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154話 妹子、精神的にボコられ追放される

【★おしらせ】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



 妹子はタカナワの社長室に居た。

 父親が、謎の老人、開田かいだ高原こうげんに謝っているのをみて、ようやく……自分はとんでもないことをしたのだと、理解した。


「お願いします高原様! どぉお~~~~~~か! どぉ~~~~~~~~~~~か! 会社を取り潰すことだけはご勘弁くださぃいいいいいいい!」


 父が必死になって、会社を守ろうとしている。

 それほどまでに、この会社が大事なのだろうか。


「ほら! おめえも頭下げるんだよ!」


 がしっ、と父が乱暴に妹子の頭をつかんで、床に強くたたきつける。

 痛い……。


 その様子を高原は見て、あきれたようにため息をつく。


「三下の謝罪程度で許されると思ってるのか? わしも低く見積もられたものよの」

「ひぃいいい! 滅相もございません!!!!!」


 父が完全に怯えている。

 それほどまでに、強い権力を持っているということなのだ。この、老人は。


 妹子は改めて、開田かいだ高原こうげんを見やる。

 白髪の男は、老人とは思えない覇気を纏っている。


 その怒りの色に染まった眼光は鋭く、見られているだけで萎縮してしまうほどだ。


「わしは別に謝罪など求めておらん。決定は変わらぬからな」

「そんな! お願いします! 会社を取り潰すだけはどうか! どうかぁ!」

「ふむ……」


 高原は小さく息をつく。


「まあ、この出版社からは、わしの可愛い孫の本が出ておるからな。今は潰さないでやってもいい」

「オオオ! ほ、本当ですかぁ……!!!!」

「うむ……じゃが次は無い。次やったら本気でここを潰す。肝に銘じておくがよい」

「ははぁ~~~~~~~~~!」


 どこの時代劇だろうか……。

 まあ、何はともあれ、会社を守ることには成功したらしい。


 ほっ……と妹子が安堵の息をつく。


「なに終わったような顔をしておる?」

「へ……?」

「よもや、この程度で許されるとでもおもっておるのか? わしの可愛い孫と、その伴侶となる女を傷つけておいて、この程度で許されるとでも思うか? 中津川 妹子よ」

「え、え、え……?」


 なんで?

 恐い恐い恐い……。


「も、もう許してくれるんじゃ無かったの?」

「馬鹿がぁあああああああ! なんて口の利き方をぉおおおおおおおおお!」


 父は妹子の頬を強くぶんなぐった。

 床に崩れ落ちる妹子の頭を、ぐりぐりと押しつける。


「高原様! 申し訳ありません! 娘が失礼な口をきいて! しかし今のは娘の失態でございます! わたくしめは関係ございません! ので、会社はどうか!」

「ぱ、ぱぱ……?」


 娘よりも、会社を優先しようとする姿勢に、妹子はショックを受けた。

 こういうときは、普通、親が子供を守るものだろうに。


「我が子をそんなぞんざいな扱いとはな。まあ不貞の子ならば致し方ないか」

「は!? ちょ、ちょっと……え、不貞の子って……?」

「なんじゃ、知らぬのか?」


 高原はあっさりと言う。


「中津川妹子。貴様は、そこの父が、妻以外の別の女と浮気して作った娘なのだぞ」

「は……? はぁああ!? え、え、えええ!? な、何それ聞いてない! パパ! 嘘よね!? 嘘なのよねぇ!?」


 だが父は押し黙ってしまい、答えてくれない。

 そんな……。


「本当の子じゃないの……? ねえパパ……答えてよ! ねえ! 本当の子じゃないからそんなぞんざいな扱いなの!? ねえ!?!?」


 父が答えない。本当なのだろう。

 そんな……。


 知りたくない事実を突きつけられて、かなり精神的にくるものがあった。

 今まで信じていた父に裏切られた気分だ……。


「まあそれはわしにはどうでもよい。問題は貴様の娘の処遇じゃ。さてどうしてくれようか。家取り潰し、会社の取り潰しは妹子の父への罰。まあ会社は潰さないでおいてやったが……」


 つまり、妹子への罰がまだ残っているということだ。


「妥当なところは娘のやらかしたことを加味して、やはり会社を潰すかの」

「それだけはご勘弁ください!!!!」


 父は必死になって頭を下げる。


「わたくしめにとって会社とは城! 何よりも大切なものなのでございます!!!!」

「パパ……」


 それは暗に、娘よりも会社の方が大事と言ってるのに他ならなかった。

 そんなふうに、軽く扱われたことが、本当に辛かった……。


 知りたくない事実を突きつけられ、さらに、父からは酷い扱いを受ける。

 ……どうして、こんな目にあわなきゃいけないのだろうか。


「どうしてこんな目に、とでも思っておるのか?」

「ッ……!?」


 高原は妹子の心を見透かしたかのような発現をした。


「わしくらいになると、わかるものじゃよ。他者の頭の中などな」

「そ、そう……そうよ……なんで? ちょっと……ちょっと振っただけじゃない! なんで……その程度のことで……ここまでされないといけないのよぉお!」


 気づけば涙を流していた。

 思い出の詰まった家を潰されて、父からこんな風に扱われて、良い気分になるわけがない。


「その程度? ふむそうか……どうやらきつい罰が必要なようじゃ。やはり会社を……」


 そのときである。


「貴様ぁ! もう黙れ!!!!」


 父が声を張り上げて、娘である妹子の襟首をねじりあげて、ぶん殴る。

 倒れる娘の頭を何度も何度も踏みつけた。


「痛い……! 痛いよパパぁ……やめてよぉお……」

「うるさい! 貴様は絶縁だ!」


 ……………………は?


「ぜ、絶縁……って?」

「言葉通りだ! 貴様を中津川家から追放する!」


 ……何馬鹿なことを?

 追放……?


「は、はは……なにそれ……冗談よねパパ」


 ファンタジー小説じゃあるまいし、現代日本で、そんな追放なんてできるわけが……。


「わたくしとこの馬鹿女とは、何の関係もございません! なのでどうか! 会社だけはどうか助けてください! どうか、どうかぁ~~~~~~~~!」


 ……本気だ。

 父はどうやら、娘である自分を切り捨てることで、会社を守ろうとしている。

「か、会社より娘でしょ!?」

「うるさい馬鹿女! 貴様なんぞ娘じゃ無い! どことなりへ消え去れ!」

「そんなぁあああああああ!」


 どうやら本気で父は自分を追い出すつもりのようだ。


「ねえ! どうやって生きていけば良いの!? パパが居なきゃ生きていけないわよ!!!! ねえ! 助けてパパ! パパァ……!」


 だが父はこちらを見ずに、高原にこびを売るような笑みを浮かべる。


「どうですかあ高原様ぁ……! これで少しでもご気分がよくなられましたかぁ?」

「ふむ……そうさな。家からの追放か。まあ少しだけ胸がすっとしたな」

「でしょぉお? ね、ね、だから会社は」

「ふむ、わかった。会社の取り潰しは一時保留としよう」

「ありがとうございますぅううううう!」


 父は……本気で娘のことなど、どうでもいいようだった。


「いや……いやぁ……! ぱぱぁ……! アタシを、追い出さないでぇ……!」


 泣いてすがりつくも、父はこっちをみてはくれない。


「さぁさ高原様! あとはそこの馬鹿女を、煮るなり焼くなり好きにしてください! 海外に売り飛ばすもよし、水商売に落とすもよし!」

「ふぅむ……さてどうするかな」


 海外!? 水商売!?

 そんなの……。


「いやぁ……! いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 恐怖のあまり、妹子は逃げ出した。


「あ! 高原様、どうします? おれ追いかけますか?」

「捨てて置け、三郎」

「はぁい」


 妹子は泣きべそをかきながら、タカナワの社屋をあとにする。


「どうしてどうしてぇえ! どうしてこんなことになるのぉおおおおおおお!?」

【★新作の短編、投稿しました!】


タイトルは――


『宮廷鑑定士が実は世界最高の指導者だった~不要と切り捨てられた僕、実は全てを見抜く唯一無二の神眼で悩める弟子達を大成させまくってた。今更泣きつかれても遅い、諸国漫遊しながら才能の原石を育ててる』


ページ下部↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!

リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。


https://book1.adouzi.eu.org/n8894ie/

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな人がいるのに気付かずにいたハゲって
[一言] GGの家族に見せる態度と容赦ない時のギャップが凄過ぎて主人公より主人公してる気がする笑 妹子のその後はどうなるんだろ。気になる
[一言] でもこのあと、息子と自分がコネ入社させた社員が間髪入れずに地雷を踏み抜くんだから、結局無駄だったわけだが。
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