表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/167

28話 みんなで夕飯



 ぼくんちに同級生の里花りかとダリアさんが泊まりにきている。


 一階のお店で買い物を終えたぼくらは部屋へと戻り、お夕飯の準備をする。


「じゃ、しんちゃん。台所借りるね」


 きゅっ、とエプロンを着けるのは、金髪に染めたギャルの里花りか


 制服の上からエプロンをつけている。


 前は超ミニスカートだったけど、今はスカートの丈が少しのびている。


 黒いタイツにつつまれたおみ足がエプロンから見えて、それはそれでえっちぃ……。


「見とれてるね~♡ ドーテーくーん♡」


 銀髪小麦ギャルなダリアさんが、椅子に腰掛けてニヤニヤと笑っている、


「そ、それはもちろん……だって可愛いし……」


「なっ!? か、かわ……そんな……んも~♡ しんちゃんってば~♡」


 えへへ、と里花りかが頬を赤く染めて体くねらせる。


「はいはい夫婦漫才やってないで、早くごはんプリーズだよ~。あーしおなか減ったし~」


「「いや、別に夫婦漫才じゃ……ねえ?」」


「はいはい、お熱いこって」


 そ、そうだよ外ではカップルの振りをしてるけど、別にぼくらは付き合ってるわけじゃない……。


 でも……そうだよなぁ。

 付き合ってる訳じゃあないんだよなぁ……はぁ……。


「じゃしんちゃんとダリアは待っててね」


「あ、待って。ぼくも手伝うよ」


「えっ!?」


 里花が目をむいて言う。


「い、良いわよ! 泊めてもらうんだし」


「そんな申し訳ないよ。里花一人に全員分作らせるなんて」


「しんちゃん……いいやでもぉ」


 買い物の件も含めて、申し訳なさを覚えているのかも知れない。


 するとそこへダリアさんが口を挟む。


「ドーテーくんがいいっていうんだから、手伝わせてやんなよ、りかたん」


 ダリアさんが溜息をついて言う。


「ま、りかたんがいやだっていうなら~? あーしと一緒に、ドーテーくんはベッドでいいことしちゃうけどね~♡」


「「なっ!? いいこと……!?」」


「そ♡ 気持ちいーい♡ こ・と♡」


 ダリアさんが舌なめずりをして、何かをくわえるそぶりをする。


 え、ええ!? そ、それって……もしかしてぇ……。


「だ、だだ、駄目よ駄目駄目! あたしのしんちゃんになんてことしようとすんのよばかー!」


 里花が奪われまいと、ぼくの腕をぎゅっと抱きしめる。


 エプロン越しでさえもその大きさと柔らかさは健在だ。


 わ、わわ……!


「んじゃ大人しく二人で準備してたら~?」


「うぐ……そうするわ」


 ダリアさんもしかして……。


 ぱちんっ、と彼女がウインクをする。

 どうやらまた助けてくれたみたいだ。


「じゃ、料理しよ」

「そ、そうね……。……二人そろって料理なんて、やった♡ やった♡ 新婚さんみたい~♡」


「え、なに?」

「なっ!? なんでもないわよ! ほ、ほらさっさと台所へ行くわよぉ!」


 里花が顔を真っ赤にしてリビングを出て行く。


「素直じゃあないね~」


 けらけらとダリアさんが笑う。


 ぼくは里花の後を追って、ふたりで台所に立つ。


「じゃ、まず皮をむいてきます。しんちゃんはお米炊いて」


「あ、そっちぼくがやるよ」


「えー、でもしんちゃんぶきっちょだしなぁ」


「もう。でも里花のその爪じゃ、もし包丁で手を切ったら危ないよ」


「心配ご無用。何年台所当番やってると思ってるの?」


「でも里花の白くて綺麗な手を切ったら……やだよ」


「う゛……」


 里花が手で心臓を抑えてる。

 ぜえはぁと彼女が荒い呼吸を繰り返す。


「だ、ダイジョウブ……?」


「う、うん……だいじょぶ。……はぁもう、突然ぶっこんでくるんだからぁ♡ も~♡ しんちゃんうれしいこと言ってくれるじゃなーい♡」


 ずっと里花が機嫌良さそうにニコニコしている。


 ぼくは里花と手伝って野菜の皮をむいたり、米を炊いたりした。


 ややあって。


「「かんせーい!」」

「待ちくたびれたよ~ん」


 リビングの大きなテーブルの上には、カレー鍋がどんと置かれている。


 夕飯はカレー。

 人数が多いときはこれだよね。


「しんちゃんお皿~」

「はいはーい。あとスプーンもだねー」


「うん、たすかるー」


 ぼくと里花が手分けしながら、ご飯の準備を進める。


 ダリアさんはテーブルに肘をついて、によによと観察している。


「なによ、ダリア?」

「いやぁ、りかたんが生き生きしてるなぁって。やっぱ愛する夫との共同作業はたのしいかね~?」


「にゃ゛……!? な、何馬鹿なこといってるのよっ! しんちゃんはそんな関係じゃ……」


「あら~? 二人は付き合ってるんじゃあなかったの~?」


「うぇ!? そ、それは……そう、よ。そうよ。つ、付き合ってるわよ!」


 ぼくはお皿とスプーンを持ってリビングへと戻る。


 里花がうつむいて、顔を真っ赤にしていた。

「あーしねぇ、ちょーっと怪しんでるですなぁ~?」


「何を?」


「ん~? 二人が実は~……」


 も、もしかして、ニセコイがばれてる……?


「おなかへったー」

「「なんじゃそりゃ!」」


 ぼくと里花がツッコミを入れる。


「なんか腹減ってさ~。さー食べよう食べよう~」


 ま、まあ何はともあれ、ばれずにすんで良かった……。


 ぼくらはカレーをお皿に注いで、


「「「いただきまーす!」」」


 席の並びはぼくと里花が隣同士、正面にはダリアさんが座っている。


 ダリアさんはカレーを一口食べる。


「ん~♡ りかたん、ドーテーくん、これちょーおいし~♡」


 ダリアさんはほっぺを押さえて、体をくねらせる。


「そりゃよかった」

「やぁっぱりかたんの愛情がたぁっぷり注がれたカレーは美味しいですにゃ~♡」


「んなっ!? 何変なこと言ってるのよぉんもぉ♡」


 ダリアさんが美味しそうにもぐもぐ食べてる一方で、里花が顔を赤くして照れていた。


「隠してもむだよーん。ドーテーくんへの愛情がカレーにしみこんでるぜ~?」


「そ、それは……」


「愛情はやっぱり何よりもスパイスですな~? ん~? りかたんどしたん? ゆでだこみたいに顔真っ赤にして~」


「あ……う……」


 ダリアさんに散々いじられて、里花が参っていた。


「まあまあダリアさん。それくらいに」


「お~。今度は旦那がフォローいれるのかぁ。いい夫婦ですな~♡」


「「い、いやそんな……夫婦だなんて~……」」


 ぼくも里花も照れてしまう。

 いやほんと、夫婦って関係じゃないよ。


 単にぼくらはニセコイの……関係……。


「「…………」」


 里花とご飯を作る時間は、楽しかった。

 こうして里花とご飯を食べるのも、おいしいし、楽しい。


 だからこそ……感じてしまう。


 なんで……。「……なんで本物じゃないんだろ」え?


 里花が小さく何かをつぶやく。


 ぼくは彼女を見やる。


「里花……? 今……なんて……?」


 あう……と里花が顔を真っ赤にして、うつむく。


「何で本物じゃないんだ、だって~……おかしなのぉ。二人は恋人なんでしょ~?」


 里花がぼくをちらっと見やる。


 言いたいことはわかる。

 たぶん親友にニセコイのことは、言いたいのだろう。


 親友に嘘ついてるのが辛いんだ。

 でも真実を明かすのは、やっぱりためらわれる。


 ぼくらだけの秘密の関係だから……。


 でも……。


「いいよ、里花がそうしたいなら」


 ダリアさんはいい人だし、何よりぼくは里花の意思を尊重したい。


「あのね、ダリア。実はしんちゃんとあたし……本当は付き合ってないの」


 彼女に打ち明ける。

 すると……。


「ま、知ってたけどねーん」


「「知ってたのかよ……!」」


 ダリアさんがこくんとうなずく。


「見てりゃわかるでしょ。あ、こいつらベッドで寝たなってのが」


「「わかんねえよ……!」」


「そういうなんつーの? 男女の空気感がなさすぎるってゆーか、初々しいにもほどがあるってゆーか。だから最初からま、わかってたさ」


 ダリアさんがあっけらかんと言う。

 

 なんとバレバレだったのか……。


「ごめん、ダリア。親友のあんたに黙ってて」


「ん~? ま、気にすんな。隠し事のひとつやふたつくらいで、このダリアさんがりかたんのこと、嫌いになるとでも~?」


 にこーっと笑うダリアさん。

 里花も彼女を信頼してるのか、苦笑する。


「そうね。悪かったわ」


「別にいいさ~? それより~。なーんでそんな面白いことになってるのか、おしえなよードーテーくーん?」


 ダリアさんがずいっ、と顔を乗り出してくる。

  

 南国フルーツみたいな、甘酸っぱい、むせ返るような甘い香りがする……。


「ちょっと、なんでしんちゃんに聞くのよ?」


「ドーテーくんなら、いろいろ出してくれるかなーって♡」


「だ、出すって……?」


 にまぁ……と怪しく笑う。


「濃厚なや・つ♡」


「ばっ!? そんなことさせないんだから! しんちゃんはあたしのだもん!」


 ぎゅーっと里花がぼくの腕を、いつも以上に強く抱きしめる。


「あっはっは♡ 濃厚な情報だよーん♡ 何と間違えたのかな~? ん~?」


「も、もう……! ダリアのばかばかー!」


 そんな風に楽しく、夕飯の時間は過ぎていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 茨木野さん知ってますか?カレーにザル大にキャベツの千切り皿にご飯1杯分盛って熱々のカレールウをキャベツにブッカケテ撓ったキャベツを箸で食うとキャベツカレーが食べられます、キャベツの所為で消化…
[良い点] 毎更新楽しく読ませて貰ってます。 執筆頑張って下さい [気になる点] そういえば、例のお年玉どうなったんだろ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ