73話 夕ご飯へ
ぼく、里香、ダリアの三人は夕飯を食べることになった。
贄川家の三郎さんに案内されながら、ぼくたちは大宴会場へとやってきた、んだけど……。
「三郎さん、なんか……人いなくない?」
学校の体育館なんて目じゃないくらい、だだっぴろい、和室の宴会場。
そんな中にいるのはぼくたち三人だけ。
非常に、非常に嫌な予感が頭をよぎる。
「高原様が、静かなほうがいいだろうって、貸し切りにしたんだよ」
「本家のじいさんぅうううう!」
いやたしかにね、開田グループっていうめちゃくちゃ大きな企業の、トップ。日本三大財閥のひとつの、総帥だよ、あの人。
でも、何やってるんだあの人!
もう、もうっ!
「す、すごいね、お兄ちゃんのおじいちゃん……さすがのあーしもドン引きですわ」
「なんかすごい通り越して怖いよね……」
里香たちがうなずいてる。まったくもって同意である。
本当に孫バカというかなんというか。
「ごめん、あとでじいさんにはちゃんと怒っておくから」
「あ、えと……別に迷惑じゃないわよん。ね、ダリア?」
「そーね。びっくりしただけだし」
よかった、二人は許してくれるみたいだ。
「三郎さんも、ふたりが驚くだろうってことくらい、わからなかった?」
「えー? そう? 広いほうがお得感ない?」
だめだこの人も結構天然ボケだからな……。
「さあさあ! 座った座った! おいしい海の幸をつかった宴会料理! しんじくんたちにぜひ堪能してもらいたいからって、プロを呼んで作ってもらったから!」
「「「プロ?」」」
すると料理を、スタッフが運んでくる。
その中には、三郎さんと同じくらい、でかい男がのっそりと現れた。
板前みたいな恰好をした、サングラスをかけた、大男……。
「次郎太さん! なんで?」
「三郎に呼ばれたんでさぁ。しんじくんたちが料理を食べたがってるってことで、超特急で、ヘリできやした」
この人は三郎さんのお兄さん、贄川 次郎太さん。
前に、ぼくらをヘリで迎えに来たことがある。
なんでもできるすごい人だ。
東京からわざわざ来てくれたのか……。本家のほうで、ボディガード業の仕事があるっていうのに……。
「やー兄ちゃんさんきゅー。おれも兄ちゃんの握るすし、久しぶりに食いたかったから、ちょうどいいかなって」
「三郎。食べるのはおまえさんじゃあないと思うんでやすが」
「ままま、いいじゃーん。高原さまがこんもり魚介類を送り付けてきたし、腐らせないように、おれとフィアンセも手伝ってやっからさー」
「しんじくんが良いというのなら」
「いいよね? ね!」
ぼくはおずおずとうなずく。ほんとにもう、自由人だなぁこの人……。




