161話 事件を終えて
《真司Side》
里香がいじめられて、数日後。
やっと里香の精神が回復したので、ぼくらは学校へ向かうことにした。
「学校憂鬱だわ……」
「そう? 大丈夫だよ多分」
「? どうして?」
ぼくの隣を里香と、そして義妹のダリアが歩いている。
この数日間は、三人で一緒に過ごしていた。
いじめられたのがショックで、塞ぎ込んでいたカノジョだけど、ぼくらと一緒にいることで気持ちが上向きになったみたい。
それはさておき。
「ゴミ掃除は終わったみたいだしね」
「ゴミ……?」
「行けばわかるよ」
里香もダリアもわかってないようで、首をかしげていた。
ぼくらは学校へと到着。
「……上田だ」「……やべえ上田だ」「……目ぇ合わせないようにしないと」
玄関口で、一年生らしい人たちと会った。
彼らはぼくら……というか、主にぼくに向かって、何やら怯えたようなまなざしを向けてくる。
「お兄ちゃん、何かした?」
「うん、まあ……」
ぼくが直接って訳じゃないけども。
なにがあったのか、ちょっと聞いてみることにしよう。
近くにいた一年生に声をかける。
「あの……」
「ひっ! す、すみません! お金はないです!」
「え? あ、いや別にお金とかいらないけど……」
「すみません、すみませんううううううううう!」
恐怖の表情を浮かべた、一年生が、そのまま駆け足で去って行った。
な、なんだろう……?
「……上田ってあれだろ?」「……屋上から不良をぶん殴って落としたって」「……屋上が血まみれだったらしいぞ」「……あんなおとなしそうな見た目してるのに、こわぁ」
う、ううん……。
なにやら噂になってるようだ。
「しんちゃんだいじょうぶ……? いじめ……?」
里香が不安そうな表情をぼくに向けてきた。
いかんいかん。
「大丈夫だよ。多分、いじめじゃない……と思う」
真相は後で確かめることにしよう。
上履きをはきかえて、ぼくらは自分の教室へと向かう。
その間にもずっと、同級生、そして上級生の人たちから注目を浴びていた……。
あれ、おかしいな、こないだの件は、ちゃんと処理したはずなんだけど……。
ややあって。
「! お、お兄ちゃん……! 教室……だれもいなくない……?」
ぼくらのクラス、1-Aには誰もいなかった。
椅子に誰も座っておらず、がらんとしてる。
「あー……うん。そうだね」
本家のじーさんパワーだろうなぁ。
あのひと、やり過ぎるとこあるし。
「え、え? し、しんちゃん……これって……」
ああ……さすがに怪しまれるよね。
どうしよう……里香に引かれてしまわないだろうか。
そのときである。
「上田、松本きたかー」
「見晴峠先生?」
体育教員の、見晴峠先生が、教室へと入ってきた。
「せ、先生……これって……?」
「あー……あたしが臨時の担任ってことになった。前のやつがいなくなってよ。三学期……っつてももうあと数日で終わりだけど、とにかく、1-Aの臨時担任になったからよろしく」
「よ、よろしくって……」
里香が動揺してる。
まあ、クラスメイトがこんなことになって、さらに担任まで替わったら……さすがに気づくよね。
ぼくが……何かやったんだって。
「しんちゃん……」
……これは黙っておけないよね。
でも、どうしよう。
ぼくがやったこと、里香に否定されたら……。
「上田、ちょっといいか?」
「え? あ、はい……先生」
見晴峠先生から呼び出しを喰らう。
今は里香のことで頭がいっぱいだけど、先生に呼ばれたんじゃね。
「いってくるね」
「あ、うん……いってらっしゃい、しんちゃん……」
どうしよう、里香に、なんて説明すればいいかな。
嫌われたら、いやだな……。
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