76話 スパダリ次郎太さん
熱海に旅行に来ているぼくたち。
超豪華な夕飯に舌鼓をうっている。
「す、すごいよお兄ちゃん……この天ぷら! なんかふわっふわ!」
ぼくの左右には義妹のダリア、そして恋人の里香が座っている。
ダリアが持ち上げてる箸の間には、絹の衣をまとった、魚のてんぷらが挟まっていた。
板前姿にサングラスの、贄川 次郎太さんが解説する。
「そいつぁ、ふぐのてんぷらでさ」
「ふぐ! お兄ちゃん……やばいよ、ふぐだよふぐっ! こんな高級料理……すご……はじめて……」
里香がふと、気づいて言う。
「ねえ、ふぐってたしか、捌くのに免許がいるんじゃなかったかしら?」
里香のお母さん、山雅さんは今ホテルで料理人として働いている。
さすが料理人の娘、詳しい。
「ふぐの免許ももちろんもってまさぁ。丸ふぐを捌くこともできますぜ?」
「まる……ふぐ?」
「毒を取り除く前のふぐでさぁ」
次郎太さんが言うには、ふぐは取り扱う種類によって免許が違うんだって。
毒を抜いたふぐをミガキフグっていうんだって。それだとちょっと簡単だそうだ。
丸ふぐを捌く免許を取るのは大変なんだと。
「すごいわね……さすが贄川家の料理人」
「てか次郎太ちゃんって、なんでもできるよね? 前にヘリも運転してたし」
にっこりと次郎太さんが笑って答える。
「あっしはただできることしてるだけです」
ふぐさばいたりヘリ運転したりと、ううん、やっぱりすごいなぁ次郎太さんは。




