表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

164/167

164話 上田ダリアのハッピーエンド



 先生からの呼び出しを終えて、ぼくが生徒指導室を出ると……。


「しんちゃんっ」「お兄ちゃん」


 恋人の里香と、義妹のダリアがぼくを待っていてくれた。

 里香は思い切りぼくに抱きついて、むぎゅ~~~~~! としてくる。


 若干苦しいけど、彼女の柔らかい肌と、とてもよい香りは、ぼくの心をいつだって静めてくれる。

 ……けど、今日はちょっとブルーだ。


 里香に、ぼくは重要なことを隠してる状態である。

 今回の一連のあれこれが、全部、ぼくが元凶にあることを。


「お兄ちゃん」


 ふと、ダリアと目が合った。

 彼女は何かを察したような顔をしていた。


「あー……実はりかたん体調不良なんだよね」

「「え!?」」


 いや、ぼくが驚くのはわかるけど、なんで里香も驚いてるんだろう……?


「ダリア……アタシなんともない……もがもが」


 ダリアが里香を引き剥がして、口を押さえる。


「ということで、お兄ちゃん、りかたんを家まで送ってちょうだいな」

「え、まあ……いいけど」


 本当に体調不良なら、すぐに家に連れて帰らないとだけど。

 どうにも元気っぽいし……。


 するとダリアが里香をぽいっと避けて、ぼくの耳元で言う。


「……なにかりかたんにいいたいんでしょ? 血の三月事件のこととか」

「……! 知ってるの」

「……学校中で噂になってるよ。お兄ちゃんが関わってて、りかたんに黙ってるんでしょ?」


 な、なんて察しの良さ……。

 まるで探偵や、敏腕秘書のようだ。


「先生には、お兄ちゃんが早退することいっとくから、お兄ちゃんはりかたん連れてったって」

「うん、わかった」


 ダリアが微笑むと、里香の背中を押す。

「じゃ、お兄ちゃん。りかたんをよろしく」

「うん。おいで里香」


 彼女はおずおずと手を差し出してくる。

 でもぼくと手をつなぐと、ふにゃりととろけた笑みを浮かべた。


「ありがと、ダリア。いつもサポートしてくれて」

「いいってこった」


 にっ、とダリアが微笑む。


「あーしは何があっても、世界中の誰から否定されても、お兄ちゃんとりかたんの味方だからよ」

「ダリア……」


 ……正直、里香に打ち明けるのはちょっと……いや、かなり恐かった。

 引かれてしまう、嫌われてしまうんじゃ無いかって。


 そうなったあとに、僕はひとりになってしまうことが、恐かった。 

 でも……ダリアが居る。


 彼女は言ってくれた。

 何があってもぼくの味方だって。


 それがうれしかったし、心強かった。

 だから、言う、決心がやっとついた。


「ありがとう、ダリア。愛してるよ」

「…………」


 ダリアは目を丸くする。

 フッ……と笑って、静かにうなずいた。

「ほれ、かえったかえった。あとはダリアお姉さんに任せときな」


 ありがとう、とぼくは再度お礼を言って、ダリアと別れるのだった。


    ★


《ダリアSide》


 真司たちが立ち去っていく様を見て、ダリアは息をつく。


「愛してる……かぁ」


 前は、それを聞くたびに心が痛んだ。

 だってその愛は恋人に向ける愛じゃなく、家族に向ける感情だったから。


 ダリアの胸には真司を慕う気持ちが、まだくすぶっている。

 好きとか、愛してるって言われるたびに、女としての自分が表に出てしまいそうになる。


 今も、これからも、多分それは変わることは無い。

 真司を兄では無く、異性として好きな気持ちはこれからも消えないだろう。


 でも決して表に出すことはしないし、これでいいんだって思う。


「家族として愛されるってのも、悪くないしね」


 帰って行くふたりをみながら、ダリアは再度決意を新たにする。

 これからずっと、ダリアは真司と里香の側に居よう。


 そして、ふたりを支えていくのだ。

 胸の中に眠る、真司を異性として愛する気持ちに蓋をして、鍵を閉めて。


 これからも、ずっと、義妹として、家族として、側に居る。

 

「さて、尻拭いにでも行きますかな」


 こうして家族を手に入れたダリアは、これからもずっと、義妹として、家族とともに幸せに暮らすのだった。

そろそろ決着がつきます。


ハゲ山への処遇は番外編(後日談)に回そうと思います。


最後までよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ