155話 妹子、友達から見放される
妹子は恐怖のあまり、会社を飛び出した。
都会の夜を当てもなく歩いてる……。
「これ……これから……どうすればいいの……?」
妹子は現在、財布とスマホくらいしか持ち合わせていない。
財布の中には数万円くらいはある……が。
「家から……追放って……そんな……家に帰れないってこと……どうすればいいのよぉ……」
今まで、妹子は親の金とコネで楽に暮らしてきた。
そんな親元から追い出されて、どうやって生きていけばイイかなんてわかるはずもない。
「お金って……どうやって稼げば良いの? ホテルって……どうやってとまればいいの? そもそも……いくらかかるのかすら、わからない……わからないよぉ……」
妹子は追い出されてようやく、親のおかげで、これまで生きてこられたのだと気づいた。
今まで面倒ごとは全て他人任せだった。
一人で金を稼いだことも、一人で生活したこともなかった。
そんなカノジョに、一人で生きていけるすべは、身についていなかった。
「うう……とりあえず……誰か……誰かに助けてもらわないと……」
こんなときでさえ、妹子は他力本願だった。
親が駄目なら、友達に頼ってみることにした。
だが……。
「あ、もしもし?」
『なんだてめえ! 二度とかけてくんなぼけ!』
友達にかけたつもりだったのだが、乱暴に電話を切られてしまった。
「え、え? な、なに……? どういうことなの……?」
同じように、友達にラインを送って見るも、すべて怒られるか、無視されるか。
酷いリアクションしかかえってこない。
「なんでえ……なんでなのよぉ……どうしてみんな助けてくれないのよぉ~……」
ラインに登録してる友達に、片っ端からかけてみた。
すると、同級生のひとりからこんな返答が帰ってきた。
【うちの会社……潰された。あんたのせいだって聞いた】
会社……潰された?
妹子のせい?
【どういうこと?】
【あんたが偉い人を怒らせたから、取引先が全部手を引いて、会社が立ちゆかなくなったって。他のクラスメイトたちもおなじだよ。親がクビになったって。全部、全部、あんたのせいだ……!】
「そんな……」
その後、そのクラスメイトからもラインブロックされてしまった。
偉い人……つまりは、さっきの開田高原って人だろう。
彼を怒らせたことで、クラスメイトの親たちの職を失った。
親が仕事を失えば、子供にも甚大な影響を及ぼす。
クラスメイトたちのあの態度は、そういうことが原因だったようだ。
「あたしが……あたしが……悪いっていうの? あたしが悪いっていうのかよぉ?」
その通りだった。
だが誰も答えてはくれない。
クラスメイト全員に頼ろうとしたが、失敗。
もちろん、クラスメイト以外の知人にもかけてみたのだが……。
【は? 家追い出された。じゃ、無理】
【あんたの金が目当てで仲良くしてやってたんだから、無理】
【親の金がないあんたなんて、魅力ゼロだもんね】
【ごめん、マジ無理】
……と、全員から無理と断られてしまった。
……親から追い出されて、妹子は気づいた。
「あたしって……ほんとに、魅力無かったの……? 全部……親のおかげだったってことなの……?」
答えてはくれない。
だがそれが答えだった。
そう……親元を追い出された妹子に、魅力なんて皆無。
誰も……自分に優しくして暮れはしない。
逆に言えば、チヤホヤされていたのは、自分の力では無く……。
全部、親が凄かったから。ただ、それだけだったのだと……
失ってようやく、妹子は気づいたのだった。




