77話 母、上田まこと
ぼくたちは熱海に旅行に来ている。
開田のじいさんの権力によって、ホテルでの高級料理を独り占めしている最中だ。
ふぐ刺しを食べた後も、ものすごい料理が続く。続いて出てきたのは松阪牛だ。
ぴろん♪
【通知 上田まこと】
「ん?」
「しんちゃんどうしたの? ライン?」
「うん。母さんから。ごはんなに食べてるのって?」
ふぐ刺しや松阪牛の写真をとって、母さんに送る。
母さんからニコニコと笑った顔のスタンプが送られてきた。
「そーいや、しんちゃんのお母さんってなにやってるの?」
「母さん? 社長」
「「えっ!?」」
恋人の里香も、義妹のダリアも驚いていた。
「お、お兄ちゃんのお母さんって……社長なの!?」
「あれ、言ってなかった?」
「初耳なんですけど……」
ダリアを養子縁組するときに、あってるはずなんだけど……。
あ、職業とかは言ってなかったっけ。
「社長って、どこの社長なの?」
「えーと……なんて言ったっけ、あれだ。【ホテルしなのじ】ってとこ」
「ほて……え、なに? ホテル経営してるの?」
「うーん……多分? 父さん達って子供……ぼくに仕事のことあんましゃべらないんだよね」
前に食事会したときに、たしかそんな、【ホテルしなのじ】とか言っていたはず。
こんな名前なんだから、宿泊ホテルだよねたぶん。
「へえー……お母さまはホテル王なのね。すごいなぁ」
「王ってわけじゃないでしょ。1つだけなんだから」
あれ、とダリアが言う。
「上田一族って、開田の系列なんでしょ? ってことは、そのホテルの出資って開田グループ?」
「あー……そうかも。うちって結構家族経営なんだよね。次郎太さんたちのお母さんも、なんかどっかで社長やってるって言うし。そこも開田系列なんじゃない?」
「「す、すごい……」」
ええー……すごいかなこれ……。
「じゃあしんちゃんもどっかの社長?」
「いやいや。ぼくは自由にいたいよ」
可愛い奥さんと義妹と一緒に、平凡な家庭を築きたい物だ……。
ぴこん♪
【通知 上田まこと】
【お土産かってきなさいね。フグ】
【はいはい】




