149話 ハゲ頭先生
ぼくらは担任の先生に呼び出された。
教員室にて。
「遅いぞ松本ぉ、上田ぁ。先生の呼びだされて、なにとろとろしてるんだねえ。急ぎの用事だとわからないのかね? 馬鹿なのかね?」
……開口一番、ぼくらの担任がそういった。
「すみません、茶臼山先生……」
この人は、茶臼山 禿男。
ぼくらの担任だ。
デブでちびではげているから、はげ狸とクラスメイト達からは言われている。
が、まあそれはどうでもいい。
「おい松本。君からの謝罪はまだだぞ。早く遅れたことを謝るのだよ」
「…………」
「なんだその反抗的な目は? まったく、これだから不良は……」
ぎゅっ、と里香が唇をかみしめる。
ぼくは、知ってる。この禿男……もとい、茶臼山先生から、里香がどういう目でみられているかを。
「茶臼山先生。里香は不良じゃありません」
「ふん! そんな言葉が信じられるかね? そんな髪の毛を金髪にして、しかも片親で、お水で働いてる馬鹿母なのだろう? そんなアバズレの娘……」
だん! とぼくは教員室のテーブルを叩いてしまう。
「な、なんだね君ぃ!?」
「失礼……蚊がいたので」
「蚊……?」
ぼくは禿男……じゃなくて、茶臼山先生を見ながらいう。
「あんまり……里香に、ぼくの彼女にひどいこと言わないでください」
「しんちゃん……」
茶臼山禿男は、この通り、生徒を見た目で判断するクソ教師なのだ。
里香のことも、事情を知らず、ただの不良だと思ってる。
ほんと、酷い先生だ。
「何を偉そうに! わしは君の先生だぞ! あまり調子載らない方が良い!」
「茶臼山先生も、あんまり調子載らない方が良いですよ」
「ふん! えらっそうに。いいかね、学校というコミュニティのなかでは、教師が生徒より上なのだよ!」
「ふーん……」
前から思っていたけど……。
「生徒の家庭環境とかって、ちゃんと把握してるんですか?」
「もちろんだね! そこの不良の親が、馬鹿親ってことくらいは」
「……じゃあ、ぼくのおじいさんが誰かってのは?」
「ふん。祖父母までは知らんがね。親くらいはちゃんと把握してるけどね」
ああ、そう……。
「上田真司。君は親がちょっと金持ちだからって、調子載らない方が良いがね?」
ちょっと、ねえ……。
どうやら開田のことは知らないみたい、この禿。じゃなかった、禿男……じゃなかった、はげ。
「で、ぼくらを呼び出したのってなんでですか?」
ふん、と禿男が侮蔑のまなざしをぼくらに向けていう。
「聞いたぞ、松本。君……妊娠したんだってねぇ」




