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165話 大好き



 里香と学校をサボることにした。

 といっても、もう三学期も終わりに近かったし、授業もほぼなかったのだけど(期末テストは終わってる)。


 家に帰ってきたぼくたち。

 リビングにて、彼女と向き合っている。

 ……でもいざ、彼女に隠してることを言おうとしても、なかなか口から言葉が出なかった。

 でも……。


 ダリアはぼくを励ましてくれた。

 大丈夫だって。


 彼女に後押しされて、ぼくは口を開く。


「ねえ、里香」

「ん? なぁに」 

「君に……隠してることが、あるんだ」


 里香は驚いてる様子は無かった。

 ただ静かに、ぼくの言葉に耳を傾けてくれる。


「クラスメイトが、さ。全員いなくなったじゃん。……あれさ、ぼくがじーさんに頼んだんだ」

「…………」

「ごめん、勝手にやって。でも……」

「いいの」

「え?」


 里香は、微笑んでいた。

 怯えていないし、責めているようすもない。


 里香がソッと手を伸ばしてくれる。

 

「ありがとう、しんちゃん。あたしのために、やってくれたんでしょう?」

「うん……でも、やり過ぎちゃったかなって」


 じーさんは、孫から頼まれるとやり過ぎてしまうことは、知っていた。

 それを含めて、やっちゃえと頼んだのはぼく。


 つまりはぼくの責任……。


「しんちゃんだけが背負う必要ないよ」

「里香……」


 里香はぼくに笑顔を向けてくれる。

 その笑顔を見てるだけで、気持ちが穏やかになっていく。


 里香に嫌われないか、それが一番の気がかりだった。

 でも彼女は笑ってくれる。その温かさでぼくを包み込んでくれる。


「しんちゃんはあたしのために行動してくれたんじゃん。自分だけを責めないで」

「…………」

「辛いときは、その気持ちを分け合いましょう。って、真っ先にひとりで落ち込んじゃったあたしが言えたセリフじゃ無いか……」


 ぼくは立ち上がって、里香に側にいく。

 彼女は微笑んで、両手を広げて、ぼくを受け入れてくれた。

 ぎゅっとすると、里香の暖かさと、良い匂いが、ぼくの気持ちを穏やかにしてくれる。


「多分……これからいっぱい間違うとおもう」

「そうだね……しんちゃんのおじーさんは、この先もずっと関わっていくことだし」

「うん……でも、嫌いにならないで欲しいんだ。じーさんのことも、ぼくの、ことも……」

「もちろんだよ」


 即答だった。

 直ぐに返してもらえたことが、とてもうれしくて、ぼくは泣きそうに……ううん、泣いていた。


「あたしは、しんちゃんの全てを受け止めるよ。あたしはしんちゃんの全部が、大好きだから」

「里香……里香……!」


 ああ、うれしいなぁ。

 こんな風に、ぼくのこと、全部を受け止めてくれる女性がいるってことは、本当に嬉しいことだ。


「しんちゃん、大好き。愛してるよ」

「うん……うん! ぼくも里香を愛してるよ!」


 ぼくらは抱きしめて、愛を確かめ合う。

 そして……これからも、ずっと。


「ずっとずっと……側にいてね、里香」

「うん!」

次回、最終回です。

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