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65話 浜辺でイチャイチャ



 ダリアにからかわれた里花は、一時的に気を失った。


 ぼくは里花が目覚めるまで、浜辺に座っている。


「ん……あれ? アタシ……」

「おはよ」

「しんちゃん……は!」


 里花が何かに気付いたような顔になる。なんだろう?


「これは……膝枕じゃないの!」


「え、あ、そうだね」


 砂浜に頭を漬けるわけにはいかなかったので、彼女を膝枕してるのだ。


「起きて」

「ん~♡ ん~♡」


 里花がふにゃりと笑って、首を横に振る。


「なにそれ」

「もうちょっとこうしてたいわっ。しんちゃんは?」


 そう言われると……。


「こうしてたいかも」

「でしょー♡ じゃあもう少しこうしてます」


 里花がすりすりとぼくの太ももに頬ずりしてくる。プリンの髪の毛がすぐ目の前にある。だいぶ茶色が増えてきてる気がした。


 動くたびさらさらと髪の毛が流れていく。なんというか……触ってみたい。


「どうしたの?」

「あ、いや……その……」


 まさか女子の髪を触りたい、なんて陰キャのぼくが言えるわけがない。


「言って」

「……でも」

「言ってってば」

「……きらいにならない?」


 ならないならない、と里花が首を振る。

 彼女は嘘をつくような子じゃないから……信じてみよう。


「あの……里花の髪の毛があまりにきれいだから、その……触りたいです」


 なんか、変態って思われる気がして……やっぱりちょっとためらった。


 けど触りたいんだ。


 すると里花はふにゃふにゃと、さっき以上にとろけた表情になる。


「いーよ♡」

「え、いいん、ですか……?」

「もち♡ だってしんちゃんは、アタシの彼氏じゃない? 好きに触って良いんだよ♡ その……色々とっ!」


 い、色々とっ。

 え、い、色々ってどういうことだろう。その……え、エロエロみたいなことをしていいんだろうか。


「だ、だまらないでよ……」

「え、あ、ごめん……」


 里花の顔が真っ赤だった。多分自分で言ってて恥ずかしかったのだろう。


「や、やっぱり! 色々は、なし!」

「えー……」


 いや、まあ……うん。わかってたよ。

 でも……ちょっと期待しちゃうよね。えろえろなことも。


「か、髪の毛。髪の毛で……譲歩して」

「あ、はい……」


 譲歩も何も最初から髪の毛だけって話だったんだけど……。


 まあいいや。ぼくは里花のさらさらの髪の毛に触れる。


「んっ……」

「おお、すごいすべすべさらさら」

「あんっ♡」

「なんかスライムみたい。すごい……」

「やっ♡」


 ……髪の毛を触るたびに、色っぽい声を上げる里花。


 え、ええ……髪の毛触ってるだけなのに?


「ご、ごめん……くすぐったかった?」

「え、あ、うん。まあ……でもその……きもちよくて……」


 そっぽを向きながら言う。


「気持ちいいの?」

「う、うん……しんちゃんにね、なでなでしてもらうと、こう……頭の中がとろーんて、とろけちゃうんだ」


 どういう理屈なんだろう……。

 髪の毛って神経繋がってない、んだっけ?


 わ、わからない……。

 

「ね! しんちゃん、もっと触って!」

「え、ええー……でも、里花が変な声だすじゃん」


「がまんするから……あっあっあっ♡」

「ほらー」


「だ、だって……しんちゃんがテクニシャンだから……」

「里花が敏感肌すぎるんだよっ」


「「…………」」


 なんとなく、妙な気分になるぼくら。

 でもお互い距離を取ろうとしない。ぼくは里花のすべすべの髪が好きだし、里花はぼくの膝枕が好きみたいだ。


 離れたくても、離れられない。


 これが、好きってことなんだろうなぁ……ってぼんやり思った。

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