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57話 熱海旅行




 ぼく達は試験休みを利用して、熱海へ旅行に行くことになった。


 ぼくの家にて。


「ダリアー。そろそろ出発だよー」


 当日の朝。

 リビングで妹のダリアが来るのを待つ。


 いつも遅刻するような子じゃないのだが、今日は起きてくるのが遅い。


 ぼくは彼女の部屋の前までやってくる。


「ダリアー?」


 こんこん……。


「あれ? ダリアー?」


 しーん……。


「あれ、寝てるのかな?」


 がちゃ、とドアを開ける。


 ベッドの上には、着替えて準備万端のダリアがいて……。


 うつ伏せに寝ていた。


「どういう状況これ?」


 スマホ片手に寝落ちしているダリア。

 ぼくは彼女の体を揺すって起こす。


「ほら、朝だよ。ダリア」

「んぁう……おにいちゃん……?」


 ぼんやりと彼女が目を開ける。


「そろそろ出発だよ?」

「んぅー……あと、5……」


「5分?」

「5じかんぅー……」

「遅れちゃうよ。ほら、起きてってば、ほら……わわっ!」


 ダリアがぼくの腕をつかむと、ぐいっ、とひっぱる。


 そのまま抱き枕のように、ぎゅーっと抱きしめてきた。


「えへへ……♡ おにいちゃん……あったかぁい……♡」


 ……ぼくはしばし抱き枕にされていた。


 逃げようとしても、彼女の方が体格が良いからか、逃げられない。


 胸には、ぐにぐにとダリアのおっきなおっぱいが当たる。


 甘い香りに頭がくらくらする。


 寝ぼけている、彼女の少し幼い表情もあいまって……逃げられないで居た。


「ほら、もう……ダリア。起きて。ほら、だーりーあー」


 ぼくが何度も呼びかけると、彼女の目がぱちっ……と開く。


「え…………?」


「ダリア、起きた?」


「~~~~~~~~~!」


 ばっ……! とぼくを離して、距離を取る。

「ご、ごめんお兄ちゃん! これはその……裏切り行為じゃないから! 寝ぼけてただけでだからその……」


 慌てて首を振るダリア。

 多分里花との関係を気にしての発言だろう。

「大丈夫、寝ぼけてたんだよね?」

「うん……そうなの」


 彼女が赤い顔をして正座をする。


「どうして寝坊なんて?」

「……笑わない?」


「もちろん」


 彼女がもにょもにょと口ごもったあと、小さく、ぽそりとつぶやく。


「……お兄ちゃんとの旅行、すっごく楽しみだったから」


 ダリアは照れくさそうに言う。

 別に笑うことでもなんでもなかった。

 旅行が楽しみで眠れないなんてよくあること。


「そっか。僕も、楽しみだよ。でも遅れると里花にも迷惑かかるから、もういこっか」


「うん。そだね」


 ダリアはもう準備を終えている。


 キャリーをコロコロ転がしながら、ぼくたちはマンションを出る。


「しかしダリアも結構子供っぽいね。旅行が楽しみで眠れないなんて」


「うー……。りかたんには、内緒にしててよ~?」


 赤い顔をしながらキャリーを転がすダリア。

「えー、どうしよっかなぁ」

「やだっ! 言っちゃだめ!」


 ダリアがぼくに手を伸ばしてきて、頬をぐっとつまむ。


「ふぁふぁ、ふぁよ。いふぁない」

「うん、ならよし。ふふっ♡ たぁのしみ~♡」


 ダリアは終始ニコニコしていた。

 すごい楽しそうにしている。


 ぼくは? もちろん楽しみだ。

 恋人と、その親友との旅行だもん。


 わくわくするし……ドキドキもする。


 今回の旅行で、里花と初めてを……うう……緊張するなぁ。


 そんな風にしてたら、あっという間に、JRの改札前までやってきた。


「あ、りかたーん!」


 ダリアがすぐに里花を見かけて手を振る。


 うつらうつら……と里花が立ったまま眠そうにしていた。


「里花、おはよ」

「ふぁ……しんちゃん……おふぁ……よぉ……」


 里花が目をしょぼしょぼさせながら、ぼくらに挨拶をする。


「なぁに、りかたん。楽しみすぎて眠れなかったとか~?」


「うん……そのとおり……ふぁー……」


 ふらふら、とダリアに近づいて、そのおっぱいに抱きつく。


「あったかぁい……♡」

「こらこら、りかたん。彼氏の前でどうどうと浮気しちゃだめだぜ~?」


「だりあ……女の子だもん……うわきじゃないもーん……ぐぅ……」


 よしよし、と里花のあたまをなでるダリア。

 もちろん浮気なんて思わない。


「里花。いこ、電車遅れちゃうよ」

「うんー……」


 ふらふらしている里花と、手をつなぐダリア。


 ぼくは里花のキャリーを引っ張りながらホームへと向かう。


 ほどなくして電車が到着、ぼくらは運良く、椅子に座れた。


「ぐぅ……」


 右隣に座る里花が、ぼくの肩によりかかって寝ている。


「よっぽど楽しみにしてたんだね~」

「そうだねぇい」


 ダリアが逆側に座って苦笑している。


「まーきもちもわかるわな。彼氏と初めての旅行だもん」


 ふにゃふにゃ、と幸せそうな顔をしながら眠る里花。


 一方でダリアもちょっと眠そう。


「いいよ、寝てても。ぼくがついたら起こすから」


「でも……」


「いいって。ほら」


 ダリアが顔を赤くしながら、ぼくの肩に、頭を乗っける。


「……なんかさ、幸せすぎて胸いっぱいだよ」


「まだ何も始まってないじゃん」


 そだね、と小さく笑うと、ダリアも眠ってしまった。


 ぼくは左右の美少女から、寄りかかられてるような状況だ。


 ちょっと恥ずかしいな……と思いながら、ぼくらを乗せた電車は、熱海へと向かっていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に熱海とは。当たり前のように海外とか言わないし、この主人公だと熱海であっさりOKしても嫌みにならない所が良いですよね。
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