160話 妹子、知らない土地で永遠に苦しむ
【★おしらせ】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
《妹子Side》
『あれ……ここは?』
妹子はふと目を覚ます。
彼女が立っているのは渋谷の街だ。
天から雪が降り注いでいる。
『なんで……あたしは……いったい……?』
ふと、妹子は気づく。
渋谷の駅前に、真司が待っていることに。
『真司君!?』
『あ! 妹子!』
真司がこちらに笑顔を向けてくる。
そんなのはあり得ない。
だって自分は、とっくに彼に見限られて、屋上から放り投げられ、死んだはず……。
『待ってたよ、寒くなかった? カフェでもいく?』
……ああ、と妹子は泣きそうになる。
そうだ、今自分が見ているのは、【あのとき】の映像だ。
自分が浮気して、真司を捨てた、あの日。
もしも、真司を裏切らなかったら……。
『うぐ……ぐす……うわあああああああああああ! ごめんなさい! ごめんなさあああああああああい!』
後悔の涙を流す妹子。
真司は優しく微笑むと、肩を叩いてきた。
『もういいよ。そんなに待ってないし、いこっか』
『うん!』
真司が手を差し伸べてくる。
『どこで買い物する? 今日は好きな物全部かってあげるよー! クリスマスプレゼントだよ!』
……あのとき、真司が度を超した、大富豪の孫だと知らなかった。
もしも知っていたら……今頃手放すことはなかったし、不幸になることもなかった。
『ごめんなさい……真司君……あたし……本当にバカだった……』
すると真司がこちらを向いて、笑顔で言う。
「その通りだよ」
★
「…………」
妹子は目を覚ます。
そこは、不衛生なボロ小屋の中だ。
「…………」
日本の物とは思えない声が聞こえてくる。
立ち上がる気力も無く、ただ、寝転がされていた。
……妹子はこれまでのことを思い出す。
屋上から放り投げられ、死んだはずだった。
だが、彼女は生きていた。
どうやら、屋上の下で、誰かが受け止めていたらしい(妹子や不良達を)。
その後、謎の黒服達によって、不良達はトラックに乗せられ、どこかへ向かった。
作業してる黒服達からは、「臓器提供」だの「解剖」だのという物騒な言葉が聞こえてきた。
妹子は目を覚ますと、船の中にいた。
そこで自分が、日本に永久に帰れないことを告げられた。
妹子はどうやら、日本での戸籍を失ったらしかった。
もうあの国で今まで通り生活することはできないという。
日本に戻れないだけでない、彼女は海外へ放り出された。
そこは日本以上に治安の悪い場所だった。
言葉も通じず、お金も持っていない妹子にできることなんて、体を売ることくらいだ。
「もどりたい……もどりたいよお……」
屋上から落とされて、どれくらいの歳月が経ったろうか。
鏡に映るのは、ボロボロになった自分の姿。
もう、あの頃の、自信に満ちた、美少女はいない。
ボロボロの体に、今にも死にそうな顔つき。
「#K“PR”#R“$!!!!!」
謎の男がやってきて、妹子の手をぐいっと引っ張って無理矢理立たされる。
アア、今日も名前も知らない、言葉も知らない男を相手にしなくてはいけない……。
「もどしてえ……もどしてよぉお……」
日本に帰りたいという意味なのか、それとも、まだ彼女が自信を持っていられたときにまで、時間を巻き戻したいという意味なのか。
ボロボロになった妹子はまともな思考ができなかった。
ただ、これから一生、死ぬまで、彼女は幸せになることはない。
今は若いからなんとかなってるが、そのうち捨てられるだろう。
家に帰ることも、楽な生活に戻れることもなく……。
誰も知らない国で……。
妹子は……一人孤独に、これからも死ぬまで、生きていかねばならい。
「おねがいよぉお……だれかたすけてぇ……だれでもいいからあ……だれか、だれかぁ……」
もう、彼女を助けてくれる人物はいない。
こうなってしまったのは、全部自業自得だ。
クリスマスのあの日、真司にひどいことをしなければ。
もしも里香の妊娠騒動があったとき、何もしなければ。
……こんなひどい目にあうことはなかったのに。
【★新作の短編、投稿しました!】
タイトルは――
『勇者の兄、パーティ追放された幼なじみの付与術師を嫁にする〜実は世界最高の付与だったと、弟が気づいて謝りに来たけどもう遅い。嫁のサポートで勇者並みのスペックを手に入れた俺と田舎で2人暮らしてる』
ページ下部↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。
https://book1.adouzi.eu.org/n1672if/




