74話 料理人たち
ぼくは里香、ダリアと夕ご飯を食べることになった……んだけど。
本家のじいさん、開田高原のお節介が発動し、大宴会場を貸し切りになってしまった……!
今度じいさんには、流子ちゃん経由で文句言おう。あの人、孫娘からのダメ出しが一番きくから。
「ごめん二人とも……」
「「気にしないでっ」」
里香たち、結構ひいていたけど、ふたりともいい子なので許してくれた。良かった……。
三郎さんも「あれおれ何か悪いことしちゃいました?」と真顔で首かしげてたし、誰も悪気があってやったことじゃないんだ。
怒ってもしょうがない。
せめてもの救いは、次郎太さんが料理めちゃうまってことだ。
ほどなくして運ばれてきた、超豪華な和食の数々に、ぼくらは目を丸くするほかなかった。
「す、すご……」
「天ぷらとかめっちゃかりかりにあがってるし……刺身も、なにこれ? 結婚式?」
ダリアたちが呆然と、目の前の料理を見つめている。
旅館の食事レベル通り越して、国の行事に出てくるんじゃあないかってくらいの、豪華すぎる料理たちが並んでいた。
「うっひょー! 兄貴ぃ! うんまそー!」
三郎さんと奥さんが、ちょっと離れたところで座っていた。
彼らも一緒に食事してもらうことにした。ほら、わびしすぎるからね……。
「全部ひとりで作ったんですか、次郎太さん?」
ターミネーター兄こと、次郎太さんにぼくは尋ねる。
「さすがにあっしだけでは。助っ人呼んでますぜ」
彼が視線を送る先に、これまたごっつい人が立っていた。
髪の色からロシア系だとわかる。
「塩尻サンプロ有勝氏でさぁ。あっしの友人です」
「あ、どうも……」
なんか全部変わった名前だな……。
ロシア人って割に、日本人の名字だし。
「彼はロシアから帰化してるんでさ」
「あ、そうなんだ」
ひらひら、と塩尻さんがぼくらに手を振ってくる。
ごつい見た目に反して、結構いい人っぽい。
次郎太さんにも友達いたんだ。まあ、当然っちゃ当然か。
「さ、料理をご堪能くだせえ」
「あ、はい。じゃあ……いただきます」
「「いただきまーす!」」




