」。王様が治める君主制で、王様の居る中央領と他五つの領で成り立っている。私が居るのはフランメル国の中でも南東に位置する「メルドラン」領だ。
メルドランは領主の居る領都を中心にいくつもの町が広がっている。中でも領都の北に位置するガイルは流通が盛んで商業が発達している為、領都に次ぐ第二の都なんて言われているらしい。
こんな感じで市場調査やこちらのことを色々聞いたりして楽しく過ごしていたんだけど、ある日、家にお客さんがやってきた。




