90話 おさかんですね
1月下旬、学校の試験休みを利用して、ぼくらは熱海に来ている。
恋人の里花と結ばれて、朝ご飯を食べた後。
「チェックアウトは10時だけど……それまでどうする?」
義妹のダリアがぼくにたずねてくる。
ぼくらは結構早く起きていた。現在8時半。
「特にすることもないし、お風呂でも入ろうかな」
「…………」
「里花?」
「ふぁ!? な、な、なに……?」
里花が顔を赤くして動揺していた。え、なんだろう……。
するとダリアが、にやにやと笑いながら、里花の肩を掴む。
「どうやらりかたんは、お兄ちゃんとやりたいそうですな~」
「ちょ! だ、ダリア……」
やりたい? なんだろう……。
里花は顔を赤くして肩をすぼめてる。……え? ま、まさか……。
つ、つまりその……ぼくと昨日やったことを、またってこと?
ダリアは正解だとばかりに、にまーっと笑って言う。
「女の子は思ってるよりも性欲が強いんですぜ、お兄ちゃん」
「え、え、そ、そうなの……?」
知らなかった。てっきり男の方が強いかと。
ダリアがふふふ、と笑って、里花の背中をぽんと押す。
つんのめる里花をぼくは正面から受け止めた。
どっどっど、と里花の鼓動がいつも以上に早かった。
これは……たぶん、ドキドキしてるってこと? 図星ってこと?
「里花……?」
「……しんちゃん。その……あたし……」
口ごもる里花が、かわいらしくて、思わずぼくは抱きしめてしまう。
昨日の、乱れた里花の姿を、また見たいと思ってしまい、反応してしまう。
あ、でもダリアは……。
「あーしはてきとーにホテルの周りぶらついてるから、その間はどーぞご自由に、お布団でいちゃいちゃしてくだせえ」
ひらひら、と手を振ってダリアがその場を後にする。
ぼくらが二人きりになれるよう、空気を読んでくれたんだろう。……ありがとう、ダリア。
「じゃあ……その、いこうか」
里花は恥ずかしそうにみじろいで、でも、しっかりとうなずいたのだった。




